妹がお出かけします。2
肘をついて、頬に手を当てながら私を見る青子ちゃん。
どこかのドラマのように余裕を演じてるけど目がすごくきらきらしてる。
なんだか修学旅行の夜にはしゃぐ女の子を思い出す。どうして皆人の色恋に目がないんだろう・・・。
「で?・・・好きなの?その沖矢さんのこと、」
「そんなこと聞かれても・・・」
「沖矢さんといて、ドキドキしたり、きゅんって感じたりしないの?」
胸に手をあてる動作つきで青子ちゃんが私に問う。
恥ずかしくって顔が熱くなったり、優しい手つきで撫でられて嬉しくなったりはするけど・・・青子ちゃんの言うことにはピンとこない
もし青子ちゃんの言うことが好きってことなら
沖矢さんと居て感じる私の胸のほっこりした感覚は、それ違うものかな・・・?
「青子ちゃんは、お兄ちゃんと居るとそういうの感じるの?」
気になって青子ちゃんに聞いてみる。
みるみる青子ちゃんの顔が赤くなって、
「〜〜っ!あ、青子のことはいいのっ!」
質問を質問で返さないでっ!と、怒られてしまった。
確かに質問に質問で返すのは良くないけど・・・
私ばかり根掘り葉掘り聞かれるなんて面白くないもの。
ちょっと納得いかなくて小声で呟く
「・・・ずるい、」
「なんか言った!?」
「いえ、何も。」
照れ屋さんなのは知ってたけど、照れ隠しに怒鳴るのはやめて欲しいかも・・・
私は、青子ちゃんの大きな声で集まった視線を身に受けながら心の中で独り言つ
「結局どうなの?好きなの?」
話が最初に立ち戻ってしまった。
青子ちゃんの様に私も好き、という感覚がちゃんと分かれば話はもっと簡単なのかもしれないけど
まだ誰も好きになったことのない私には、ちょっと難しいな。
「わ、わかんない・・・でも、」
「でもっ!?」
「お兄ちゃんに、似てるなって」
沖矢さんに初めて頭を撫でられたとき、思ったことだった。面倒見が良かったり、優しかったり・・・。
「ば、バ快斗に!?それじゃあ、ろくなヤツじゃ・・・」
首を振って、青子ちゃんの頭の中にいるお兄ちゃん2号を否定する。
「やんちゃな性格とかそういうのじゃないの。なんていうか、不器用だけど優しいところ・・・っていうのかな、」
青子ちゃんもわかるでしょ?
そういう私の言葉に青子ちゃんはちょと照れながらだけど同意してくれる。
「ま、まぁ・・・分からなくもないけど」
「なんだかお兄ちゃんに似てて安心するの」
そういう意味では、私にとって沖矢さんは大きな存在になりつつあるのかもしれない。
第二のお兄ちゃん、ってところかな?
「・・・・ブラコン、」
「知ってる。でも青子ちゃんもそういうお兄ちゃんの一面、嫌いじゃないでしょ?」
ブラコンなのは十分自覚してる。
でもお兄ちゃんが大好きってことは別に悪いことじゃないもの、だからなんて言われ様が気にしない。今に始まったことじゃないし。
私がまたしてもお兄ちゃんのことで青子ちゃんをからかうから
青子ちゃんは顔をまた赤くさせて恨めしそうに言った。
「優のそーいう、人の弱みをつつく感じ快斗に似てる・・・。」
「そうかな?」
「そうよ!二人して青子のこといじめるんだからっ!」
むっ、とほっぺを膨らませる青子ちゃん。
じっとお互い見詰め合っていたら、なんだか睨めっこしている様な気分になって笑ってしまう。
私につられて青子ちゃんも笑い、「あはは、」と二人して笑った。
「でも、残念。優の恋バナが聞けると思ったのに・・・」
眉を下げてホントに残念そうにする青子ちゃん。
お姉ちゃんとしては「恋すること」は妹の私が成長する一環として気になるのかな?
「私には早すぎる、かな。そもそも、沖矢さんは大人で、東都大の院生だよ?私みたいな子どもなんかが相手にされるわけないよ」
現に子ども扱いされてたし。良くて妹だよ、
「そんなのわかんない!優のいつもと違った面を見せたらその魅力にきっと気付くわ!」
「み、魅力って・・・?」
どこか力んで言葉を発する青子ちゃんには、なんの根拠があるんだろう・・・?
「大人の魅力よ、おとなっ!」
「わ、私、高校生になったばっかりだよ?」
この間まで中学生だった私に青子ちゃんは何を言ってるんだか・・
そんな私の言葉にめげず、むしろなんか闘志を燃やして詰め寄ってきた
「高校生はもう子どもじゃないわっ!大人に片足突っ込んでるんだから、ちょっと背伸びすれば沖矢さんにだって追いつくよ!」
「そんな無理に背伸びしても・・・」
そもそも追いつこうって思ってないんだけど・・・
青子ちゃんって思い込んだら突っ走るのは昔から変わらないなぁ。
お兄ちゃんもそんな青子ちゃんを見てはいつも心配して・・・。
青子ちゃんはもちろん気付かないし、気付いた私が聞いてもお兄ちゃんは絶対認めなかったけど。
ホントにじれったい二人だなぁ、
「いいじゃない、大人の沖矢さんに、大人の女アピールしたって!」
そうと決まれば、ショッピングよ!
私が物思いに耽っている間に青子ちゃんは伝票を持って会計をしにいってしまった。
走っていってしまった彼女に私の静止のは届かなかった
「えぇー・・・」
なんか、いろいろ勝手に決まってる・・・
普通のショッピングが良かったんだけどな、と思うけれど
青子ちゃんとの楽しいショッピングには変わりないか、と
もういっそ細かいことは気にしないことにした
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