妹が兄と外食します。
「あー、食った食った!!」
言いながらおなかをぽんぽん叩くお兄ちゃん。
「おいしかったねー!」
そんな私の言葉にお兄ちゃんは頷いてくれる。
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お母さんが中学の同窓会に行くことになって、
「どうせならアンタたちも外で食べてきなさい」と言ってくれた。
でもお兄ちゃんは、「優の作ったご飯がいい」って。
私はすっごく嬉しくて、さっそく外食から料理を作る気分に変えようとした。
けど、お母さんはそんなお兄ちゃんに
「快斗は待ってれば料理が出てくるけど、作るのは優よ!?優の労力も考えて我侭言いなさい!!」
手伝いもしない分際でっ!と怒っていた。
確かに私が全部やってるけどだけど・・・褒められたら嬉しいし、料理するのは嫌いじゃないからなぁ
「私どっちでもいいよ、お兄ちゃんが好きなほうでいいよ・・・?」
素直に思ったことを口にすると、お母さんは眉を吊り上げたまま私にも大きな声を上げた。
「優も快斗を甘やかさないっ!」
「うぇ!?甘やかしてないよ!」
なんでか、私も怒られる。妹がお兄ちゃんを甘やかす、って聞いたことがないし・・・。
「甘やかしてるでしょうがっ!快斗に手伝え、って言ったことないでしょう?」
「そうだけど・・・料理食べて「おいしい、優ありがとな!」って言ってくれるよ?」
私の作った料理にお兄ちゃんは一度も、まずいとか文句を言ったことがない。
今でこそ普通に作れるようになったけど、
そもそもマジックも出来ないような不器用な私の当初の料理は、それはそれは酷かった。
それでもお兄ちゃんは笑って食べてくれた。
お兄ちゃんのおいしいって言ってくれるならがんばって作りたい
「あぁもうっ、優はなんていい子なのっ!それに比べて快斗!!働かざるもの食うべからずよ!?」
なぜかお母さんに頭を抱きしめられて、身動きが出来なくなった。それと同時にお母さんが怒る対象をお兄ちゃんに変えた。
お兄ちゃんには申し訳ないけど、ちょっとホッとした。お母さんのマシンガントークには勝てないもん。
「うっせーなっ!!分かってるつーの!」
「分かってないから、優の料理まかせっきりなんでしょーがっ!!」
作るのは確かに私だけだけど、その代わりにお兄ちゃんがいつも片づけを率先してやってくれてるのに・・・
ヒートアップしてるお母さんは私の頭を抱きしめる腕に力を入れていて
お母さんの胸に埋まってる私はフォローを入れることが出来ない
「だぁー!!!今日は外食にして優に楽させろって言いたいんだろ!?」
我侭言って悪ぅござんしたっ!!お兄ちゃんはそう言ってお母さんに白旗をあげた。
「快斗も優を見習っていい子になんなさいよ!」
そんなお兄ちゃんにお母さんは気をよくして締めくくった。
ぶつぶつ呟くお兄ちゃんの声が聞こえるから、きっと不満な顔してるんだろうなって私も苦笑いする。
時計を見たお母さんは慌てたようにずっと抱きしめてた私を離して、
「じゃ、時間もないし行ってくるわね!」
笑顔を残して颯爽と風のように出て行った。ちょっとだけ聞こえた鼻歌に、お母さん可愛いいなって思いながら見送った。
そんなこんなで外食をすることになったけど、行き先をどうしようか迷って
友達がすごく美味しいと言っていたビュッフェのお店に私たちは行った。
行きははまだ太陽が暮れ始める頃だったけれど、ご飯を食べ終えて歩いてる今はすっかり暗くなっていた。
じめじめと暑かった気温は、涼やかなものに様変わりしていて私の肩が震えた。
「お兄ちゃん、」
「優?どうした?」
少し歩く速度を緩めた私を心配してお兄ちゃんが振り返った。
街灯が照らしているから隠せはしないけど、素直に言うにはちょっとばつが悪くて少し目を逸らしながら言った。
「ちょっと、寒い・・・」
「だから羽織り持ってけって言ったろ?」
お兄ちゃんは呆れた顔で私を見る。
「・・・・・・大丈夫だと思ったんだもん」
お兄ちゃんの言うことは大抵あってるなぁ、なんて改めて言うことを素直に聞けばよかったと内心反省する
でもホントに大丈夫だと思ったんだけどな
気候をよむのがどうにも苦手でこういう事は良くあるけど、いつになっても得意にならないのが悔しい。
私が口を尖らせていたら、わざとらしくため息を吐いたお兄ちゃんが腕を差し伸べてきた。
「しょーがねーなー、」
腕でも組んで暖を取れって言いたいのが分かって、私は駆け寄る。
「ふふっ、ありがとっ!!」
お兄ちゃんは、私がくっついてるのとは反対側を見ていて顔を隠してるけど耳が赤いのがバレバレ。
暗いながらにも等間隔に並んだ街灯が教えてくれる。
照れ屋で、不器用で、すっごく優しいお兄ちゃんがやっぱり大好きだと、実感してくっついている腕の力を強めた。
「くっつきすぎだっつーのっ!!」
「えぇーーいいじゃんっ!」
お兄ちゃんが急に慌てたように注意してくる。私はそんな言葉を受け流してそのままくっついたままでいる
「そ、そんなにくっついたら転ぶだろ、」
焦ったようなお兄ちゃんの様子をみて、私はピンときた。引き止めるように立ち止まって、
「そんな事言ってホントは」
―――――青子ちゃんに見られて誤解されるのが嫌なんでしょ?
お兄ちゃんの耳に内緒話をするように呟いた。
思い込みが強い青子ちゃんなら、一瞬目撃しただけでそのくっついてる女が
妹の私であることも確かめずにショックを受ける、なんてことがありそうだ。
「ばっ、ちっげーよっ!!!」
目をかっぴらいて否定するお兄ちゃん。それはもう肯定しているようで私は抑えきれずに笑ってしまった。
「ホントに違うからなっ!聞いてんのか、おい優っ!!」
お兄ちゃんが大きな声で再度否定する。
すぐ近くにいるから大きな声じゃなくても聞こえるのに、ムキになっちゃって。
「ふふっ、聞こえなーいっ!」
もうすっかり寒くなくなったのは、なんだかんだ腕を振り払わないお兄ちゃんの優しさのおかげかな
「おや、あれは・・・」
そんな兄妹を遠くから見ている男がいたことは、まだ誰も知らない
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