妹が一喜一憂しました。






手をかりて立ち上がった優に男性は

「ぶつかってしまってすみませんでした。
ですがお互い前方不注意だったようなので過失は50:50ですね、」

と締めくくり細い目をさらに細めて微笑んだ。


「はい、」
次は気をつけます、と返そうとすると



「あーーー、優おねーさんだぁ!」

と、歩美ちゃんの声に遮られた。


「あれ、昴さんもいますよ!」


「お前ら知り合いか?」

続くように光彦君と元太君が現れた。



「こんにちは、ボウヤたち。この女性と知り合いなんだね、」

と、男性が返す。すばる、というみたいだ。


「うん!この間仲良くなったお友達なの!」と歩美ちゃん。


うれしい、なんだかんだ勝手に沈んでて、悩みを打ち明けただけだけれど
友達カウントしてくれている。


彼らの無邪気な笑顔は、なんだか心を晴れやかにしてくれる。


つられて笑顔になりながら、

「江古田高校1年の黒羽優と申します」
と名乗り改めてぶつかったことを謝った。


「もう気にしないでください、僕は沖矢昴、東都大学の大学院生です。」
沖矢さんも、私の自己紹介に答えるように名乗ってくれた。



「・・・・そういえば、走ってらして急いでいるようでしたが、」


「あっ!そうでした!」


不思議そうな顔で、私を見遣る沖矢さんの質問に、
自分が何で走っていたのかを思い出した。

マンガさながらのイケメンとの出会いに正直頭からすっ飛んでしまっていた。


そうよ、今日は待ちに待った日だもの、行かなくちゃ!


「なんか、あったのかー?」

「トラブルなら僕たち少年探偵団がっ!」

事件かと目を輝かせる三人に、首を横に振る。



「例の試作品ができたって、博士から連絡が来たの!」

「「あぁ!」」

「博士すごーい!」

三人はあの時話しに同席していたのだから分かる。

「例の?」

しかし、当たり前だが、沖矢さんにはぴんと来なかったようだ。


「マジックの発明品だよー」

歩美ちゃんがすかさず補足する。



「ほぅ、面白そうですね…」

なにやら興味をもったみたいで、手を口元に当てながら少し考え込んだ後
ご一緒してよろしいですか?と問われたので思わず頷いてしまった。







――――――――――





阿笠邸を尋ねると、そこにはさらに知らない子達が二人。

江戸川コナン君と灰原哀ちゃん。


沖矢さん、博士、そして5人の子どもたち、計7人の前で
事前に博士に言われてた通りの段取りで試作品を試したが・・・





結果は失敗。



私が到着する前に事前にコナン君が試した際には、成功したようで、

博士はなぜだろう、と首をかしげていた。



少しはまともにマジックができると希望を抱いていたので、

無意識にも肩を落としていたらしく声をかけられた。


「優おねーさん、落ち込まないで、きっとまた博士がなにか作ってくれるよ!」


「そうです、まだ諦めるのは早いです!」


「そうそう、こういうときは腹いっぱいうな重食うと元気になれるぜ!」


最後の元太君の言葉は少々的外れだったが、
三人のこういった優しさが身に染みていた。


彼らのように自発的にポジティブになれない自分に自己嫌悪しつつだけれど・・・。



「でも、江戸川くんが使って問題なかったのに彼女のときに壊れたのよ?
その原因が分からないと次の試作品の作りようが無いわ」


確かに・・・。


「優おねーさん、機械音痴だったりする?」とコナン君。


可愛らしい顔で、割と酷いこと言ってる気がするけれど…


「いいえ、機械の使い方で困ったことはないよ、」

現に、一般人レベルには家電製品や携帯なども使いこなせていると思う。


そこで、ずっと事の成り行きを黙ってみていた沖矢さんが、
「優さん、身の回りの電子機器・・・例えば携帯は、どれくらいもってますか?」

突飛なことに困惑しつつも、
工学部の大学院生なりになにか意図があっての質問だろうと思考をまわす。

「え?えっと・・・一年もたないくらいかな、」



「えーーっ!?ずいぶん短いですね、」

「使い方が荒いんじゃねーの?」

母ですら、確かに周期が早いことを指摘していたけれど、


やっぱり普通じゃないんだ…。

でも、物は大切にするほうなんだけどな。


家は母子家庭だから、なにかと母に苦労をかけている自覚もあるのだから余計に。


「何かにぶつけたり、落としたりしたことは無いのよ。だいたい中の故障だって
店員さんには言われるの。」

と、元太君の疑いの視線にそう返す。


すると、沖矢さんが
「その他の家電製品で、優さんが使っている最中に壊れた経験はありますか?」
といった。


「なんでわかるんですか!?私が使っている最中によく家電製品が故障するって」


そう、不思議と昔から、

冷蔵庫も、炊飯器も、洗濯機も、携帯も、

どれもこれもまぁ、買ってすぐという訳でもなかったので
寿命かな、と締めくくったが、思い返せば壊れる瞬間にいつも立ち会っているのは私だった。



「なるほど、」
反射で光った眼鏡をかけているせいで表情が窺えないが、沖矢さんは何か分かったようだった。



「昴さんそれって、」コナン君も続いて分かったようで二人で確かめ合うように視線を交えていた。



当の本人や、他の5人をおいて話を進めないでほしい、

なんだか仲間はずれにされたようでつまらないし・・・。


などと思いつつ沖矢さんに視線を送ると、
どこか困り顔で口を開いた。


まさか、そんな事を言われるなんて――――――。

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