妹がトライしてみました。










「で、できるかな・・・」


「大丈夫、自信を持ってください。」


先ほど練習した通りにやれば出来ます、という沖矢さんの言葉に背中を押されて子ども達の前に立つ。



私の視線が必然的に子ども達とかち合った。






見られている、


注目されている、




その事実がさらに足の震えをさらに大きなものにした。




ふと、先ほど年甲斐にもなく泣いて彼らを困らせてしまった私の失態を思い出す。



情けないのはもちろん、

申し訳なさもあって、


だからこそ今度は困らせるのではなく、迷惑をかけるのではなく、


皆に楽しい気持ちを届けたい。


私が皆を笑顔にしたい




そんな誓いを胸にしまって


再度、輝きに溢れた瞳を見返した。




「優おねーさん、マジックするの!?」



「何やんだぁー?」


歩美ちゃんの問いに頷き、元太君には曖昧に笑みだけを返す。




「バーロー、これから何するか聞いたらネタばれだろうが」


そう、コナン君の言うとおり。



事前に何をするか教えて行うマジックもあるけれど、


ただでさえ下手っぴな私が説明してから場を盛り上げるようなことなんて出来ない





「光彦君、ティッシュ一枚とってくれる・・・?」


「お安いごようです!」



立ち上がって一枚のティッシュを光彦君が私に持ってきてくれた


受け渡されたティッシュを受け取った優は観衆の皆に見せつけるように空中でひらひらと躍らせる。



そして、充分に視線を集めたそれを握りこぶしを作った右手の中へと、左手で押し込んでゆく。








――――― この時、右手の中で押し込んだティッシュをしっかり握りつぶすこと――――――



(しっかり指先に力を込めるのがポイントですよ、)








沖矢さんに教わった事を脳裏で思い出す






ティッシュを握り締めた右手をゆっくりと上下に振る。


そして、




手をひらく。



「なんも変わってねぇーぞ!?」


「はて・・・?」



元太君や博士の声と同じように、皆が優の手のひらを見て首をかしげる。


手のひらには、形は変われど、相変わらずティッシュがあるだけだ





―――――― 一度手のひらを見せること――――――



(相手を油断させるにはもってこいですからね、)








不思議・・・。

足が震えていたのが嘘のように、落ち着いてる



何度も練習に付き合ってもらってちょっと慣れたことや、


さっきから見守るように見てくれている沖矢さんもいるからかもしれない。



それだけじゃない

注目されるとどぎまぎするけど、それでも皆が私の動作一つ一つに表情を変えてくれているそのことが




なによりも嬉しかった。







優は再びティッシュをのせた右手を握る。


そして先ほど同様に上下に振る。






―――――二回目は、勢いよくすばやく振ること―――――



(そして・・・・・・―――――)








振り終えた右手をゆっくりとひらく。


「あぁー!!ティッシュがないっ!」


「なんでだぁ!?」



「どうやったのか分かりませんでした・・・、優さん凄いですっ!」



すかさず三人が私のマジックに反応してくれる。



よかった、成功した・・・!



三人だけでなく、コナン君や哀ちゃん、阿笠博士も驚いて表情をして私を見ていた。


皆を上手く欺けたみたいだ、





察しのよさそうなコナン君は騙されてくれないかなって思っていたけれど・・・。






「消えたティッシュはどこに行っちゃったの・・・・?」


「光彦君、ちょっと立ってみて?」



「え?」

不思議そうにしながら、光彦君がソファーから立ち上がるとそこには丸まったティッシュがあった



「えぇ!?僕、優さんのマジックが始まってからここを動いてませんよ!?」




「すげーなっ!!マジックできんじゃねーか!」


なんていって褒めてくれるのでどこか気恥ずかしい


私の力というよりも、ほぼが沖矢さんのおかげだから・・・









そっと沖矢さんに視線を送ると、優しい笑みで応えてくれた。



より一層幸せな気分になれた気がした

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