ひと夏で終わらせたくないから、
「優さん、ここを押さえていてください」
「は、はい」
言われたとおりにして、待機する。
失礼します、という声が聞こえたと思ったら後ろから手を通された。
後ろから抱きつくような形になっていることに気付いて思わず顔が熱くなる
ビクついた私をたしなめるように安室さんは言う。
「じっとしてて・・・」
一見腰紐を通しているだけなのだが、
彼の褐色の手が自身の胴回りを撫でるように通るから体がびくつく。
その上、耳元でささやかれてしまえば頭は真っ白。
蘭ちゃんたちと夏祭りに浴衣を着ていこうという話になったはいいものの、着付けが出来ず困っていた。
だけど、むやみに安室さんに浴衣の着付けを頼むんじゃなかった・・・。
なんでも出来るってイメージが強くて、聞いてみたら案の定「まかせてください」と笑顔で返されたから・・・
ついついお願いしてしまった
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「おはしょりは、これぐらいでいいかな。着丈気になります?」
「いえ、大丈夫だと思います!」
「そうですか、では帯を巻きますね」
再び後ろから抱かれるように手をまわされ心が跳ね上がる。
くすくす、安室さんの笑い声が背後から聞こえてきた
「すみません、僕がなにかをするたびに優さんが反応をするものだから可愛らしくて」
「ひ、ひどいっ!知ってて意地悪してたんですね!?」
振り返れないもどかしさを感じながらも声を大にして非難する。
「意地悪だなんて、そんな。ただ僕のこと意識してくれているのか確認してただけですよ?」
男に着付けを頼むなんて、いくらなんでも無防備すぎますから。
「だ、だって・・・まかせてくださいって、」
「そりゃあ、どこぞの男に優さんの着付けをさせるわけにはいきませんから。」
それなら僕がするに決まっているでしょう?
さも当たり前のように言われたが、意味を分かりかねて生返事をしてしまう。
そんな私の反応に、安室さんはため息を吐いた。
わかるように言ってあげましょう、
「優さんの浴衣を着せるのも、脱がすのも、誰でもないこの僕の役目だってことですよ。」
その声とともに、結い上げて露になっていた項にチクっとした感触。
「〜〜っ、い、いまっ!?」
帯が結び終わっていることに漸く気付き、私は首筋を押さえながら振り返る。
もはや驚きすぎて言葉が上手く出ない私にさらっと
「念のための、男避けですよ。」
と返し
「蘭さんたちとの待ち合わせ時間に遅れてしまいますよ?」
さ、急いで急いで。
などと何事もなかったように、いつものにこやかな笑みをみせる安室さん。
顔が火照っているのは、夏の暑さのせいなのか
前を歩く金髪の彼のせいなのか。
ひと夏で終わらせたくないから、今はまだ気付かないふりをする。
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Timeless