01
黄昏時、寝ていた体制を崩し大きく伸びる。
固まった体をほぐす。
当たりをみわたすと燦々と照りつけていた太陽は、赤い半球体となっていた。
周囲を同じように、紅く染め上げている。足を動かし、道なき道をゆく。
暫く、歩いた先にはどこにでもある小さな駐車場にでた。駐車場の隅に座る。
ここは、慣れ親しんだ場所である。滅多に人は来ず、人ならざる者たちが集まることが多かった。
故に、敵も多く集まる場所である。
だからこそ周囲に目を光らせ、体を丸めても警戒は緩めなかった。
「遅くなって悪かったな。」
そう声をかけて来たのは、金色の髪をもつ優男だった。
ここにはいつも彼が来て、食べ物を貰っていた。
優男は暫くこちらを眺めたら、水が入った入れ物を持ち出した。
「まず、体を綺麗にしよう」
優男は言いながらこちらに水をかけてきた。いきなりの攻撃に驚き、やつを引っ掻く。
「っ!」
不意にやった為か、それとも優男も驚いたのか、攻撃の手が緩む。
しかし、また水をかけられ迅速にたおると云うものに拭かれている。
「まったく、世話がやけるヤツだ。」
やれやれといった風で癪に障るので、優男の手をまた引っかいておく。
慣れてしまったためか、優男は動じない。
見た目に反して勇剛な男だ。やれやれと言いたいのは、こちらだと思い前の手で顔をいじる。
優男は一通り、世話が終わると食べ物を差し出す。しかし、まだ手はつけない。
食事中は一番無防備だ。優男が、少し距離をとり様子を伺ってくる。
この距離なら、逃げるも攻撃も可能な範囲であることを確認してから食事を始める。
優男はまだこちらを見ている。気配を感じていると優男は笑いながら、呟く。
「お前は自由でいいな。」
優男にどんな事情があるか知らないが、自由でないとは何と不幸なことだろう。
私は、寝るも行く場所も、食べる時も自由である。せいぜい、小競り合いがあるくらいだ。
何者にも捕らわれず、孤高であるからこその自由。その幸せを知らぬというのは憐れに思う。
次は引っ掻くのは、勘弁してやろと思い食べ物を平らげた。
「さて、次は汚れてくるなよ」
私が行くのを察したのだろう、優男は私にそう言うと踵を返した。
優男の背は闇夜にとけこみ、やがて見えなくなった。
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