03
























それはいつもの帰り道であった。

安室が帰宅をし車を置いていつもの自宅に足

を向けた時であった。

道に白い生き物が横たわっていた。

安室は気にかかり、近づく。

見るとそれは、いつも自身が餌をやっている

子であった。


驚き思わず息を呑む。


白い子は、傷だらけで横たわり、血を流していた。

あまりの悲惨さに言葉が出ない安室。

慌てて駆け寄り、自らの上着で包む。上着に

包まれた子を抱き上げ、血相かいて自宅へと

駆け込む。



自宅へとたどり着くと、安室は急ぎ手当てを施す。

傷口を消毒し、包帯を巻いていく。

しかし、白い子は目を覚まさない。

白い子の体が冷えないように、タオルや上着

をかけてやる。

そして、温かくするため、暖房をつけ部屋を

温かくする。



それでも、目を覚まさない白い子に安室は不

安を覚えた。

何かを失ってしまう感覚が、心中にに響く。

この時間が立てば立つ程感覚はますます広が

るばかりで、いっこうに落ち着かない。


どれくらいか時が立ち、看病の末眠ってしま

った安室。



寝ぼけ目の安室の瞳には白い子が喉をならし

てこちらを見つめている姿があった。



「ミルク!漸く、目を冷ましたんだな!」






夕方に、近くを歩いていた際この辺りを縄張

りとするボス猫と遭遇した。

私があちこちに出現しながらもボスに従わな

い為、度々揉めていた。


よく思われず、戦闘態勢になることは野良な

らよくあるで、今回も同じ経緯だった。

まぁ、不意討ちで初撃があたったのがよくなかった。

初撃が辺り、動きが鈍くなったところを更に

やられてしまい散々な目にあった。



だからこそ、助かったことは本当に運がいい

ことで、助けてくれたものはなんであれ、感

謝するつもりではあった。



、、、しかしまさか自身を助けたのが、この

男とは思いもせず少々げんなりしてしまう。


「ミルク!漸く、目を冷ましたんだな!」



私が目を覚ました際も、勝ってに名を付け呼

んでいる。

自身の名は降谷零だなんて言い、私を飼おう

としていることが容易に分かり、なお苛立ち

が増す。


「それにしても、元気になってよかった。気

をつけろよ、せっかく綺麗な白い毛なのに汚

れて仕舞うだろう。」


降谷は私にそう云うと、頭を撫でる。優しい

手つきで私を撫でる。その時の降谷は目を細

め口元は緩んでいた。


こいつの飼い猫になるつもりはもうとうない

が、今はこいつに助けてもらった分くらいは

そんな気分を味あわせてもいいかと思い大人

しくその手を受け入れた。



降谷は私の体の傷を再度確認し、問題がない

ことが分かると私から離れた。

降谷は皿をもって戻って来た。

皿には食べ物がのせられている。

恐らく猫用の。意外に飼う準備も整えられて

いて、妙に焦る。

私の目の前に皿を差し出すと、覗きこむよう

にこちらを見つめてくる。

まるで人間の子供が好奇心いっぱいにして見

つめているようであった。

何分、助けられたこともあり無下にはできず

初めて猫用の餌に近づく。


恐る恐る口にすると、甘美な味が広がり頬が

落ちそうな美味しさであった。

世の中には、こんな美味しいものが存在した

のかと驚いた。

飼い猫もいいかもしれないな、と頭によぎっ

たが思い直す。


すぐに食べ終わってしまい、おかわりを降谷

に要求する。しかし、食べ物はでず優しい手

つきで私を撫でるだけであった。



「今日は、ゆっくり休んで下さいね。」



温かい寝床、美味しい餌、優しい手に飼い猫

に対する羨望がまたもでるが、私にはやはり

似つかない。また、外へいこう。私を撫でる

この優しい手にほだされぬうちに。



安室は仕事の為、朝の支度をしている最中で

あった。昨日見つけたミルクと名をつけた白

い子がケガをしていたのを見つけ看病していた。

その甲斐あってか、今まで、まったくなつか

ない白い子が触れることを許してくれた。そ

の時の達成感ときたら、組織に潜入して重要

な情報を得たとき以来である。


元々なつかない白い子のために、念入りにリ

サーチした餌を買い徐々に自分になれ、なつ

いてもらう作戦であったが、思ったよりも早

くなついたことは安室にとって嬉しい誤算で

あった。

今朝も餌と水をやり、安室自身も仕事の為準

備を行っていたが、ふと見ると姿がない。


「ミルク?」


部屋にもおらず、リビングにもいない。

ただ、ミルクがいた部屋のカーテンが揺れ

て窓から風が入る。安室は愕然とし崩れ落ちる。



「ミルクー!!」


安室の必死な声は自由な猫には、届かない。


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