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ある日外へ大尉は散歩をしていた。外へでて、遊ぶのは昔

から好きだった。美味しい餌、優しい飼い主に

不満はないが、時々冒険心がくすぐられ外へでる。自分は

もともと野良であったがそれは幼い時の短い期間のみだ。

だからか野良に対する憧れが大尉にはあった。野良の様に

自由に強く生きたい、それは大尉の中で日常で時々顔をだ

す。

そんなときは思い切って外へでて冒険心をみたすのだ。大

尉は意気揚々に道を歩いて行く。

今日はいつもと違う所へ行こうとビルの谷間にある1本道

を歩いていく。


「早くここから、去りな。」


1匹の白いメス猫が道先から現れ、大尉に向かって忽然と

した態度で言い放った。

「なぜ?」

「いいから。」

白猫はそれだけを大尉に言うと、大尉の横を通り過ぎ消え

去る。

白猫の言うとおりにすべきか、考えるも結局好奇心に負け

進むことにした。

この先にどんな冒険が出来るか夢を抱いて大尉は進む。



しかし、大尉は進んだことをすぐにも後悔した。1本先に

は広場のように広がった空間が存在した。

大尉のまわりにはたくさん野良猫たち、そして目の前には

少しふくよかなボス猫が大尉を見下ろしていた。

「いい度胸だな、俺の縄張りに1人とはな。」

「僕は、喧嘩をしに来たんじゃないよ、ただ散歩に、、、」

「はっ!これだから飼い猫は、なにもわかってねぇ。散歩

で通ろうが何だろうがここは俺たちの縄張りなんだ。

貢物をよこすのが普通だろが、それがねーってことはここ

を奪い取る敵と同じだ」

そうボス猫が言うとこちらに視線を向けさぁ寄こせと訴え

てくる。しかし、貢物なんてない。これはマズイと思うが

逃げる術がない。

周りの野良猫たちは威嚇をして徐々に近づいてくる。本格

的に追い詰められ、大尉は体を縮めるしかなかった。








「また下らないことしてるの、アンタ達」


澄んだ声が響く。その声の持ち主にみんなが注目する。後

ろを振り向くとそこにいたのは先程の白猫だった。

白猫の忽然とした態度に周囲は一瞬ひるんだ。


「生きてやがったか」

「おあいにく様、あれじゃ死ねないわよ」

「そうかよ、だがこの件はおまえには関係ない、邪魔すんじゃねぇ」

「ええ、関係ないもの邪魔なんてしないわ」



ええー助けに来てくれたんじゃないの?と大尉はすがるよ

うな瞳を白猫に向ける。

白猫はそんな大尉に目もくれず、大尉よりも後ろに座り、

毛づくろいをしている。

完全に助ける気がない事は明白であった。



「僕の餌をあとで差し上げますから!!助けてください!!」

大尉は声を張り上げ、ボス猫に言う。しかし、野良猫たち

の態度は変わらない。

「フン、どうせその隙に逃げるんだろう。そんな言い訳は

いい、やれ」

終わった。大尉がそうおもった瞬間、周囲の野良猫たちが

一斉に襲ってくる。恐怖が大尉を襲い目を閉じた。

しかし、痛みは一向にやってこない。

そっと目を開けると目の前には、白猫がおり周りにいた野

良猫たちを足蹴りにまたはひっかいたりして倒していた。

飄々と次々くる攻撃をかわしては、最小限の攻撃で倒す。

大尉の目は白猫に釘づけとなった。

まさに憧れた強く、逞しく、気高い野良猫が本当にいたの

かと胸が熱くなる想いであった。


「おまえ、ちゃんと餌はよこせよ」

「え!?」

「自分で言ったんだから、できるだろう」


白猫は大尉に戦いながら声をかける。大尉は本当に餌目的

の為に自身を助けたのか少々残念に思いながらも、

しかし助けてもらっていることもあってたしかに餌を与え

るくらいはしないとと思い直した。

そんなことをのんびり考えていた時には、状況はさらに進

んでいた。

「はやく、ここから去るぞ!」

白猫はあっさりとあのボス猫をたおしていた。大尉はあわ

てて白猫の後に続く。ビルの谷間に2匹の猫たちが颯爽と

走り去る。

置いて行かれたのは、ボロボロにされた野良猫たち。彼等

の目はまだ開かない。



「なんで、助けてくれたの」

「餌くれるっていったから」


あぁ本当にそれだけなんだ。と大尉は心中でつぶやく。そ

してこの白猫がイラついたようにこちらをみていることに

気付いた。

「お前さっさと去れって言ったのに忠告聞かないからああ

なるのよ。」

あぁだから彼女は怒っていたのかと納得した大尉。白猫は

せっかくの忠告が無駄になったことにご立腹であった。

しかし、これには大尉にも言い分があった。忠告するなら

もっと詳しく教えてくれと、

しかしご立腹の白猫にそんなことは決して言えなかった。

何せ白猫はたった1匹で自分たちを囲んでいた野良猫たち

を倒してしまえるのだから。

言った後の恐ろしさで自然と口が閉じる。

「早く、餌をちょうだい」

可愛らしい仕草で大尉に餌をねだる白猫。

「はい!餌をくれるところがあるので、一緒に行きま

しょう」



大尉は白猫より前を歩き案内する。白猫は大尉の後に続

く。

先程のような速さはないが、優雅にゆっくりと2匹は歩い

ていく。



夕日が照らす2匹の影

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