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それは気ままに辺りを歩いていた日の話だ。



目の前には人の子供がうろうろと歩きまわっていた。

その人の子には、覚えがあった。

以前自身の体を無遠慮に触ろうとした者であった。

三角頭のがたいがよい少年は歩き疲れたのか、小さなお寺にあるベンチに座り込み頭をさげ、落ち込んでいた。

どうせ迷子だろうと思い対して気にも止めず、歩みを進める。

今日はいつもより、温かく居心地のいい日であった。

白猫は空き地や民家を通り抜け気ままに歩く。
目的はない旅である。白猫が、どこかの公園につくとまたもや見覚えのある子どもたちがいた。

「ったく、元太のやつ」


「元太君、漢字読めませんから現在地もわからないですし。」


「どうしよう、きっとひとりぼっちで寂しいよね。」


「どっかの誰かさんが追跡眼鏡を壊さなければ、容易に分かった事だけどね。」


「それは悪かったって。」

人の子たちはどうやら、あの図体が大きい子どもを探しているようだった。

しかし、白猫には関係がない。ましてや、人間には興味がない。

ゆえに白猫は近くのベンチで丸くなりただ、傍観に徹していた。


「元太、何か目印になるものはなうか?」


「う〜ん、、」


少年探偵団は何度も探偵バッチで応答を試みるも成果はない。

そんな時である。

灰原の目には白猫が写った。

白猫はただつまらなさそうに、こちらを見つめていた。

灰原は何となく白猫に話かけた。

「もし居場所を知っているなら、教えてくれないかしら?」


白猫と灰原は瞳を合わせる。

世界の空間から一部切り取られたような静けさがあった。

白猫は動かない。

そんな白猫の瞳を灰原は、ただ写し還すように見つめていた。

そんな空間に魅られたのか。

白猫は、首を振りながら道を指し示す。

そんな白猫に灰原は頷くと、まだ後ろでやり取りしている彼らにも声をかけた。


「3人ともこっちよ。」


「おい、灰原分かったのか!?」


「えぇ、この子が案内してくれるわ。」


「「「猫、、?」」」


三人が驚く中で、灰原は淡々と白猫について行く。

そんな灰原を驚きながらもついて行く三人。

白猫は来た道を引き返す。

子供たちを引き連れ人が通れる道を歩く。

すると、小さなお寺が見えてきた。

お寺の中に入るとベンチで座り込み落ち込んでいる体の大きな少年がみえる。

歩美や光彦が声を揃えて彼を呼ぶ。

落ち込んでいた少年は笑顔を取り戻し、こちらに駆け寄ってきた。

「なんで、わかったんだ」


「この子のお陰よ。」


灰原はそう元太に伝えると、足元で毛繕いをしている白猫を撫でた。

白猫はさも当然のように受け入れていた。

「おめーすげぇな!」

元太は尊敬の目差しを白猫に向けると、灰原と同じように白猫へ手を伸ばす。

しかし、白猫に届く前に灰原によって手を払われた。


「なにすんだよ、灰原!」


「この間、引っ掛かれたばかりでしょ」


元太は言葉に詰まり、手を引いた。

白猫はそんな元太なぞどこ吹く風のように気にせず、あくびをかいている。


「でも、哀ちゃんいいなぁ。歩美も仲良くなりたい。」


「何かいい方法はないですかね。」


「餌でもやったら、なつくんじゃねぇーか。」

コナンが歩美と光彦、元太に伝えると三人は目を輝かせ今あるお菓子をポケットから取り出した。


「お菓子あげるなんてもったいねーけど、助けてもらった礼だしな。」


「歩美も、白猫さんにビスケットあげる!」


「僕もあげます!」

三人がそれぞれビスケットやクッキーを白猫の前へ差し出す。

コナンは内心で餌で靡くような猫には思えなく、食べないだろうと思いながら状況を見守っていた。

しかし、白猫は野良として生き抜いた猫である。

食べ物の貴重さを十分に理解していた。

また、相手が人の子供であり、大した力もないことを見ぬいていた。

三人の子供から差し出され、くだかれた菓子をゆっくりと口に運ぶ。

今日のご飯は困らずにすんだと思いながら、不躾に己の体を触る人の子供らをあえて許してやった。

白猫は、菓子を貪る。

子供らは喜びを溢れさせ、表情は星のように輝かせていた。

コナンと灰原はそんな子供らを少し離れた位置で見つめている。

寺は夕暮れの為、影が伸びている。



周囲の思いをよそに白猫の気持ちは誰も分からず。

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