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DIO様は、よくコネクト作りにパーティーに参加していたわ。

どちらかというと、暇つぶしの意味合いが強かったけれど。

パーティーに出てあの圧倒的なカリスマ性を見せ付ければ、全ての人間があの方の言いなりだった。




政界の要人も、大富豪も、裏社会の重鎮も一人残らずひれ伏す様は傑作だったわ。
でも、DIOさまにとってはどれも枯葉と一緒。


あって当たり前のもの。

養分としては便利だけど、何も面白くは無かった。
いつも早々に飽きて、お帰りになられていたわ。


でもある時、とても上機嫌で館に帰ってきたことがあったのよ。


私はその夜のパーティーには参加しなかったから知らないけれど、

一人の男が、DIO様の御眼鏡にかなったと、テレンスから聞いたわ。



なんでも、世界規模の犯罪組織のボスらしくて。

ある薬を作ろうとしてるって。
何の薬かって?覚えてないわ。だって興味なかったんだもの。




でもDIO様はその話に興味を引かれたようで、何度か会っていたようよ。


私たちを狙っている組織のボスのことで知っていることは、それぐらい。



パーティーで初対面の癖してDIO様に直接話しかけるほどに大胆で、
それでいてDIO様の部下である私たちにまったくもって姿を見せない用心深さも備えてる、

本当にこんなことぐらいしか知らないの。



・・・あぁ、あとDIO様の御戯れで、薬の研究に細胞を提供したことぐらい、ね。
これで面白いものでも作れ、そう言ってらしたわ。


嘘じゃあないわ、私がDIO様の細胞を運んだのだから。わざわざ日本の製薬会社に。

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あれから場所を変え、SPW財団のとある一室にてマライアの話を聞いていた承太郎。

ジョセフは老体に負担をかけないよう、マライアの能力を解除させて帰らせた。




マライアからは無数のコードが延びている。

承太郎が財団の者に用意させた装置であり、嘘を防ぐためであった。



素直に追加条件に応じたが、承太郎からすれば信頼はまだ薄い。念には念を、ということだ。



マライアはコードをつける際に財団の男が体を触れることに文句を言っても、

機器にかけられ、己の真偽を問われることには文句を言わなかった。

もう一つの条件である指示に従うこと、それをマライアなりに実行しているさまは、承太郎には良く映った。



「ここからは、私の推測よ。」

間違っていても文句は受け付けないわ、そう言って



聞くのか、聞かないのか、と視線を投げかけてきた。

「・・・話せ。」


「細胞があるから復活させられる、なんて言われたらDIO様を崇拝していた者は動くでしょうね。」


確かに、クローンなどのように細胞を利用した科学技術は進歩しているのだから、出来ない話じゃあない。
嫌に現実味のある話に、辺りの空気はより一層重くなった


「組織に引き込むわけか。」


「おそらく。どこで知ったのかは分からないけど、ヤツらはスタンド使いを欲しがってる。」


悪事にはもってこいの能力ではある。能力を持ち得ない人間には認識することも出来ないのだから。

ならば、DIOの元部下たちが、というよりも組織の活動が活発化した、というのが正しいだろう。



DIOという存在によってできたコネクトをそのまま利用し、尚且つそいつ等を動かす餌も持っているなら、仲間集めは容易だ。



良く考えられているからこそ、承太郎からすれば事態は深刻だった。

もし、自身が回収するよりも先に組織に例の矢が渡っていたとしたら・・・



考えるだけで、ぞっとする。


仲間や、捕まえたスタンド使いが皆こちらに情報を渡す前に死んだのは、
組織のヤツらによる口封じなのだと、承太郎は漸く納得した。


利用されているスタンド使いたちの目的が「DIOの復活」であるのは明白だ。

隠す必要があったのは、そうしたスタンド使いを利用している側。組織には何かもっと別の目的があるということ。

それを悟られないためには、組織とのつながりのある人間の抹殺が近道だ。



実に優秀な組織だ。こちらが情報を掴むことに苦戦していることがその証拠。

その組織が恐ろしい敵であることだけは紛れも無い事実だった。




眉間にさらに深い皺を刻んだまま承太郎は、マライアに問う。


「何故お前は誘いを蹴った。他の九栄神たちはどうした。」


「DIO様の細胞があるのは本当だけれど、復活させてくれるって言うのは・・・信じるに値しないもの。」

昨日今日会った人間をどう信じろって言うのよ?



マライアの言うことは尤もだった。

そういった人間が多いといいのだが、DIOのカリスマ性に盲目的に依存し続けている人間の方が圧倒的だ。


「ホル・ホースとスティーリー・ダンは組織に入ったと風の噂で聞いた。それとアレッシーはヤラれたわ、」

スタンド能力を持たない組織の人間にね。



「なに・・・っ?」


続けて口を開いたマライアの言葉は信じがたかった。

スタンド能力を持たぬものが、スタンド使いをどうにかするには知略も、骨もいる。なんせ見えないのだから。


承太郎の表情に焦りが表れる。此処まで聞いていて冷静でいられる人間がどれほどいるだろうか。





「こっちにはスタンド能力があるからって、侮らないことね。」

向こうは私たちよりもさらに黒。


手段なんか選ばない。要らないものは消す、そういう組織よ。




そう言った彼女を見て、承太郎は気づく。マライアのすました顔に隠れた焦りを。
彼女が組織の誘いを蹴ったことがどれほど危険なことなのか。今なら理解出来る。


どんなに余裕を取り繕っていても、じわじわと追い詰められる状況に焦って当然だ。

むしろそれをこちらに悟らせないようにして、まんまと取引をした彼女の精神力に驚く。さすがDIOに認められたスタンド使いだ。





「・・・お前の安全はSPW財団が必ず保障する。」


承太郎はマライアに向けて言葉を放ち、席を立つ。


元ではあるがSPW財団という、マライアにとって敵地に逃げ隠れようとするまでに追いつめる、その犯罪組織の恐ろしさをしかと受け止めて。



コードにつながれたマライアを部屋に残し、廊下でジョセフに連絡を入れようとしたその時

「承太郎さん!!大変ですっ、」

走って現れた財団員が声を荒げて承太郎の名を呼んだ。



「どうした、」



「ベンジャミンが・・・」

その様子からただ事ではないと思っていたが、その考えは的中する。

彼が亡くなっていた、という知らせ。そしてそれが他殺であること。



ジョセフへの連絡を後回しにして、財団に設けている自身の部屋へと向かう。
頭も、心も、一度整理しようと、そう思ったからだ。



今までゼロだった情報が今日になって雪崩のように押し寄せたような感覚であり、できれば耳にしたくなかった仲間の訃報までやってくる始末。


煙草を吸って、落ち着こうとするのはもはや自然な流れだった。



煙が部屋の中をゆっくりと漂いながら上ってゆく様を見ながら、それに重ねているものに承太郎は気がつく。

人が死ぬということは、存外あっけない。



そしてそれは、失ってしまったら取り戻せない。

ひどく脆く儚いものであることは、もう知っていたはずなのに。
そうであっても、守り通すことは難しい。



長いわけではないがそれなりの付き合いがあった彼の事を思い浮かべながら、もう一度煙を吐いた。
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