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国際線、人の行きかうロビーにひと際目立つ二人の男がいた。
背が高く、髪形が少々個性的な男と
全体的に色づかいや着こなしが独特のファッションに身を包み、スケッチブックを片手に持つ男。
向かい合う二人の間には決して和やかな雰囲気はない。
「だーかーらぁー!!聞けって!」
きっちりセットしたであろう頭を掻きむしり、苛立ちをあらわにする男。
「うるさいぞっ!ぼくはアイツに会いに来たんだ!なのになんで君が居るんだ、このクソったれ仗助っ!!」
仗助の言葉に対して噛みつくような反応を示すのは、言うまでもなく露伴。
優の知っているころから二人の距離は近づいてなどいなかった。
お互いに大人になったようで、
公共の場というものへの配慮ができるようになって、
大声での言い合い程度でおさまっているのだから拍手ものであろう。
「でけー声で人のことクソったれって言わないでくれます?だいたい俺だって優に会いに来てるんだからしょうがないって言ってるでしょ!?」
「ふんっ、またいつものようにアイツを追っかけまわしているのか」
鼻で笑い、にやにやする露伴は仗助の気持ちを見抜いていた。
秘かに抱かれ、温められているその想いに。
「なっ、ちげーッスよ!俺は見送りに、」
驚き、慌てて否定する様は図星と言っているようなもの。
どこかほんのりと赤く染まる仗助の頬を見て、露伴は思わず視線を逸らす。
なんだかおぞましいものを見たような気分になったからだ。
過去に怒りで我を忘れて人のことをタコ殴りした人間の女々しい部分など、見たくもない。
余計なものを見せてくれるな、となんとも失礼なことを思いながら言葉を発する。
「わざわざ杜王町からかい?それはご苦労さまだな!」
「それはアンタだって同じじゃあないッスか。」
「ぼ、僕は仕事で既に東京に来ていたんだ!君と一緒にするなっ、クソったれ仗助!!」
再び動揺すると思いきや、予想外の返しに動揺したのは露伴の方。
慌てて否定するのは、図星と言っているようなもの。
そうと分かってはいても、ついつい先ほどの仗助と同じ返しをしてしまう。
この岸辺露伴が、仗助と同じ反応だなんて。冗談じゃあない。
「……困るといつもそれっスね、」
目の前にいる、元から好きではない人間の、こちらに向ける呆れたような顔が
さらなる苛立ちを生む。
これ以上その話題に触れないように、無理矢理に話を切り替える。
「うるさい!!それよりアイツはまだか!?この岸辺露伴を待たせるなんて何様のつもりだ」
「勝手に待ってんでしょーが、」
「ふん、当たり前だろう!アイツは人にいつか会いに行くとメールを送っておきながら、ダラスへ戻るんだぞっ!?」
このぼくに黙ってだ!
「……まぁ、確かに。一言ぐらい文句言おうと思って俺も来たっスけど」
仗助の気持など想像したくもないが、
優が日本に戻ってくるというメールを見たとき
久々に会えるのかと内心喜んだのはぼくだけじゃあないだろう。
なのになんだ。黙ってまたアメリカに行くとはなんだ。
すぐにバイクを走らせた。言うまでもなく怒りから。
「言っとくが、優が出発するまでの時間はぼくがアイツに文句を言う時間だからな。」
「はぁ!?何言ってんスか!露伴のくせに調子乗んな!」
「ふん、だれがお前なんかに時間をくれてやるものか!」
だからこそ空港について、仗助を見かけた際
不快にはなったものの、驚きはしなかった。
一目でも。一言でも。そんな気持ちは分からなくない。
だが素直に仗助に時間をくれてやるほど、ぼくは親切じゃあない。
一番の理由は、ぼくが仗助と同じ思考に至ったことが気に入らないだけだ。
「意味わかんねーっス」
ま、優と話すのにアンタの許可なんかいらねーや。
絶対ぇ従わねーから。
ぶつくさと呟いてどかっと椅子に座った仗助。
そうして不毛なやりとりをして優を待つのだった。
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一方その頃。
同じく国際線のロビーにて。
コナンが優の裾を掴んで引っ張った。
「ねぇ、優さん。」
「な、なぁに?」
なんとなく聞かれることはわかっていたけれども、恐る恐る言葉を返す。
コナンも同様に、確認することに躊躇いがあるようだ。
それでも結局、彼は好奇心に負けて、遠慮がちに向こうを指さして小声で聞いてきた。
「……あの人たち、知り合い?」
「………………うん」
コナンの指さす方には、ここに居るはずのない杜王町の住民。
指などささなくても分かるくらいには強烈に目立っている男たちがいる。
ここ居ても大方の内容が聞こえる大声でのやり取りに加えて
二人の個性的な髪形やファッションが周りの人たちを寄せ付けず
人の波が彼らの周りを避けるように動いていた。
しかし彼らは、
物珍しそうな視線も、
騒音を諫めるような視線も、
気にならないようだ。
その屈強な精神はさすがスタンド使いだとしか言いようがない。
けれど
なぜだろう。
感心する反面、ああはなりなくないと思ってしまう。
正直なところ、彼らに声を掛けて自分も同じ視線に晒されるのは避けたい。
かといって見送りに来てくれているらしい知り合いを無視するのも心苦しい。どうするべきか。
「逃げるか。」
「えっ」
優は彼らを見なかったことにしようと口を開く。
天秤にかけて勝ったのは己の保身。
声を掛けたところで露伴には怒られることがもう分かっているのだから余計に天秤が逃げるほうに傾いた。
この行動がおそらく火に油を注ぐ行為だろうが、
再び会う日までに自然鎮火していることを祈るという魂胆だ。
さすがのコナンも優の選択に驚いた表情をみせる。
「行こう、」
コナンの手を掴み踵を返す。
「で、でも知り合いなんじゃっ、」
「気のせいだったわ、」
コナンの戸惑いの声に、苦し紛れの言い訳をして引き連れようとする。
「いやいやいや。」
気のせいじゃねーだろ、なんてコナンの表情は気にしない。
今は彼らにばれずに通り過ぎることが先決だ。
「いいから、」
早く行こう、という言葉は続かなかった。
指をさしてこちらに気付いた人間によって、
優の逃走劇は始まる前に終了を迎えた。
「あ、優!!」
「げっ、」
「ははっ、」
見つかってしまった際の優の反応に思わず苦笑するコナン。
優は服装や口調は大人の女性ではあるけれど、
こんな行動をしていると蘭や園子と大して変わらないと思う。
「おい、康一君にメールを送っておいてぼくには何も言わずにダラスへ行くなんてどういう了見だ!」
ずかずかと大股でやってきて、間髪入れずに文句を言いだすのは露伴。
「あー…ははは、」
そんな剣幕に優は視線を泳がせ、頬を引きつらせる。
捕まってしまってはもう逃げられない。
見つかってしまった時点で諦めはついたけれども。
「ちょ、人のセリフとるんじゃねーっスよ!」
露伴を追いかける形で遅れてきた仗助が割って入る。
「まだ居たのかクソったれ仗助!」
「だーーー!!それやめろよっ!!そのクソったれって言うのっ!つか、あたりめぇーっだろ!」
そして始まる二人の言い合い。
周囲から集まる視線に今度は優自身も晒されていることに居心地の悪さを感じて
たまらず声をかける。
「ちょ、二人とも静かに、」
「「誰のせいでコイツと一緒にいる羽目になったと思ってるんだ!」」
「す、すみません。」
優の声掛けで止まるような二人ではなかった。
見事に重なった二人の大声と、勢いに押されて反射的に謝罪してしまう。
「すげぇ、」
今のところ優との言い合いに完敗中のコナンも、
そんな優の様子をみて感嘆の声を漏らすのだった。
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