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騒がしい場に静寂をもたらしたのはこの一言。




「ねーねー、お兄さんたち優さんのお友達なの?」



同時にコナンの方へと顔が向いた仗助と露伴。

ようやく幼い少年の姿に気が付いた。






「なんだこのガキ。」



「………優の隠し子じゃ、「違うわよ!」」



怪訝そうな顔の露伴と半笑いの仗助。



すぐさま仗助の脇腹を肘でド突いてふざけた発言を遮る優。



いてぇーよ!ちょっとした冗談だろ!?

なんて返しを、場に合わない冗談を言った仗助が悪いとして優は黙殺する。







「ぼ、ぼくは江戸川コナン!お兄さんたちは?」



まったく質問に対する答えが返ってこず、

それどころか見事に話が脱線してゆくのを戸惑いながら再度問うコナン。




「俺は東方仗助。優とは幼馴染みたいなもんだ。」


よろしくな、コナン。



「うん!」


わざわざしゃがんで目線を合わせてくれる仗助にコナンも頷きを返す。


髪形は少々変わっているが、そうした子供に対する気遣いから優しい性格のようだと推測する。





そしてコナンはもう片方の男を見やるけれども、


向こうもこちらをじっと見返すだけで口を開こうとはしない。




「この人は岸辺露伴って言って、漫画家さんなの。」


…ちょっと変わり者だから気を付けて。



などと小声のアドバイスと共に紹介をしたのは優。


まぁ、言われなくてもファッションから伝わる個性には気づいているわけだが。





「そ、そうなんだ」

静かに首を縦に振って了解の意を示しながらも、


今もなお感じている強い視線にどこか冷汗が流れるコナンであった。










「おい優、なんでそんな急にアメリカに行くんだよ」



「ごめん、承太郎さんに一度戻るように言われたから…」



「だから、なんでだよ?」
なんかあったなら俺だってアメリカに、


「だめよ。仗助は杜王町を守るんでしょう?それに理由は…、」


そういっていまだ露伴と見つめあっているコナンの後ろ姿をちらりと見やる。

彼の耳には入れたくないという意思表示に首を振る。



「・・・っ、」


どこか納得のいかない仗助を追いやるようにして割って入ってきたのは露伴。




「おい、クソったれ仗助のことなんでどうだっていい。

ぼくは君が何の連絡もなしにアメリカに行こうとしたことに腹が立っているんだ。」



ふと衝撃を感じた足元をみると、コナンが優の後ろに隠れるようにして露伴を伺っていた。



死体すら免疫のあるコナンでさえも、露伴のような存在は強烈なようだ。





「…だって、」


鋭い視線から逃れたいのはこちらの方だ。


己の陰に隠れるコナンが恨めしい。とんだ八つ当たりだけれど。





「この岸辺露伴が仕事の都合でアメリカへもどる友人に、

約束を違えたと怒るような心の狭い人間だと思っているのかぁっ!!」








その程度では怒ったりしない、と怒りながら言う人間に説得力などないように思えるが。





そんなことより気になったことが一点。




「ろ、露伴っ!」



「なんだっ!!」









「私のこと、友達って!露伴が私のこと、友達って!!」



「そ、それはっ…言葉の綾だっ!」

べつに君を認めたわけじゃあ、




「ふふ、うれしい!ありがとう」


怒声をあげていた露伴が、優の言葉に照れて顔を逸らす



そんな露伴の様子をみて


よし、と心の中で呟いたのは優。

うれしいのは本当だけれど、本題からうまく脱線させることができたことの喜びがなかなかだ。




「おいおい、本題とズレてるんじゃ、いっ、!?」


すかさず足を踏んで、

余計なことをいうな、という笑顔を優は仗助に向ける。





「……仗助にぃーちゃん大丈夫?」



おそらく正しい指摘だっただろうに理不尽な暴力を受けた仗助に、

同情を禁じ得ないコナンは、



己の足を抑えてうずくまる仗助の背中をそっと撫でた。




「お前、いいやつだな…」



子供に同情される大人とは、なんとも不思議な図だけれど、

変に気持ちが通い合うコナンと仗助だった。








「そうだ、コナン君。これ渡すわね、」


そんなこんなで、うまく話題をすり替えた優が、

コナンに声をかけて

持っていたものを手渡した。






「なーに?これ」


コナンの手にはクリスタルのキーホルダー

不純物のない、美しい透明な結晶がコナンの手のひらに乗せられていた。



急に渡されるそれに、優の意図が読めずにいると、




「おまっ、それ…」



「なぜそれをこのガキに渡すんだ。」


なぜだか仗助と露伴が驚いた表情で反応を示した。


このクリスタルには何かあるのだろうか。

なんの変哲もないキーホルダーのようだけれど。




「お守りよ。蘭ちゃんには空港に行く前に渡したわ。一応コナン君にも」


説明を促すコナンの視線に応えて

膝をおって目線を下げて話してくれる優。



そうした時折の仕草は、確かに自身を気遣ってくれていると思うコナン。


だからこそ、優の優しさが

優は悪い人間じゃないという推測を後押しする。



そしてそうであってほしいと願ってもいる。








けれど、


「「「お守り…?」」」

優以外の三人の声が綺麗に重なった。




先ほどクリスタルを知っているような反応を見せた二人が、


優の説明を初めて聞いたような反応をしている矛盾を見つけてしまう。




優が嘘を吐いていることは明らかで、


そうした違和感がある度に本当に信じてよいのか、とコナンは自身の中で揺れる。




「俺には…?」



「ないわ。仗助も露伴もお守りは必要ないでしょう?」


「ふんっ!当然だ、」



仗助の言葉に笑顔で拒否の言葉を返す優。


欲しがってる様子の仗助から、このクリスタルは悪いものではないように思えるけれど



結局、何もわからないまま。





優はそうやってコナンの詮索を躱す。上手い誤魔化し方ではないけれど、結局答えてはくれないのはいつものこと。


なら、自分で調べるしかない。




「分かった!」

そう言ってってコナンはジャケットのポケットにクリスタルをしまった。


このクリスタルは何かのヒントになるかもしれない。

そう前向きに考えることにした。







「それじゃあ、もういかなきゃ」

時計を確認すると、思ったよりも時間が経っていた。

慌ててゲートへ向かおうとすると



「おい優!」


「なに…って、うわっ!!」



突然掴まれて引き寄せられる。

気が付けば仗助の腕の中に納まっていた。




驚いて仗助をを見ると



真っ直ぐな瞳と視線が交わる。

初めて出会った時と変わらない、仗助の強く、それでいて優しいサファイアの瞳。





「ケガしたりすんなよ、」


そんなぶっきらぼうな言い方しかできないのは、きっとほんの少しの照れ。

それでも、仗助が心配をしてくれていることは十分に伝わる。




だから、



「ありがと、」


その瞳をきちんと見つめて優は返事をする。


今のSPW財団の状況からして、仗助の言葉に約束なんてできない。

だけど心配してくれるその優しさには応えたい。

そんな想いの言葉だった。


感じていたぬくもりから抜け出して

「コナン君、仗助、露伴、いってきます!」



いってらっしゃい、あるいは、いってこい、などという言葉と

素直じゃない視線での見送り、



それらに背中を押され、

ようやく優は日本を離れるのだった
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