02
大学を卒業するまでは実家で暮らし、
SPW財団に所属してからはジョースター夫妻やら空条家族などにもっぱら世話になっていたこともあり
優の料理のスキルはあまり高くなかった。
3日ほどした段階で頭にしまっていたレシピは底を着き、
お昼は外食にしようと決めた。
そして優が足を向けたのが、喫茶店、ポアロだった。
「お待たせしました、カルボナーラでございます。」
女性店員が優の前に料理を置く。
「ありがとうございます。」
こうなることなら、向こうでもっとレシピを教わっておくんだった…。
優は後悔しつつも、目の前の黄金色のパスタをフォークに巻くいて口元へ運ぶ。
パスタがソースとよく絡んでおり、優の表情が自然とほころんだ。
「…っ、美味しい!」
なんだか久々にまともな食事を食べた気分だわ、と内心情けない事をつぶやく優
まったりと食事をしつつも、優がこの店を選んだのは決して偶然ではなかった。
なれない一人暮らしに四苦八苦しながらではあるが優は例の写真の女性、女子高生と少年の手がかりについて探っていた。
すでに帝丹高校の場所は調べてあるが、ターゲットがスタンド使いであるならば直接接触するのは危険でしかない。
ならば、そのターゲットの周辺を探ることが安全であり、確実だ。
そう考えた優がサーバーに侵入して情報を得たのは昨日である。
女子高生の名前は、毛利 蘭。母親は別居しており、私立探偵を営んでいる父親と二人暮し。
住居は・・・この上。
女性と少年については、服装や身につけているものに特徴があまりなく、この情報が優にとって現在の希望であった。
今日は念のためその姿を実際に目で捉えることを目的としていた。間違いでした、では笑えないからだ。
「またのご来店をお待ちしております。」
「えぇ。お店の名前も気に入りましたし。」
会計を済ませた優は優しく微笑んだ女性店員にそう言い返す。
「名前、ですか?」
「えぇ。私、ミステリー小説が好きでよく読むんです。登場人物の名前がポアロというのでそれが由来かと…違いました?」
ミステリーの女王といわれたアガサ・クリスティーの作品の多くに登場するのがエルキュール・ポアロだ。
優の本来の目的は別だが、喫茶店の名前を見て心が弾んだのは嘘ではない。
今後もこの店でターゲットの様子を窺うだろうし、もしかしたらターゲットについてなにか知っているかもしれないし。
上手く顔見知りになってこの喫茶店に来やすくしておいて損は無いと、店員と話しながら頭を回す優。
「そうなんですね、でも・・・どうだろう。私も由来までは店長にお聞きしてなくて。」
すみません、と返す店員。
「いいえ。勝手に想像していただけですから。」
「あ、でもそれなら面白いですね。ご存知かもしれませんがこの上、毛利探偵事務所なんです!」
「あぁ!本当ですね!気付きませんでした、」
なるほど・・・。優は内心言つ。
2階に実際の探偵、1階に架空の探偵ということね。少々洒落が利きすぎているようだけれど。
今度店長に聞いてみますね、という彼女の言葉に優が頷きを返していると、入店の鐘が鳴った。
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