03
「いっらしゃいませ。あら、蘭さんにコナン君、こんにちは。」
「こんにちは。」「梓さん、こんにちはー」
梓と呼ばれた店員に挨拶を返したのは、優が探していた女子高生と少年だった。
まさかここで対象と鉢合わせしてしまうとは。
承太郎、あるいは仗助のトラブル体質でもうつったかと、優はちらりと思う。
つとめて平静な顔をしながら成り行きを見守る優。
「今ちょうど毛利探偵事務所の話をしてたんです。」
「え、そうなんですか?ごめんなさい、父はちょっと出掛けてて・・・。」
梓の言葉に蘭が反応し、優に眉を下げた表情を向けて謝罪の言葉を述べる。
優はあわてて首を横に振った。
「いえ、依頼ではないので。上の探偵事務所とここのお店の名前が共通しているなって話をしてたもので。」
「名前・・・?」
「僕知ってるよー、エルキュール・ポアロのことだよね!」
おじさんが探偵で、お店の名前のポアロも探偵っておそろいだもんね、
首をかしげた蘭と、反対に得意分野だというかのように目を輝かせる少年。
「ボク、よく知ってるね!」
「えへへ、ボクもミステリー小説好きなんだ!ボク、江戸川コナン。お姉さんは?」
「あら、ごめんなさい名前も名乗らずに・・・。私、如月優です。最近ここらに越してきたの。」
まだ知り合いが少なくて、と続けながら蘭や梓にもよろしくお願いしますと優は手を差し出す。
「私は、毛利蘭です。この町について分からないことあったら聞いてください。」
彼女が優の手を握り返した瞬間、優はスタンドを彼女の眼と鼻の先、すなわち目の前に出現させる。
いくら表情を装っていても、人間の反射的な反応は指先に現れやすい。
承太郎のように見事なポーカーフェイスで、はったりをかますことはできないが優なりの見極め方法だった。
すなわち、優にとって初対面の握手の瞬間がスタンド使いか見破るチャンスであった。
「・・・・・・ありがとう、助かるわ。」
反応が、ない。スタンド使いではないのか。優はチラリと視線をずらしコナンと名乗った少年を見遣る。
彼も異常なし、か。子どもならそれこそ素直に驚いてしまうだろうから、どうやら完全にスタンド使いではないようだ。
敵であったならば破壊力をほぼ持たない優のスタンドでは勝ち目はなく逃げる、あるいは能力で本体の背後をとって気を失わせる以外にないのだ。
優はどこか張り詰めていた気持ちを緩ませた。
しかし疑問が一つある。
なら、なぜ。なぜ、ジョセフの念写にこの二人が写されたのか奇妙でならない。
優は梓とも挨拶をすまし、それじゃあ、そろそろ・・・と言葉を切り出す。
「ごめんなさい、長々と引き止めちゃって。」
という梓に、
「いえいえ、お友達が増えてうれしかったです。コナン君、また今度ミステリーの女王について語りましょうね!」
と優は返し、三者に笑顔を向けて店を出た。
扉が閉まった頃には優の口元は引き締められ、先ほどの笑みは消えていた。
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