太郎太刀と抱擁作戦


「あ、お、おはよう」
「おや、主。おはようございます」
「う、うん」
「…………」
「…………」
「あるじ、」
「あっ、私、仕事あったんだった!」



何でもない、朝の挨拶である。普通なら。……そう、普通なら。しかし私には、到底普通に出来ない理由があった。いや、理由と言うにはくだらないけれど。

「……主」
「……うるさい」
「はぁ、君ねぇ」
「しょうがないでしょ! そんな素直に触らせて! とか言えないじゃん〜〜〜!」

そんな私の姿を一部始終見ていた近侍の青江がやれやれとでも言うかのように隣で溜息を吐いた。


一言で言おう。太郎太刀がフェチど真ん中なのである。


刀剣男士に恋はすまいと思っていた私だが、彼が顕現した瞬間にころっと落ちてしまった。いやだってど真ん中を綺麗に撃ち抜いてきたのだから仕方ないだろう。


@高い身長とそれに見合うだけの体格。
これは比較的重要だ。現世に多いのはヒョロ長身のアスパラや土筆かと思われるような体格の男だけれど、この太郎太刀、体格もがっしりしている。とてもよい。神威が感じられる。高まる。

A長髪(しかも黒!ポニテで黒!)。
元々長髪男子は大好物ですありがとうございます。美形がこれはもうこちらを殺しにかかっている。無理ツラい。青江にそう言うと彼は僕も長髪ポニテだよ、と言って笑ったけれど、違うのだ。いや、青江も充分ツボを突いてはいるんだけれども。

B服が束帯。
これが実際は一番重要である。何が言いたいかと言うと、私は布の多い服が好きなのだ。しかしローブとかそういうのは違うんだよなあ。そう、和装でガッチリと着込んでいるのが好きでたまらない。その状態で抱き締めてほしい。



こんな不純な理由でギクシャクした態度になってしまうのである。仕方ない。いつの時代も恋する乙女とはそういうものだ。自分が乙女である自信は無いけれど。そんな私は見ていた青江の一言に目を剥いた。


「だったら、事故を装って抱き着きにいけば良いじゃないか」

「なっ……! えっ、そん、えっ」
「おやおや、あれだけ僕に語っておいて、恥ずかしいから無理なんて言うのかい?」
「だっ、だって、……何よ」
「んふふ、ううん……じゃあ僕が協力してあげよう」



事故ぎゅー作戦決行同盟が組まれた。