朝食は自然に、いつも通りに済ませた。……チラチラと太郎太刀を見てしまっていた自覚はあるけれど。大丈夫、そんなに問題無いだろう。問題はここからだ。
今日の太郎太刀は非番であるため、自室でゆっくりできる日のはず。それはつまり、あまり部屋から出てこないかもしれないという事である。
「うーーーん……」
「さっき次郎太刀に聞いたんだけど、今は書庫にいるそうだよ。もうすぐ戻ってくるようだから、西廊下に行こうか」
「えっ、お、そ、っか、そうだね……!」
悩んでいたのは何だったのか、情報を掴んできた青江に手を引かれて、私は書庫に繋がる廊下へと向かった。
「青江、まだ?」
「うーん、もうちょっとしたら来るかな?」
コソコソ、コソコソ。
廊下の手前にある曲がり角から顔を覗かせて、できるだけ声を小さくして囁き合った。そう、出会い頭によろけてぶつかる作戦である。……いや、自分でも小中学生じみていることは分かってる。分かってるけれど、今はこれが精一杯なのだ。
「ああ、来るよ」
「えっほんと」
「うん」
心の準備はしたはずなのに、ドキドキと心臓がうるさい。今だよ、と言われて、私はできるだけ自然に、偶然を装って声を掛けるべく一歩を踏み出した。
「あれ! 太郎太刀、こんな所にいたんだ、ねっ!?」
「……おや、」
声が裏返らないようにと気を付けていると、急に後ろからドンッと衝撃が来て本当によろけた。チラッと青江を見れば、大成功という顔をしていた。
「ああ、ごめんね主。僕の足元不注意でぶつかってしまったよ」
「う、ううん、大丈夫……」
そんなガッツリ来るんだ!? と驚きながらもそう言って視線を戻せば、受け止められた拍子で太郎太刀の体に顔を埋める状態になっている事に気付いた。
「!? あ、わ、わ、ごめん太郎太刀! ……太郎太刀?」
「……、ああ、すみません。大丈夫ですか?」
「う、うん。……あ、えっと、ありがと」
すぐさま離れようとしたけれど、太郎太刀の腕が回っていて動けなかった。不思議に思って声を掛ければ何事も無かったように動き出す太郎太刀に首を傾げつつ、私は体勢を立て直した。
そして自然に、自然に努めて書庫のある方へ足を進めた。