Lantern


好きになってくれるまで終わらない死に戻り


不思議な夢を見た。
現実と夢の境目が色水のように混ざりあって自分がどちら側に立っているのか分からないほどに曖昧な場所に私は座っていた。朧気な景色をしていたけれど絵本のように優しい色が当たりを包んでいたことだけ覚えてる。背もたれの無い椅子の上でユラユラ体揺れて、けれど足だけは地面に張り付いたように重く指先一つ動かない。ヒューっと春の匂いを帯びた風が耳にかかる髪を連れ去り、それを宙で好きに遊ばせてやっていたら視界の端から現れた長くしなやかな指が風と戯れる髪を捕まえて花を挿すように耳にかけた。
1度見たら忘れられない、白く綺麗な顔をしたその人は菖蒲色に染めた生糸のような長髪を払って私の隣に座る。そして拳一つ分もない距離まで腰を浮かせて近づくと私よりも一回り大きな手が肩を抱いた。心臓に鞭を打ちわざと鼓動を早めさせるような香りに包まれて気持ちが落ち着かない。何処に置いたらいいか分からない両手を膝の上でクシャッと丸め、流されるままに肩を抱かれた私の顔を彼は愉しそうに覗き込み、それから音を失ったかのようにハクハクと薄い唇を動かす。何を伝えたいのだろう。形をかける唇をじっと見つめていると彼は肩に回した手を引き寄せ、近づきすぎてお互いの前髪が絡んでいる事など気にも留めず吐息越しに体温を交合せ、嗚呼これは愈々かと、目を瞑り柔らかい感触の訪れを腹を括って待っていたのだが。

「『廻音』!!いつまで寝てるの!!!電車間に合わなくなるわよ!!!」

唐突に頭の中で響き出す母親の声に羞恥心が溢れかえり、ちょっと待ってと胸を押し返し目を開けた直後、見覚えのある部屋の壁紙とランニングした後のような滝汗に私は跳ねるよう上体を起こした。悪酔いした妄想にB級恋愛映画でよくあるベッタベタな展開を詰め込んだリアル寄りの夢だった。左胸に手を当てるとドッドッドッとくぐもった鼓動が脈を打っているのを感じる。動悸がする。よかった、目が覚めたんだ。
じんわりと顔から吹き出す汗をパジャマの袖で拭い脱力したように枕めがけて後頭部を沈める。嗚呼びっくりした。湿度の高い雰囲気に流されて危うくキスするところだった。
それにしても…どうしてキスの相手が何の接点もない上に会話すらしたことが無い陽キャ一軍の完璧男なんだ。確かに学部一目を惹く万人受けした容姿ではあるが

欲求不満なのか?いや、そんな事は。


特に現実の私には縁もゆかりも無い恋人たちの戯れはどの場面も心臓に悪く、けれどこの時間がずっと続きますようにと願ってしまうほどに幸福で…

「廻音!!!いい加減に起きなさいっ!!!」
「ん゛〜…んっ、もう起きてるってば!」

それでいて心の内にぽっかりと穴を開ける虚しい夢だったと、頭を抱え自己嫌悪する事から私の気の乗らない1日が幕を開けるのだった。

「何時に帰るの?」
「5時半くらい」
「バイトは?」
「今日はなしっ!行ってきまーす!!」

話したこともない人と夢の中で恋愛してる自分の妄想力の恐ろしさと現実との世界の曖昧さに悩まされている子。

『廻音ゴメン!今日体調悪いから休むわ、ノート頼んだ』

「飲みすぎ…」


大学へ向かう。一般教養の授業。教室の前端に座る。コースのグループラインで誰か出席パス教えてのメールを無視。騒がしい集団が後ろに固まって座る。
立花がいる。彼女の話してる。彼女持ちに、しかも顔しか知らないのに夢の中であんなことしてるなんて自分馬鹿すぎると頭抱える。
一生のお願い!誰か教えて!!とメッセージが可哀想になり仕方なくパスを送る。少数コースなため反応する人いない。
食道できつねうどんを頼む。そして後ろの人もきつねうどんを頼むも、うどんが品切れと言われ「不運だぁ〜」と嘆く。申し訳ないと思いつつもきつねうどんをトレーに置く。


・手を繋ぐ夢見て、なんでちょっと進展してるんだ!?と頭抱える。ひとりで取ってる講義で、隣の人と考えてと言われ、うわぁ嫌だと思いひとりで早く時間すぎないかなぁと時計ずっと見てたら仙蔵の彼女が後ろから話しかけてくる。
この答え何かわかる?と聞かれ困惑しながらも答える。なるほど、ありがと!助かったわと話し合いと言うよりも答え聞かれただけ。
そして授業終わる。バイト先からメール入ってて、『今日シフト入れそうかな?』と土井先生からメール入ってたので、入れます!と打っていたら後ろで「仙蔵おそいっ!」「すまない。文次郎がレポートを出すのに苦戦してな」 「俺のせいかよっ。そもそも、なんでレポートが紙じゃなくて指定サイトにスマホで打ち込む形式なんだよ!たった10分でレポート半ページの内容を打てるわけねぇだろ」「文次郎以外はな。見てみろ。もう半分以上が退室しているではないか」「文次郎ドンマーイ。スマホ使いこなせないならいっそのことシニアスマホに変えたら?」「うるせぇ」
と今最も会いたくない人が後ろにいる。肩がぶつかる距離で食堂へ向かう2人を見つめる。髪が短い。夢の人とはやっぱり違うと否定する。

・最近大学はどう?と土井に聞かれ楽しいですよと答える。土井先生は学童教室の先生をしているが、教員採用試験に一度落ちており、2度目の受験を控えている。たわいもない話をして、今度バイトの子でひとり増えると話を聞く。実は私の知り合いなんだと嬉しそう話す土井に良かったですねと返す。そしてバイトできたのが伊作。主は知ってるが伊作は知らない。養護教諭目指してるらしく経験のためにバイト応募したらしい。

・仙蔵とついにキスする夢みて自己嫌悪募る。なんでこんな夢ばかり!と遠くの立花見つめる。
潮江に仙蔵はやめておけと咎められる(前世の記憶あり)。グループワークか何かで知り合う。文次郎に話しかけに来る仙蔵。困ったことがあれば文次郎に任せておけばいい。見た目通り真面目でつまらない男だからな。おい!
大学構内の影で立花が彼女とキスしてる所を目撃。絵になるなぁと思って足を止めて見てたら潮江に目を遮られ、絡まれる前に行くぞと背を押される。

・とうとう夢解析みたいな本を読み出す。それを見た乱太郎が昔の話を語ってくれる。

・顔にかかった髪に手を伸ばして払う仙蔵
・髪を短く切りピアス開けた主に文次郎が似合ってる(むかしの姿)と褒め、仙蔵は決して似合ってるとは言わない(長い髪の主しか思い出せないから)。

・雰囲気が急に変わった仙蔵。距離が近い上に名前を呼んで来る仙蔵に主は動揺。

昔の仙蔵
・反抗する力も術も知らないお嬢ちゃんの主が死に物狂いで自分を殺しにくる反抗的な目に脳を焼かれ誘拐。誘拐後は全く懐かない主を自分本位に可愛がり鬱病に栄養失調と思ってもみず殺しかける。ドSの塊。主は自分の所有物

今の仙蔵
・美形。流行りに敏感。文次郎とは小学校の仲。可愛い彼女とイチャイチャしてるが、なにか物足りなさを感じてる。文次郎にも春が来たと主にちょっかい出しているが、彼女の困った顔にキュンとしてる。隠れS。記憶が戻り次第文次郎から掠めとる予定。


最初はただの恋愛夢かと思いきや、徐々に不穏となり、最後は全部思い出してまぁハッピーエンド


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