好きになってくれるまで終わらない死に戻り
不思議な夢を見た。
現実と夢の境目が水に垂らしたインクのように緩く渦を描きながら混ざりあって、自分がどちら側に立っているのか分からないほど曖昧な空間にポツンと用意された切り株を荒削りした3人かけの椅子に私は座っていた。
朧気な景色ではあったけど、絵本のように優しい色が空から靴の先までを包みこんでいたことだけは何となく覚えてる。桜吹雪を眺めながら私は背もたれの無い椅子の上でユラユラと体を揺らし、けれど足だけは地面に根を生やしたみたいに固定され、まるで棚に飾られたお人形さんのような気分だった。でも不思議と置かれた不自由さに不満を抱くことはなくて、不自由で不便な状況を当たり前のように受け入れていたような気がする。
起承転結のない物語の一篇。そこにヒューっと春の匂いを帯びた風がページを捲り、耳にかかっていた髪が宙に舞い上がる様をボーッと眺めていたところ視界の端から現れた歪な形の指が風と戯れる髪を捕まえ花を挿すように耳にかけなおした。
遮るものがない視界の中心に滑り込んできたその人は1度見たら忘れられないほどに白が良く似合う眉目秀麗な方で、菖蒲色に染めた生糸のような長髪を嫋やかに払いながら私の隣に腰掛けた。初めはヒト一人分が座れる距離感だった。しかし彼が腰を浮かせて座り直した後は拳一つ分もない距離まで縮まり、ドキマギしている私の心などいざ知らず、一回り大きな手が滑るように背中を撫で肩を抱いた。
肩を触れられている感触は確かにあるのに彼の体温を何も感じないのはこれが夢という張りぼてだからだろう。異性に体制のない心臓がバクバクと大袈裟に鼓動を鳴らし、何処に置いたらいいか分からない両手を膝の上でクシャッと丸めこの甘ったるい空気に耐え忍んでいた。そんな見るからにおぼこな反応を彼は愉しそうに覗き込み、それから音を失ったかのように忙しなく薄い唇をハクハクと動かしだす。
どうしたのだろう。からかっているにしてはやけに真面目な顔つきに、何を伝えたいのだろうかと私も真面目に彼に向き合う。雰囲気を元に唇の動きを読めばある程度何を言ってるのかわかるだろうと、唇の動きをじっと見つめていたところ彼は何を勘違いしたのか肩に回した手をグイッと引き寄せた。
体が大きく傾き左手が彼の右腿を掴み、反射的に上を向いた顔を至近距離で見つめられて、ボッと顔から火がでたみたいに熱い。この先どこまで進んでしまうのだろう。コツンっと合わさった額の間でお互いの前髪が絡み合い、薄く剥離した唇の皮が微かに触れ合う。身動ぎすることも躊躇う近さに、嗚呼これは愈々かと彼の右腿に置いた手に力が篭もり、目の前の動きに合わせて目を瞑る。それからフッと息を吐いた唇から与えられる柔らかい感触の訪れを腹を括って待っていたのだが。
「『廻音』!!いつまで寝てるの!!!電車間に合わなくなるわよ!!!」
唐突に頭の中で響き出す母親の声に羞恥心が溢れかえり、ちょっと待ってと胸を押し返し目を開けた直後、見覚えのある部屋の壁紙とランニングした後のような滝汗に私は跳ねるよう上体を起こした。悪酔いした妄想にB級恋愛映画でよくあるベッタベタな展開を詰め込んだリアル寄りの夢だった。左胸に手を当てるとドッドッドッとくぐもった鼓動が脈を打っているのを感じる。動悸がする。よかった、目が覚めたんだ。
じんわりと顔から吹き出す汗をパジャマの袖で拭い脱力したように枕めがけて後頭部を沈める。嗚呼びっくりした。湿度の高い雰囲気に流されて危うくキスするところだった。
それにしても…どうしてキスの相手が何の接点もない上に会話すらしたことが無い陽キャ一軍の完璧男なんだ。確かに学部一目を惹く万人受けした容姿ではあるが
欲求不満なのか?いや、そんな事は。
特に現実の私には縁もゆかりも無い恋人たちの戯れはどの場面も心臓に悪く、けれどこの時間がずっと続きますようにと願ってしまうほどに幸福で…
「廻音!!!いい加減に起きなさいっ!!!」
「ん゛〜…んっ、もう起きてるってば!」
それでいて心の内にぽっかりと穴を開ける虚しい夢だったと、頭を抱え自己嫌悪する事から私の気の乗らない1日が幕を開けるのだった。
「何時に帰るの?」
「5時半くらい」
「バイトは?」
「今日はなしっ!行ってきまーす!!」
話したこともない人と夢の中で恋愛してる自分の妄想力の恐ろしさと現実との世界の曖昧さに悩まされている子。
『廻音ゴメン!今日体調悪いから休むわ、ノート頼んだ』
「飲みすぎ…」
・
大学へ向かう。一般教養の授業。教室の前端に座る。コースのグループラインで誰か出席パス教えてのメールを無視。騒がしい集団が後ろに固まって座る。
立花がいる。彼女の話してる。彼女持ちに、しかも顔しか知らないのに夢の中であんなことしてるなんて自分馬鹿すぎると頭抱える。
一生のお願い!誰か教えて!!とメッセージが可哀想になり仕方なくパスを送る。少数コースなため反応する人いない。
食堂できつねうどんを頼む。そして後ろの人もきつねうどんを頼むも、うどんが品切れと言われ「不運だぁ〜」と嘆く。申し訳ないと思いつつもきつねうどんをトレーに置く。
・手を繋ぐ夢見て、なんでちょっと進展してるんだ!?と頭抱える。ひとりで取ってる講義で、隣の人と考えてと言われ、うわぁ嫌だと思いひとりで早く時間すぎないかなぁと時計ずっと見てたら仙蔵の彼女が後ろから話しかけてくる。
この答え何かわかる?と聞かれ困惑しながらも答える。なるほど、ありがと!助かったわと話し合いと言うよりも答え聞かれただけ。
そして授業終わる。バイト先からメール入ってて、『今日シフト入れそうかな?』と土井先生からメール入ってたので、入れます!と打っていたら後ろで「仙蔵おそいっ!」「すまない。文次郎がレポートを出すのに苦戦してな」 「俺のせいかよっ。そもそも、なんでレポートが紙じゃなくて指定サイトにスマホで打ち込む形式なんだよ!たった10分でレポート半ページの内容を打てるわけねぇだろ」「文次郎以外はな。見てみろ。もう半分以上が退室しているではないか」「文次郎ドンマーイ。タップ操作してるから時間かかるんだよ。スマホ使いこなせないならいっそのことシニアスマホに変えたら?」「うるせぇ」
と今最も会いたくない人が後ろにいる。肩がぶつかる距離で食堂へ向かう2人を見つめる。髪が短い。夢の人とはやっぱり違うと否定する。
・最近大学はどう?と土井に聞かれ楽しいですよと答える。土井先生は学童教室の先生をしているが、教員採用試験に一度落ちており、2度目の受験を控えている。たわいもない話をして、今度バイトの子でひとり増えると話を聞く。実は私の知り合いなんだと嬉しそう話す土井に良かったですねと返す。そしてバイトできたのが伊作。主は知ってるが伊作は知らない。養護教諭目指してるらしく経験のためにバイト応募したらしい。
・仙蔵とついにキスする夢みて自己嫌悪募る。なんでこんな夢ばかり!と遠くの立花見つめる。
潮江に仙蔵はやめておけと咎められる(前世の記憶あり)。グループワークか何かで知り合う。文次郎に話しかけに来る仙蔵。困ったことがあれば文次郎に任せておけばいい。見た目通り真面目でつまらない男だからな。おい!
大学構内の影で立花が彼女とキスしてる所を目撃。絵になるなぁと思って足を止めて見てたら潮江に目を遮られ、絡まれる前に行くぞと背を押される。
・とうとう夢解析みたいな本を読み出す。それを見た乱太郎が昔の話を語ってくれる。
・顔にかかった髪に手を伸ばして払う仙蔵
・髪を短く切りピアス開けた主に文次郎が似合ってる(むかしの姿)と褒め、仙蔵は決して似合ってるとは言わない(長い髪の主しか思い出せないから)。
・雰囲気が急に変わった仙蔵。距離が近い上に名前を呼んで来る仙蔵に主は動揺。
昔の仙蔵
・反抗する力も術も知らないお嬢ちゃんの主が死に物狂いで自分を殺しにくる反抗的な目に脳を焼かれ誘拐。誘拐後は全く懐かない主を自分本位に可愛がり鬱病に栄養失調と思ってもみず殺しかける。ドSの塊。主は自分の所有物
今の仙蔵
・美形。流行りに敏感。文次郎とは小学校の仲。可愛い彼女とイチャイチャしてるが、なにか物足りなさを感じてる。文次郎にも春が来たと主にちょっかい出しているが、彼女の困った顔にキュンとしてる。隠れS。記憶が戻り次第文次郎から掠めとる予定。
最初はただの恋愛夢かと思いきや、徐々に不穏となり、最後は全部思い出してまぁハッピーエンド
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