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※特捜隊の女の子

制服のポケットをひっくり返し売店の前で嘆く所持金0円少女に手を差し伸べたのは特捜隊のリーダーではなく怪盗団のリーダーだった。

「ほ、本当にこんなに買ってもらってもいいの!?なんか申し訳ないです…」
「気にしなくていいよ。お金は戦闘時に回収した分を使ってるし、他の人にも同じことをしているから」

そう言って雨宮君はチュロス全7種類を1本ずつと珈琲Lサイズを2つ頼み「じゃあまた」と軽く手をあげると珈琲を片手に握り去っていった。あ、お礼言い忘れた。ナマエは慌てて離れていく背中にありがとうと叫ぶ。そしてどういたしましてと言葉を返すように振り返ることなくヒラヒラと手を振った蓮にナマエは都会の男子高生は大人っぽい人が多いのかなぁと少し頬を赤らめながらチュロスが乗ったトレーを手に場所を移動しようとした時だ。

「…」

あの人何やってるの。
気づきたくもなかった観葉植物の裏から体をはみ出し物陰からじーっと私を見つめる不審者1名。ああいうのは花村君がクマの専売特許ではなかったのだろうか。鳴上君の片手には財布が握られており出番を雨宮君に奪われたことがそれとなく察せられる。大人しく出ておいでと手招きすると彼はスタスタと観葉植物から姿を現し距離を詰めた。そして

「餌付けされたのか、俺以外の奴に」
「妙な絡み方するのやめてよ」

俺の方が財布を取り出すのが早かったと雨宮君に謎の対抗心を燃やす悠にわかった、気持ちはわかったからとナマエはいつまでも握りしめている財布をしまわせた。そして「ミョウジも雨宮の魔性の魅力に充てられたのか…」と訳の分からないことを呟く鳴上君の口へ「とりあえずチュロス食べて落ち着いこうよ」と一本差し込み、空いた席向かって背中を押した。
チュロス
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