味方になってやってくれ

タキは俺にいかに自分が優れているかとか、先輩達に対する気持ちを沢山語った後、満足そうに部屋を出て行った。多少でも元気になったのなら良かったけど、多少疲れたな……あまり後輩に好かれて居ないんだろうな。良い奴ではあるが、自惚れやすいのが欠点か。まあ、完璧な人間は存在しないし、居たとしても俺は好かないから良いんじゃないか。ニンジャとしてはどうなのかは知らんがな。俺は溜め息を付いた後、保健イイン達の為に包帯を作ることにした。んー、30個くらいあれば暫くは持つか……?特別の袋も作れば簡単に持ち運び出来るしな。念のために50個くらい作っておくか。
俺は錬成した袋に、これまた錬成した包帯50個を詰め、偶々誰も居なかった保健室にこっそり置いてきた。どうして誰も居ないんだろうな……何かあったのか……?


「ーーおや、サラさん。こんな所で何をしているんだ?」
「あ、ヤマダセンセ。いや、保健室に用があったんだが……誰も居ないみたいなんだ。サンタンダとツルマチが居た筈なんだけどなぁ……」
「ああ……今は誰も怪我をするようなことをしないからな。学園長のご好意で一定の時間になったら保健室に誰も居なくても良いってことになっているんだ。……生徒達には休養が必要だからね」
「……そいつはセンセ達もだろ。ちゃんと休んでるのか?」
「私は平気だが……半助、ああ土井先生が心配だ。胃が弱いからな……無理をしてないと良いが……」
「……アイツは今しなきゃいけないことがあるのにな」
「……!半助は責任感が強いんだ。多めに見てやってくれ。何かあれば私からも口出ししよう」

「(もう既に何かあるんだけどなぁ)……はーい」


力強く頷いているヤマダセンセには悪いけど、既に手遅れに近い感じではある気がする。問題はそれをドイが感じているかなんだが……多分感じてないんだろうな。真実から目を逸らすことに一生懸命みてーだし。お前がやることはそれじゃないだろって言いたい。……今度、ゆっくり話す機会が必要だな、多分。イナデラ達の為にも、少しでも早くに仲直り出来れば良いんだが。自分達の担任から避けられるのはかなりクるだろうしな……
ヤマダセンセに暇だから暇潰し出来る場所を知りたいと言ったら、苦笑しながら修練場の場所を教えてくれた。軍人なら体が鈍るのは困るだろ?って言われた。ヤマダセンセみたいな人好きだな……俺はヤマダセンセにお礼を良い、修練場へと向かった。


***


「此処が修練場……なかなか綺麗だし整備されてるな」
「此処では手裏剣投げとかの飛び道具、体術なんかの鍛練して、奥に火縄銃や火薬関係の練習が出来ます」
「へえ……サンタンダはシュリケン、だからあの丸太に向かって投げるのか?」
「はい、そうです。投げてみますか?」
「……何か怖いから遠慮しとく」

「ふふ、そうですか。…………あ…………不破先輩と竹谷先輩……?」


ヤマダセンセと別れた後、のんびりと修練場に向かっていれば、サンタンダと偶然会う。聞けばサンタンダは明日あるシュリケンのテストの為に練習するらしく、修練場に向かうみたいだから有り難く一緒に行かせて貰う。……迷わない自信がないからな。サンタンダは俺にシュリケンを見せてくれたんだが……刃物だな。一歩でも間違えたら自分を切りそうだ……思わずそう呟けば、サンタンダは朗らかに笑いながら、タキの得意武器はこれ以上に危険なものらしい。……ニンジャって凄いな。
驚いたように呟いたサンタンダの方に目線を送れば、そこには群青の2人。サンタンダの呟きが聞こえたのか、バッと振り返った2人は俺の姿に顔を引き攣らせていた。

「……警戒されてるな。場所は分かったし、出直すか……」
「え、大丈夫だと思いますよ……?あの2人は比較的に温厚な方なので……」
「そうか……?かなり引き攣ってるけど……」
「それは……まあ、あの自己紹介の後じゃしょうがないと思います……ぼくも怖かったですし」
「……不味かったか?視線が鬱陶しくてついな……」
「鬱陶しい……ふふ、やっぱりサラさんは以前の天女様とは違いますね。……最初からサラさんが来てくれてたら良かったのに……」

「……ん、そうか」


ぽんぽんと頭を撫でれば、サンタンダは朗らかに笑う。事情を知らない俺には何も言う資格はないけど、サンタンダが俺に心を開いてくれてるのは正直喜ばしいことだ。最初から俺が来てたら何か変わっていたのかも知れねぇが、カミサマは意味がないことはしない主義だと思うし、10人目と言う節目に俺が選んだのは偶然ではなく何かの必然かも知れない。まあ、良く分からねぇけどな。生憎、カミサマは信じねぇから。ま、今の俺がすることは1つだよな。俺はサンタンダの頭を強めに撫でてから、足を一本踏み出す。
背後から困惑したサンタンダの声が聞こえるが、俺は気にしない振りをして群青に向かって行く。……戸惑ってはいるが、逃げないのはなかなか上出来だな。


「よう、逃げないのか?」
「……え、あ、こ、こんにちは……貴女に危険を感じないので……逃げる必要ないかと思いまして……」
「……と言っても、俺達だけですけどね。貴女に危険を感じてないのは」
「……へー?何で危険を感じてないんだ?」
「「……勘……?」」
「何で疑問系なんだよ。質問を質問で返すな」
「「…………」」
「あー、もう分かった分かった。めんどくせぇな……修練場に来たってことは鍛練しに来たんだろ?やらねぇの?」
「……その、お恥ずかしながら…やり方を忘れてて……」
「……本当、情けなくて過去の自分を殴りたいくらいです……まさか武器の使い方が分からなくなるなんて思わなかった……今まで一緒に頑張って来た筈なのに……」

「……それは、お前等だけの責任じゃねぇだろ。魅了されたのは何らかの力が働いたからだ。まあ、何も責任ないとは言えないけどな」


どう言う意味かは、分かるよな?そう問い掛ければ、群青達は暗い表情のまま頷く。後輩達に謝りたい。でも、今更どんな顔をして会いに行ったら良いのか分からない。自分の相棒の使い方さえ忘れた自分達にそんな資格があるのか。……まあ、大体の考えはこんな感じだろ。当事者じゃねぇから分かったように何かを言いたくはないが、此処まで反省してれば……十分じゃねぇのかな。若いんだから失敗くらいするさ。ロボットじゃねぇんだから。その失敗を乗り越えられるか乗り越えられないかが大事なんじゃねぇのかな。
俺は遠くで傍観していたサンタンダを呼び、此方に来させる。3人とも何処かぎこちない表情をしていたので、俺はサンタンダの頭を撫でる。


「サンタンダ。この2人は自分の相棒の使い方を忘れちまったんだそうだ。お前は覚えてるか?」
「「っ?!」
「え?あ、はい……勿論です……」
「じゃ、自分のシュリケンの練習が終わってからで良いから教えてやってくれ。お前の記憶のままで良い。体は覚えてる筈だし、気軽に考えてくれれば良い」
「はい、分かりました」
「……お前等も、合わせる顔がないとか考えてる暇があるんなら努力したらどうだ?今度は間違えないんだろ?」
「!……はい、勿論です」
「……数馬。情けないけど宜しくな」

「……っ……!!はい、勿論です!!」


群青の言葉に、サンタンダは心の底から嬉しそうに笑いながら何回も頷く。そんなサンタンダの反応に、群青達はあからさまにホッとしていた。サンタンダがお前等を裏切る訳ないだろ。帰りを待ってるんだから、惜しみ無く協力する筈だ。まあ、こんなに嬉しそうにするとは思わなかったが……先輩だから、だろうな。大好きなんだろう。微笑ましいことだ。


「……あ、群青」
「自己紹介が遅れてすみません。5年の不破雷蔵です」
「同じく5年の竹谷八左ヱ門です。クローズさん、ですよね?」
「サラが名前だからサラで良い。その方が呼びやすいだろ。……出来るだけ早めにタキに会ってやってくれるか?」
「滝夜叉丸ですか…?」
「勿論会いに行きますよ。…何回も引き止めてくれましたし」
「んじゃ安心だな。アイツは結構抱え込む癖があるみたいだし、今までは1人で説得と後輩の話を聞いてやったりしてて、見せねぇけど疲れてる筈なんだ。お前達が味方になってやってくれるとアイツも少しは楽になる」
「…滝夜叉丸が…分かりました。鍛錬が終わったらすぐにでも探します」
「…まあ、武器の扱い方さえ忘れた俺達に力になれることがあるのかは分からないですけどね…」
「んなこと関係ねぇよ。大切な先輩が戻って来た。これがタキにとっての最大のご褒美だからな」

「…ぼくも、滝夜叉丸先輩に優しくするようにしますね。サラさんのことを悪く言われたら分からないですけど…」


あー、保健イインカイは何でこんなに可愛い子ばかりなんだ…!思わずサンタンダの頭を撫でれば、サンタンダは驚きながらも嬉しそうに笑ってくれる。うん、可愛い。フワとタケヤはそんなサンタンダに朗らかに笑っていて、更にサンタンダを喜ばしていた。早くこいつらも後輩達に会ってやって欲しいな…きっと喜ぶ。聞いたらフワは図書でタケヤは生物なんだそうだ。生物は分からないが、図書は確かノセもだったな、アイツも喜んでくれると良いが。
鍛錬を開始したサンタンダを、俺とフワとタケヤの3人で眺める。へー、シュリケンって結構飛ぶんだな。暫く眺めてた後、俺は少し離れた場所で刀を使った鍛錬を開始しながら、サンタンダとフワとタケヤの様子を盗み見していた。…うん、ぎこちなさはあるが問題なさそうだな。俺はそんなことを考えながら、鍛錬に意識を集中させた。


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