様々なごめんな

どうやらキノシタセンセが忙しいらしく、5年は自習だと言うので、機能してない6年の代わりに各地を飛び回っているカワニシ達のセンセ達の代わりに勉強を見てやることにしたらしい。自分達の為でもあるから、とフワ達は言っているが、きっと今まで頑張って来たカワニシ達への労いと、一緒に居れなかった時間を過ごしたいんだろう。仕事がない俺は、食堂で軽食を摘みながら勉強している彼等をおばちゃんと一緒に微笑ましく見守る。うんうん、仲が良いことは良いことだな。


「サラちゃん、今日はずっと居てくれるのねえ、有り難いわあ」
「あー、ずっとは無理だな。この後、少しだけ抜ける。シナセンセと約束があるんだ」
「山本シナ先生と?不思議な組み合わせねえ。…危ないことじゃないわよね?」
「危なく、はないとは言えねえかなぁ…ガクエンチョウの返答次第じゃ手荒な真似をしなきゃならねぇかも知れない」
「…学園長にも関わりがあるのね。あまり無理はしないで頂戴ね。サラちゃんって普通の顔で無理しそうだから心配だわ…」

「ーーあー……うん、無理はしないよ。有り難うな、おばちゃん」


何故か、グレイシアさんを沸騰させるような面影をおばちゃんに感じ、俺は頬を掻きながらそう答えれば、おばちゃんはホッとしたように笑いながら、俺の頭を撫でる。…かあさん。…待て待て待て、何で泣きそうになるんだ?おばちゃんは母さんじゃないし、お袋でもない。…参ったな、ホームシックか?まあ、お袋には会いたいからなあ…俺が居なくて平気かな、親父が居なくなってからそんなに経ってねぇし、…早く帰らないと。


「…サラちゃん?」
「、何でもない。またサンドイッチでも作るか?軽食人気みたいだし」
「あら、そうねぇ……朝ご飯、足りなかったかしら」
「んー…違うんじゃねぇかな、多分だけど。気まずいだけだよ、カワニシ達は純粋に嬉しいんだろうけど、フワ達は…気にしてるみたいだな」
「…そう…こればかりは何も出来ないわねぇ…」
「そうだな、本人達で何とかして貰わないと…あ、何か甘いもの作ればちっとは雰囲気良くなるんじゃないか?」
「あら、良いわねえ!サラちゃん、作るの手伝ってくれるかしら?」
「勿論。何作るんだ?」
「そうねぇ、お団子なんてどうかしら」

「良いね、乗った!」


本当はクッキーとかが雰囲気出るだろうけど、時間が少し掛かるし、材料もなかなか高価だろう。卵とかめっちゃ使うし。お団子ならそんなに高くないもんな、そうしよう。少し多めに作ってくノ一の子達にも配ろうかな、受け取って貰えるか分からねぇけど。まあ、受け取って貰えなかったらキリにでも渡そうかな、シンの方が良いか。そんなことを考えながら、おばちゃんの隣で形を作る。少しでも距離が縮みますように、なんてガラじゃねぇなあ…


「ーーフワ、捗ってるか?」
「わっ、サラさん!…大分忘れてるなあってびっくりしてます」
「忘れてんならもっかい覚えれば良いんだよ、体は覚えてる筈だから簡単な筈だぜ?ほい、差し入れ」
「わーっ、お団子なんだなあ!!」
「おほー、こいつは美味そうだ!サラさん、おばちゃん、有り難うございます!」
「良いのよ、お茶のお代わりもあるからね。サラちゃんの淹れたお茶、美味しいわよ」
「…へえ、本当ですか?」
「お、疑うのか?カワニシ、湯呑み貸せ。びっくりさせてやる」
「あ、えと、俺も貰っても良いですか?」
「あ、俺も…!」
「構わねぇよ。ノセとイケダも湯呑み寄越しな。お、フワとタケヤもか、沢山あるから欲しかったら言ってくれ。自分で淹れても良いぞー」
「「「…っ……」」」
「…先輩達はサラさんのこと誤解してるんだなあ…サラさん、僕も!」
「良いんだよ、気にしてねえし、間が悪いからなあ。タケヤもシメようなんて思うなよ?ほら、茶でも飲んで落ち着けって」
「う、でも…「うるせえ」んむ!?」
「サラちゃん、乱暴は良くないわよ」
「うるせえのが悪い。美味いだろ?」
「…美味いっす。でも、せっかくだから味あわせて下さい…」

「じゃあ、ハチヤとかは気にすんな。今は後輩だけ考えろ。何のためにサンタンダに頭下げたんだ?こいつらだってハチヤとフワと同じ級友だろ、信じてやれよ」


な?と白だけじゃつまらないからと食紅を使ってカラフルに色付けした団子を三色団子みたいに串で刺したやつをハチヤに向ければ、納得いかないという顔はしていたものの、頷いてから団子を受け取る。そのことに安堵しつつ、茶も勧めれば美味い!と輝くような笑顔を見せてくれた。うんうん、エドもこんだけ笑ってくれれば可愛いんだけどなあ。カワニシ以外は美味いって言ってくれたが、カワニシはまあまあだったようだ。まあ、素直じゃないだけなのは分かってるけど。エドだな、小さいエドが居る。エドも小さいけどカワニシよりは大きいだろう。…大きいよな?


「ーーサラ、居る?」
「あ、シナセンセ。時間?」
「ええ、今大丈夫だったかしら?」
「へーきへーき。んじゃおばちゃん、用事終わったら戻って来るから」
「ーー…あまり無理はしちゃダメよ?」
「はあい。んじゃ、お前等は勉強頑張れよ?」
「…サラさんに言われなくても。サラさんこそシナ先生に迷惑掛けないで下さいよ」
「掛けねえよ。行こーぜ、シナセンセ」
「ええ。それじゃあ行きましょうか」

「おー。あ、団子作ったんだけど食って貰えっかな?警戒されちゃう?大丈夫?良かったー。…んな顔すんな、大丈夫だから」


憎まれ口を叩きながらも不安ですって顔をしているカワニシの頭を軽く撫でてから、俺はシナセンセと一緒に歩いて行く。信頼されてるのね、なんて微笑ましそうに笑いながら言うシナセンセに、どうだかね、遊んでるんじゃない?なんて言えば、シナセンセは楽しそうにくつくつ笑う。…それにしても、シナセンセって特別なんだな。生徒とすれ違う度に睨まれるんだけど、シナセンセに気付いて気まずげに去って行く。…生徒避け?何が怖いのかねえ…


「サラ?…やっぱり睨まれるのは気分悪いわよね、シメる?」
「え、…あー、大丈夫大丈夫。慣れてっから。シメるなんてシナセンセの口から出るなんて思わなかった」
「あら、そう?私の教え子達も普通にシメるって言うわよ?」
「ひょえー、信じらんねえ。…時代が変わると男女も変わんだなあ…」
「サラみたいに口が悪い子はあまり居ないけれどね」

「…そいつは一安心だな。俺んとこにはそこそこ居るけど」


ま、仮にも軍人だしなあ。そんなことを考えながら歩いていれば、シナセンセは複雑そうな表情を浮かべる。…理由は何となく分かるけど、あえて問わないようにしようかな。面倒だし、シナセンセの答えに同調することは出来ないから。口調も変えるつもりないしな。
…ごめんな、シナセンセ。シナセンセは自分の教え子だけ考えといて。俺はカラダを武器に、なんて出来ないからさ。
3/9
prev  next
戻る