やっぱり暴君は暴君
ギスギスした空間で作る料理はこれっきりにして欲しいものだな。何とか全員分の食事が行き渡り、後はおばちゃんと手伝いをしていた俺達が食べれば終了だ。まあ、全員と言っても俺が知ってる奴等(6年と4年を除く)だけだけどな。シャドウセンセやアンドウセンセが連れて居た子達にはまだ怖がられてたらしく、フシキゾウとしか話せなかった。まあ、は組の子達が社交的、だったのだろうと無理矢理納得しよう。…気にしてなんかないぞ。ユキ達の笑顔だけが救いだ、やっぱり女の子の笑顔は可愛い。美味しいって言われて嬉しくない筈がないからな。
おばちゃんが俺達だけの為に、と特別に拵えてくれた卵焼きを箸で一口サイズに分けて行く。おばちゃんと俺とカズマ、3年生で席に座っているんだが…距離感!!カズマが俺にぴったりくっ付いているから視線が刺々しい。最初は他の3年と食えと促したんだが、カズマは迷惑ですか?と目を潤ませながら腰に抱き付いて来た為に一緒に食べることになった。泣かせたい訳じゃないからな。頂きます、と呟いてから卵焼きを口に入れる。んん…やっぱり美味い。甘さ加減が絶妙だ。
「最初に食べた時も思ったけど、おばちゃんの卵焼きって美味いよな、好みの味だ」
「あらそう?サラちゃんに気に入って貰えてるようで嬉しいわ」
「おばちゃんの料理はいつも美味しいですよね!僕はサラさんが作ったお味噌汁が好きです…ホッとします」
「はは、有り難うよ。カズマが作ったお浸しも好きだな、濃過ぎないのが良い。知り合いが作ったのは辛くてだな…こんくらいが好みなんだよ」
「あ、有り難うございます…!!…実は他の皆もサラさんのお味噌汁大好きなんですよ、ほら、頬が緩んでるでしょう?」
「…てっきり毒が仕込まれてるって警戒されて残されると思ってた。へえ、あんなに破顔するくらい気に入って貰えてるのは有り難いねえ」
「お残しは許さないのよねえ。食材だって無限じゃないし、嫌いだからって食べないのは良くないでしょう?だから、捨てるなんて許さないわよって最初から言ってるのよ」
「そりゃ大した心掛けだな、流石おばちゃんだ。…飢えほど恐ろしいものはないからな」
お茶を一口飲みながら、忘れてしまいたいと思っていた記憶が僅かに蘇り、俺は頭を振る。…あれは、悲惨だったなあ。野菜や米は害虫にやられ、全ての家畜は病気を貰い、水さえも汚染され、周りの村に頼んでも何も貰えず、小さいガキは耐えれずに野草を食べ、毒に当たって死んでいった。遅かれ早かれ、俺もそうなってしまったかも知れない。…まあ、それも親父が言うお父様とやらが俺の住んでる村、一族を潰す為に仕組んだ訳なんだが。食べれるものがない、水が飲めない。…出来れば2度と経験したくないものだな。
暫くのんびりしていると、廊下が何やら騒がしい。ただ、ゼンポウジが何やら言ってるのは分かる。そしてこの足音はーー
「おっ、やはり此処に居たか、教官!!おはよう!」
「な、七松先輩…?」
「お?三之助じゃないか、久し振りだな!」
「おはよう、こへ。朝飯は?」
「忘れていた!まだあるか?」
「はいはい、今から用意するわね。サラちゃんは七松くんのお相手してて良いわよ」
「悪いな、おばちゃん。こへ、俺を探してたのか?」
「ああ!まあ、教官なら此処に居ると…「てめえ、小平太!!少しは止まりやがれ!」む?留三郎、何故そんなにぼろぼろなんだ?」
「うう…ごめんよ、留三郎…僕のせいで…」
「伊作先輩!?」
「け、食満先輩…」
「…オーケー、話は分からないが、こへは後で裏裏山走り込みな。ゼンポウジ、傷治してやるから来い」
取り敢えず軽めにこへの額を小突き、ゼンポウジに手招きすれば、ゼンポウジは申し訳なさそうな表情をしながら、近付いてくる。ケマもぼろぼろだけど、怪我はしてなさそうだな。服を直せば良いくらいか。ゼンポウジに向かって両手を翳し、癒しの錬金術で怪我を、普通の錬金術で服を直し、ケマの服も直す。まるで新品のようになった服に、目をまん丸にしているゼンポウジは何か猫みたいだ、猫目だから余計そう思うのかもな。…それにしても、
「こへ、そのデカい袋はなんだ?何か捕まえて来たのか?」
「ん?ああ!!教官が喜ぶやつだ!」
「俺が?」
「小平太!サラさんが喜ぶ訳ないだろ!?早く出してやれって!」
「…出してやる?」
「あの、サラさん。あの袋の中身ーー僕達以外の6年生3人なんです」
「ーー…はっ?え、…マジで言ってる?」
「…僕も、夢だと思いたいんですが…」
「こへ、早くその袋を降ろして出してやれ」
俺の言葉に、こへはおう!と笑顔で言ってから、ドスン!と袋を地面に落とし(あれは降ろすって感じじゃなかった)袋を開ければ、それには気を失っている3人の男が居て、3年がサッと顔を青くし、それぞれの先輩に向かっていく。俺に褒めて褒めて!と言わんばかりに戯れ付いて来るこへの頭を叩いてから、3人の男の様子を眺める。…俺が教えた手刀だな?そうじゃないと思いたかったが俺が教えたやつだよな??…勘弁してくれ。
「立花先輩!!」
「潮江先輩!」
「中在家先輩!」
「食満先輩、こいつは一体…?」
「おお、作兵衛も居たのか。いや、俺達にも分からないんだ。文次郎と話をしようと思って部屋に行ったら小平太が出て来てな、大きい袋を持っていたからそれは何だ?って聞いたら文次郎達だって言うから追い掛けて来たんだ」
「…揺さぶっても起きない。数馬の見解はどう?」
「え、う、うーん……伊作先輩はどう思います?」
「そうだね、何らかの神経に細工されてる気はするけれど…サラさん、どうしました?」
「…悪い、これは俺がこへに教えた奴だ。首の後ろのツボを狙ってやる奴で、もう一度同じことをしない限り目を覚まさない。…仲間なんだろ、何でこんな手荒な手段を使った?」
「?教官はコイツ等に会いたがっていただろう?だから連れて来た!」
「俺が教えたのは敵を倒すことを目的とした奴で、仲間にやるもんだとは教えてないはずだが?」
「…だって、コイツ等が教官と会わなければいずれ教官は帰ってしまうだろう?そうなるのは避けたいからな!」
「だからって…!…ああ、もう。良い、話が通じる気がしない。言い訳は後で聞いてやるから起こしてやれ」
何なんだコイツは。俺の言葉に不満気にしたが、教官命令だと言えば、こへは渋々と言った感じで起こしに掛かる。ドスっ、ドスっと起こしてるとは言い難い音が響く。…親の仇を討つような威力で仲間に手刀したんだな、コイツは。ぐ、と苦しそうな声を漏らす3人の男に、俺は溜息を付く。教えたの失敗だったな…まさか仲間にやるとは思わなかった。そんな俺に対し、刺々しい視線を向けていた3年の視線が憐れむものになってたのは仕方ないと思ってる。…マジかあ…
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