行動力を侮るなかれ
こへ達以外の6年とカズマ以外の3年が改めて自己紹介してくれた。まあ、警戒は怠っちゃいねえ、って態度は正解だろうな。俺はまだ不審者なんだし。敵意を感じられなくなったのは有り難いな。まあ、俺は気にしないけどおばちゃんの良心が心配だったし。にしても、なんで此処の名前はこんなに発音しにくいんだ?やっぱり誰かしらに教えて貰うべきだよなあ…誰が良いだろうか、センセにはゆっくり休んで欲しいし、ジョウキュウセイには後輩達と遊んでやって欲しいし、あれ、詰んでね?コマツダにでも聞いてみるかなあ…発音くらいなら教えられるだろ、多分。
ぎこちないものの、他愛のない会話をしている彼等をおばちゃんと眺めていれば、不意に廊下が騒がしいのに気付く。何か引きずってるような…?当然全員が気付いたらしく、不思議そうに入口を見つめ、ひょっこり顔を出した人物にタチバナとゼンポウジがガタッ!と身を乗り出した。
「喜八郎!?」
「ちょ、綾部!?何で医務室から出てるの!!軽い貧血もあるって言っただろう!?」
「…綾部先輩…」
「おやまあ、久し振りだね藤内。自室から出て来てるみたいで安心しましたよ、立花先輩。サラ、昨日はどうも有り難うございますー」
「ん?ああ、俺は何もしてないからなあ。もう良いのか?」
「はい、大丈夫です。ああ、サラにお土産です」
「土産?何処かに行ってたのか?」
「田村三木ヱ門と斉藤タカ丸さんです」
「ーーは、?」
「会いたかったでしょ?」
「「ん゛ーーっ!!」」
「田村!?」
「うわああ、タカ丸さん!?」
「…あや、お前もか…離してやれ」
「えー、捕まえるの苦労したのにー」
「あー、じゃあ、等価交換だ。今度何かしらご馳走してやっから離してやってくれ、な?」
「…分かりましたー」
「うんうん、聞き分けの良い子は嫌いじゃねぇよ。有り難うな」
むす、としているあやの頭を軽く撫でてから、カズマ達の為に作った白玉団子を口に放り込めば、あやは驚いたようにしながらも咀嚼しては嬉しそうに破顔する。どうやら気に入って貰えたらしい。ちら、と視線を向ければ意図が分かったのかゼンポウジとカズマが近寄って来る。可能な限り痛くないようにゆっくりと腕を拘束している縄を解いてから、口を塞いでいるテープを剥がす。ぷはっ、と息を吐いたのを確認した後、俺は本職に任せるべく後ろに下がる。
「田村、意識はしっかりしてるかい?クラクラしない?」
「は、はい…何とか…」
「タカ丸さん、まずは深呼吸しましょう。吸ってー」
「…スー…」
「吐いてー」
「…ハー…」
「…どうです?」
「…うん、少し落ち着いたかな。有り難う、数馬くん」
「いえいえ、力になれたのなら何よりです!」
「っ、喜八郎!!いきなり何をするんだ!!開けてーからの鳩尾に一発は酷いじゃないか!!」
「…おい、仙蔵。てめぇはどんな教育してんだよ、ウチのをあんま虐めんな」
「…喜八郎は私でも制御出来ないが…すまないな、文次郎」
「き、喜八郎くん…僕、何か嫌われることしたかな…?怒ってる?」
「あ、綾部先輩!!タカ丸さんが不安になってますよ!?」
「別に他意はないですよー、僕は連れて来たかっただけです。僕が素直に言っても来てくれないだろうからこうしましたー」
「お前は極端過ぎんだよ。大体なんだよ、俺への土産って。いつ、俺が拐って来いって言った?」
「えー、でも会いたかったでしょ?特に三木ヱ門」
「…私?」
「火器について知りたいとか物好きなこと言ってたでしょー?」
「てめぇはどこまで知ってんだ!?」
俺、お前に言ったか?と問い掛ければ、あやはさあ?と視線を逸らす。コイツ、誤魔化す気だな…吐かせるべきだよな、うん。どうやって吐かせようかと模索していれば、突き刺さる視線。いや、誰からかとかは見なくても分かってるんだが、何となく、そっちを向いたらいけない気がする。タムラってあれか、タキと同じタイプか、なんて思っていれば、あ、あの!!なんて大声で叫ぶように声を掛けられ、思わずおう!なんて返事をしながらそっちを向けば、ガッチリと手を握られた。
「か、火器が、好きなんです、か?」
「え、あー…好き、というか、興味がある。かっこいいし」
「…サラさん、でしたよね?貴女は分かってますね!!今までの天女はユリコやカノコの良さが全っっっく分からない愚かな奴等でしたが、貴女は火器を好んでいらっしゃる!!今まで避けていてすみません。この田村三木ヱ門、貴女の力になります。何かあれば言って下さい!」
「お、おう…?有り難う??」
「…お姉さんの髪、綺麗だねえ。でも、毛先が傷んでるね、爆発にでも巻き込まれちゃった?」
「え?あー…まあ、日常茶飯事だしなあ、そのせいかもな」
「日常茶飯事!?サラさん、特攻隊とかだったんですか!女性を戦時に突っ込ませるだなんて!!」
「カズマは優しいなあ。まあ、そんな世界だったからな。それに、意味がなかった訳じゃないんだぜ?彼奴等は俺に死んで欲しかったんだよ、簡単に死には死ねぇけどな」
「…女性、なのに?」
「トップの籠愛を受けてる上に、周りからの信頼も厚かったからなあ、蹴落とそうと必死だったんじゃないか?上を目指してる奴からしたら、な」
まあ、目指すつもりなんてなかったけどな。俺を落とせば大総統に見初めて貰える、昇進出来る、俺が居た立場を貰えるって思ってたらしいな。俺同様に、ちゃんと仕事出来ると過信していたらしいな。愚かだよなあ、俺がどんだけ国に対し身体を捧げてたと思ってんだ?生半可な気持ちで務まるほど甘くねえんだよ、位持ちってのは。敗戦は疎か、逃亡だってあまり褒められたもんじゃないからな。それに、戦ってのはどうしても命が関わるもんだ。国としても俺みたいな人材は放っておけなかったんじゃないか。何故って?そりゃあ…
「身内が居ない人間は惜しむ存在が居ないから捨て駒にピッタリだろ?」
まあ、こんなことを言ってた奴は早々に親父に切り捨てられてたけどなぁ。親父はセコム…ああ、なんつーか、あれだ。特定の人物のことになると、反応が早くなるみたいな。泣かせたりする前にいつの間にか背後に居たりして圧かけてるみたいな。え、ザット?へえ、フシキゾウを気に入ってんのか、成程な。ああ、そうそうそんな感じ。その子に害するつもりなら容赦しないよ?みたいな感じになるのがセコムな。まあ、血は繋がってないけど恩はあるし、親父が大総統だったから国に尽くすって決めた訳だしな。あの人が親父じゃなかったら、今とは違う人生を歩んでたんだろうなあ…
ドンっ!と衝撃が来たと思えば、あやが腹にタックルして来てはグリグリと頭を押し付けてきていた。これって慰めてるのか?みたいなことを思いながらも少し笑みが零れる。痛いけど我慢してやるよ、…有り難うな。
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