モテ期到来?

ふわり、と多彩な花びらが舞う。どうやらこの世界の花と俺が知ってる花は同じらしい。有り難いことだな。1年は組の皆と、ドイとヤマダ先生、ヨシノ先生とコマツダ。そしてーー…案内はガクエンチョウが自らしてくれるという贅沢仕様だ。勿論、ヘムヘムも一緒だ。余程自慢なのだろう、説明するガクエンチョウは何処か誇らしげだ。ま、は組の皆とコマツダは聞いてないみたいだがな。仕方ないだろ、諦めてくれ。俺やドイ、ヤマダ先生とヨシノ先生はちゃんと聞いてるからな。


「しっかし、サラとは趣味が合いそうで嬉しいのう。身体能力も申し分ない。どうじゃ、忍者を目指してみる気はないかのう?」
「ーーは?いやいや、無理だろ。隠密は苦手なんだ」
「それはさほど問題ではないのう。は組の子達は隠密出来そうに見えるかの?平滝夜叉丸や田村三木ヱ門はどうじゃ?」
「あー…待て待て。比べる対象がおかしいだろ、言いたいことは分かるけどよ」
「おかしくはないじゃろう。まあ、サラが此処に残ると決断した時の1つの手段として考えておくのが良いじゃろうな」
「…1つの、手段」
「うむ。ワシとしては家庭に入るのもアリだとは思うが、サラは嫌じゃろう?」
「…あー…多分、落ち着かないだろうな」
「そうじゃろう?まあ、このままずっと忍術学園に居てくれても有り難いがの」

「…ああ。そう言って貰えて有り難いよ、助かる」


ガクエンチョウの偽りのない本心に、思わず頬が緩む。これが、上に立つ人物の懐の深さか。無条件に受け入れられてることを有り難く思いつつ、それで良いのかさえ思ってしまう。天女のこともあるし、もう少しくらい警戒した方が良いんじゃないか?まあ、周りに手出しはさせねぇけど。俺とガクエンチョウの話を黙って聞いていたドイとヤマダ先生の方を見れば彼らもまた、優しい笑みを浮かべていて。…ああ、守りたいな、なんて思った。


「サラさんっ!!ちょっとしゃがんで下さい!」
「お?何だよ、キリ」
「へへ、おれからプレゼントっす!あ、ちゃんとヘムヘムに許可取りましたからね、学園長先生!」
「花の指輪か、これはまた見事じゃのう」
「きり丸は本当に器用だな。お前も見習わないとな、半助」
「うっ……あー…似合っているよ、サラ」
「おれがサラさんの為に作ったんだから当たり前じゃないっすか!サラさん、気に入って貰えました?」
「…たんぽぽの花指輪か…可愛いな、有り難う」
「へへ!大人になったらちゃんとした指輪買うんで、あの話考えといて下さいね!」
「「「あの話?」」」
「おまっ、まだ諦めてなかったのか?俺はダメだって言ったよな?何で諦めないんだよ」
「諦めませんよ!おれ、サラさんのこと大好きですし!年の差なんて関係ないですよー!大人になって迎えに来ますからね!」
「迎えにって……俺が元の世界に戻ったらどうすんだよ」
「そんなの決まってるじゃないですか!探しますよ、どんな手を使っても!!おれ、諦め悪いんで!サラさんも腹括って下さいねー!サラさんのこと、諦めるつもりないですから!」

「…はーー…分かった、覚悟だけはしておくよ」


まあ、俺は簡単には落ちないけどな?と笑いながら言えば、キリは上等です!とにっこり笑いながら言っていたが、目が笑ってないのに気付き、俺は気を引き締める。これは…色んな手を使って来そうな気もするが、それだけじゃない気がするな。…誰かに対する牽制?まさか、なあ…俺は気のせいだと思いたかったが、俺の知らない内にー…


《土井せーんせ!少しは本気出さないとおれが本当に貰っちゃいますよ?おれはサラさんがお嫁さんでもお母さんでも大歓迎なんですからね!》
《なっ、や、わ、私は別にサラが好きな訳では…!!》
《いやいや、それは説得力がないぞ。半助、お前がサラくんを一等大切に想ってるのは側から見れば一目瞭然…少しは顔に出さないようにしないとな》
《そうですね…私でも気付きましたから。まあ、流石に小松田くんは土井先生がサラさんを好きだってことには気付いてないかも知れませんが、サラさんと一緒に居ると土井先生の目が怖いって呟いてましたよ》
《なっ、え、…そんなに、分かりやすいですか?》
《《《とても》》》
《そ、そんなあ…》
《うむうむ、恋愛は素晴らしいからのう!ワシは誰がサラの心を射止めるか楽しみにしとるかの!》
「学園長!からかわないで下さい!!」
「うおっ、何だよ、どうしたんだ?ガクエンチョウは何も言ってなかっただろ?」
「え、あ、な、何でもないから気にするな。ほら、乱太郎達が呼んでるから行ってあげてくれ」

「?変なドイだな。まあ、呼ばれてるからには行くけど。キリ、行こうぜ?」


何故か顔が真っ赤なドイに背中を押され、不思議に思いつつも呼ばれてるのに無視するのは最悪だからな。キリに向かって手を出せば、キリは笑顔で掴んでから走り出す。はは、子供は元気だなあ。ちらっと転ばないように気を付けながら後ろに視線を向ければ、先生達に何か言われてるようなドイの姿が見え、俺は更に首を傾げることになる。後日、矢羽音と言われるニンジャ達の間で有名なテレパシーのような存在があることを教えて貰うまで、ニンジャは小声で話すことが可能なんだなあ、とか思っていた。


「サラさん、わたし達からの花冠も貰って下さい!」
「おお、有り難うな。ただなあ、俺に花冠は似合わないだろ、大雑把だし」
「そんなことないですよ!綺麗ですよー」
「ぼくもしんべヱの言う通りだと思いますよー」
「いつの間に花冠なんて作ったんだよ…!サラさんは!おれの!!」
「まだ決まった訳じゃないだろう?それに、ぼく達はあくまで先輩達を元に戻してくれたお礼であげただけだよ」
「庄ちゃんったら、相変わらず冷静ね…!」
「あ、おれもサラさんの恋人候補に立候補しても良いですか?」
「ぼ、ぼくも立候補、したいです…」
「ぼくもぼくも!」
「なー!?ダメったら、ダメだからな!団蔵も金吾も虎若も絶対ダメー!!」
「五月蝿いなあ、決めるのはきり丸じゃなくてサラさんだろ?あ、今度時間がある時、ぼく達のカラクリ見に来て下さいよ。勿論、何か困った時も協力しますよ?」
「サラさんが居た時代のカラクリとかも教えてくれたら嬉しいです」
「ぼ、ぼくともお話して下さい…!!そ、掃除の話とか!」
「何で掃除限定なんだよ、イスケ。俺は何でも話するぜー?そんなに緊張するな、迷惑なんてことないから。寧ろ有り得ないから」
「…良いんですか?」

「もっちろん。暇さえあれば気軽に声掛けてくれよ。お前達と話すの好きだしな」


恋愛対象にはそうそうならないが。付け足した言葉に、キリとダンゾウとトラワカとキンゴは複雑そうな表情を浮かべる。いやいや、当たり前だろ。年齢差を考えろ、年齢差を。俺はショタコンじゃない。…まあ、楽しそうではあるが、な。魅力的だと思う。年齢差を考えなければ、な。


「ーー…つまり、サラさんが年齢差なんてくだらないことを考えないようになるくらい、夢中にさせれば良い、ということですね?」
「は、え、ショウ…?」

「そういうことだよ、皆。自分に夢中にさせれば良いんだ。…帰る、なんてこと考えられないくらいに、ね?」


マジかよ。と思わず言葉を呟けば、ショウはにっこり笑いながら、ぼくも本気で行きますから覚悟して下さいね、と宣言される。待て待て待て、目がおかしい。その目は知ってるぞ、獲物を見付けた捕食者の目だ。そんな獰猛な瞳を10歳で出来るとはなあ…え、俺が獲物?マジかよ。…これって何て乙女ゲーム?需要ないから勘弁してくれよ…
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