可愛いさ極まれり

1年は組とドイとヤマダ先生、ヨシノ先生とコマツダで花見を堪能した後、俺はくノ一の長屋に戻る。戻る最中にすれ違ったくノ一の子達に小さいながら花束を渡せば、彼女達はにこにこ笑いながら受け取ってくれた。うんうん、やっぱり可愛い子に花は映えるな。笑顔が眩しい。勿論、それはシナ先生も例外ではない。当たり前だろ?女はどんな年齢になっても美しいってお袋が言ってた。偶々任務が終わって帰って来ていたらしいシナ先生にも花束を渡せば、彼女は嬉しそうに受け取りながら、口を開く。


「素敵な花束を有り難う、サラ。お返しに良いことを教えてあげるわ」


ーー早歩きで、足音を立てずに貴女の部屋に向かいなさい。サラなら余裕でしょう?
くすり、と楽しそうに笑いながら、シナ先生は俺の背中を押す。理由を聞こうとすれば、シナ先生はにこにこ笑いながら俺の背中をぐいぐい押す。…痛いわけじゃねぇけど、話すつもりはないみたいだな。俺は溜息をつき、部屋へと足を進める。もうそろそろで部屋に着くけど、良いことってなんだ?と思っていれば、不意に俺の自室の前で動く影を見付け、俺は壁の後ろに身を隠す。


(ーーあれは、フシキゾウと…シャドウ先生とアンドウ先生が受け持ってるガキ、だよな?)


1年い組と1年ろ組、だったか。確か、くノ一の長屋には申請しなきゃいけないんだよな?誰に申請したんだ…?コマツダ、違うだろうしなあ…やっぱり互いの先生だろうか。俺に何か用だったのか?ふ、と彼等の手元にある花束を見て、彼等があの花をくれたのかと理解していると、フシキゾウが口を開いた。


「…サラさん、喜んでくれるかなあ…」
「ぼく達、い組からの贈り物だぞ?喜ばない訳ないだろう!」
「え、ぼ、ぼく達も一緒に選んだのに…!」
「お前達がどうしても、って言うから一緒に選んであげたんだから感謝して欲しいね!」
「…怪士丸が居たからってこと忘れてない?花言葉を教えたの怪士丸なのに」
「そうだよ。佐吉、伝七。ぼく達は怪士丸に感謝しなきゃダメだよー」
「そうだね、ぼく達は感謝しなきゃいけないよ。花を贈ろうって提案してくれたのも彼だからね」
「え、あ、そ、そんなに大層なことはしてないよ…!!」

「…可愛いやり取りだな」


思わず頬が緩む。は組の皆も勿論可愛いが、彼等も可愛いじゃないか。は組とは違う可愛いさがあるなあ…あの花を贈ろうと進言したのは彼奴か。嬉しかったし、お礼を言わなきゃならないな。8人か…多いけど、小さいし円陣組んでるみたいにぐるっと回ってるからいけるだろ。いけるいける。俺はそう判断し、此方に背を向けてるフシキゾウの背後に立ち、フシキゾウの前に居たー…えっと、誰だ?まあ、そいつが驚いた表情を浮かべたのを確認した後、腕を伸ばして全員抱き締める。お、出来た出来た。


「随分楽しそうな話してるな、フシキゾウ。俺も混ぜてくれよ」
「サラさん…!?足音くらい立てて下さいよー…こんなスリルは嫌です〜ほら、平太なんてチビちゃったじゃないですかー」
「な、何でバラしちゃうの伏木蔵…!!」
「あー…驚かしてごめんな?ヘイタ。俺、お前に嫌われてると思ってたからびっくりしたんだよ」
「き、嫌いになんてなりません…!!食満先輩が戻って来てくれたのはサラさんのお陰なの知ってますし、直すの手伝ってくれましたから…!」
「え、用具委員の手伝いもしたんですかー?ダメですよ!サラさんは保健委員だけのお手伝いさんなんですからー!」
「ふ、伏木蔵と平太ばかり狡いよ…!図書委員にも来て下さい…!」
「せ、生物委員も…!!ね、一平」
「孫次郎の言う通りです!生物委員もお願いします!」
「お、お前達い組で優秀なぼくを差し置いて…!!田村三木ヱ門先輩からお噂は伺っております、是非会計委員に!!」
「おい、佐吉!抜け駆けはダメだって言っただろ!!作法委員も是非!」
「学級委員、は…鉢屋三郎先輩と尾浜勘右衛門先輩が居るから難しいかも知れないですけど、来てくださったら嬉しいです…!」

「うんうん、熱烈な歓迎有り難うな。俺、フシキゾウとヘイタしか名前知らないからーー…教えてくれないか?」


名前で呼びたいからな。そう言えば、彼等はハッとした後、フシキゾウから順にそれぞれ名前と所属を言っていく。フシキゾウとヘイタの名前は知っているが、仲間外れのような気がして寂しかったのだろうと勝手に解釈していく。デンシチは作法委員、サキチは会計委員、ヒコは学級委員、イッペイとマゴジロウは生物委員、アヤカシマルは図書委員…うん、覚えた。フシキゾウとヘイタ?保健委員と用具だろ?忘れる訳ないだろ。


「綺麗な花を有り難うな。嬉しいよ」
「…あの、花言葉、とか分かりますか…?」
「分かるよ、アヤカシマル。…わざわざ調べてくれたんだろ?有り難うな、これからも頑張るよ」
「ちーがーいーまーす!!ぼく達、頑張って欲しいから贈ったんじゃないです!」
「…サラさんって意外と勉強出来ないタイプですか?」
「ま、は組よりかはマシだとは思いますけど、ね。ぼく達は貴女に休んで欲しくて贈ったんですよ」
「信じてるけど心配。ってやつです。…サラさんはお客さんなんですから、羽根を伸ばしても良いんですよ?」
「来た時期が来た時期だから気が引けるかも知れませんけどー…せめて、ぼく達の前では肩の荷を降ろして下さい」
「サラさんが無理する必要なんて、な、ないんですからね…!」
「こ、このままだと倒れちゃいそうで、ふ、不安になったんです…」
「…め、迷惑、でしたか…?」
「ーー…いや、迷惑なんかじゃない。…有り難うな、嬉しいよ」
「…サラさん、本当に分かってます?」

「分かってるって。フシキゾウ達からの信頼を無下にするようなことしないから。…本当に有り難うな」


大好きだよ。心からの本音を贈れば、ボンっと、彼等の頬が赤く染まる。あわあわしながらだ、大好きって!か、からかわないで下さい!と言いながら暴れてる彼等に、思わず笑みが零れる。あー、可愛い奴等だ。心底癒される。照れながらも、怒りながらも、俺の隣から離れようとしない。…癒されない、はずがないだろ?


(ーー…無理だけは、しちゃダメだな)


彼等の信頼を、愛情を、親愛を。裏切る訳にはいかねえ。こんなにも俺を想ってくれているんだ。俺も筋を通さなきゃならねぇだろ。取り敢えず、今はこの温もりに触れていたい。一番近くに居たフシキゾウに手を伸ばし、ぎゅーと抱き締めながら頬擦りすれば、フシキゾウは困ったような顔をしてから、すり、と控え目にすり寄ってきた。んんん、可愛い過ぎかよ…!!おずおずとサキチ達も寄って来て、思わず天を仰ぎたくなる。はーー…可愛い過ぎる…
食堂で無視してごめんなさい、何を話したら良いか分からなかったんです。と、泣きそうな顔で言われて許さない奴が居るか?居ないよな。…1年生は本当に天使。取り敢えずーー…先輩を奪い、この子達を悲しませた天女は八つ裂きにしような。
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