プロ忍者との出会い

1年い組と1年ろ組の可愛いさに癒された後、3年生や5年のハチヤやオハマ、ククチとはまだそんなに仲良くないが、一応面識はあるし、…気に入らないって言われたが、出て行けって言われてる訳じゃないし…これは、あの部屋をぶっ壊す許可を取りに行くしかないよな?と、唐突に思い付いた。まあ、生徒達の許可は取ってないが、皆が皆あの部屋を嫌いだって言ってるし、フシキゾウ達も早くなくなれば良いのに、って言ってたし…こりゃあ、ガクエンチョウに許可を取るしかないよな!善は急げ、だ。俺は先程帰ったばかりの部屋から出て、再び廊下を歩く。くノ一の子達は風呂か。賑やかな声が聞こえる。そんな楽しそうな声をBGMにして、俺はくノ一の宿舎から出てガクエンチョウの部屋に向かう。ガクエンチョウは、と…明かりは、付いてるな。よしよし、寝てなくて良かった。俺は襖の前に立ち、そっと声を掛ける。


「ーーガクエンチョウ、ちょっと今時間大丈夫か?」
「…む?サラか。大丈夫じゃ。ほら、早く入りなさい」
「お邪魔しま……何だ、ヤマダ先生と…客が居たのか。出直すぜ?」
「いえ、私のことはお構いなく。話はもう済みましたから」
「サラくん、こんな夜更けに1人で出歩くのは感心しないな。慣れてるかも知れないが、誰かしらを捕まえてくれて良いんだぞ?まあ、下級生は推奨しないが」
「あー…話終わったらすぐ帰るから良いかなって思ってさ。流石に下級生を誘ったりしないさ、今頃寝てるだろ。ヤマダ先生、その人は?」
「1人で出歩くのは感心しないと言っているのに…帰りはくノ一の宿舎まで送ろう。ああ、こいつは私の倅(セガレ)でね。利吉」
「分かってますよ、父上。山田利吉と申します。サラさん、ですよね?父上から話は伺っております。大変でしたね」
「へえ、ヤマダ先生のご子息か。言われてみれば目元が似てる感じがするな…知ってると思うが俺はサラ・クローズ。あー…まあ、良くしてくれてるから助かってるよ。それに、大変なのは先生達だろうしな」
「流石サラじゃのう…ああ、ワシに話があるんじゃったな?問題でもあったかの?」

「いや、問題じゃなくてさ。許可を取りに来たんだ」


ーー明日、決行したい。その言葉で全て理解したのか、ガクエンチョウとヤマダ先生の表情が驚愕に変わった後、少しばかりホッとしたような表情に変わる。多分、先生達も嫌だったんだろうな。でも、業者を呼んで取り壊しても、その業者が何処かのスパイだったら?今の上級生に退かせることが出来るか?ーー否、出来ない。今は先生達やくノ一達が本来上級生がやる任務をこなしているし、警備も手薄になるだろう。それを見越してるからこそ、何も出来なかったんだろうな。


「ーー歯がゆかっただろ。だから、壊すのはアンタ達にやらせてやるよ。ちゃんと周りに被害が出ないように結界張るから思いきり暴れて良いんだ、…少しは気が晴れるだろ?」
「…サラには頭が上がらないのう。お前さんには何の利益もないじゃろ?」
「こうやって衣食住保証して貰ってるし天女に恨みを持ってるのはこのガクエンの連中だろ?それに、これは吹っ切れる為に必要だと思うぜ?ま、タムラの火器が見れるかもって淡い期待もあるけどな」
「はっはっは、本当にサラくんは火器が好きなんだな。よし、私も火縄銃で参戦するとしよう」
「ち、父上!?」
「利吉くんも参加すると良い。よし、明日の朝、朝礼で皆に言おう。勿論、強制ではないと伝えるが、きっと皆来るじゃろうな」
「そりゃそうだろうな。…えーっと、リキチって呼んで良いか?ヤマダだとヤマダ先生と被るし」
「え、ええ…私は構いませんよ」
「有り難うな。んじゃ、リキチ。アンタも天女に言い寄られたことあるのか?」
「ーー…父上に正気に戻して貰いました」

「あー…成程な。…男なら誰でも良かったのか?」


苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるリキチに対し、ヤマダ先生は困ったように笑いながら、ガシガシと頭を撫でている。ことり、とヘムヘムが俺にと淹れてくれたお茶を有り難く頂く。うん、美味い。ヘムヘムはお茶を淹れるのが上手いなあ、と褒めればヘムヘムは嬉しそうに破顔する。うんうん、可愛い。



「サラや、お前さんは部屋の内装とかは考えとるのか?」
「内装?や、それはこのガクエンの所有物なんだからな…俺が決めるのはおかしいだろ」
「何を言っておる。此処に居る間はサラの部屋なんじゃから好きに使ってくれて構わないのじゃぞ?もしかしたら、永住するかも知れないしの」
「え、サラさんは元の世界に帰るのでは…?」
「私達としては帰って欲しくないんだよ。サラくんは素敵な子だからな。ま、利吉も触れ合えば私達の気持ちが分かるさ。これから暫くは一緒に過ごすのだし、すぐに理解するかも知れないな」
「…父上がそんなに絶賛するなんて…サラさんは凄いですね。これから暫くの間、宜しくお願いします」
「ああ、宜しく…暫く?」
「利吉くんには忍術学園の警備の依頼をしたんじゃ。勿論、金銭はちゃんと発生するぞ。サラにも金銭は発生しとるからな、足りなかったら言いなさい」
「…マジかよ…俺は衣食住の保証だけで助かってるんだが」
「寧ろ足りないくらいじゃ。生徒達にも好かれておるし、おばちゃんからも慕われておる。要らないと言われても困るからの」

「はーー…ガクエンチョウって強引とか言われないか?まあ、そこまで言われたら受け取るけどよ」


そんなに高くなくて良いからな!そう宣言する俺に対し、サラくんには辛い思いをさせてるから、それ相応の対価は必要だろう。利吉が手を抜いたら、罰を与えて下さい。これは任務なんですから。と、俺にそう言いながらもリキチのことを進言したヤマダ先生と、父上に言われなくても仕事なんですからちゃんとやりますよ。と、困ったように笑いながら言うリキチ。ガクエンチョウはただただ朗らかに笑っていた。…本当に食えないやつだなぁ…そんなことを思いながら、俺は茶を黙って啜っていたーー…
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