3年生とお買い物

翌日。俺は3年生達と一緒に買出しの為に街へと向かう。コマツダやリキチには一緒に行こうか?と声を掛けられたが、それぞれの職務に集中してくれと断わった。3年生自らが誘ってくれたんだ、言い方は悪いが邪魔されたくないと思っても仕方ないだろう?今日で距離が少しでも縮まってくれれば良いんだがな…門を出れば、そこにはニンジャ服ではない着物を身に纏った3年生達の姿があった。…俺が最後か、早く出たつもりだったんだがな…


「サラさん!おはようございます!」
「おはよ、カズマ。待たせて悪かったな。皆もおはよ」
「とんでもないです!今来ましたから!サラさん、1番早かったの誰だと思います?」
「ん?カズマじゃないのか?」
「違いますよ〜。作兵衛なんです!」
「…トマツが?」
「い、言うんじゃねえ!!…その、待たせちゃ、いけねぇと思いまして…待つのは男の仕事ですし…」
「……トマツは男前だなぁ。有り難うな、気を遣ってくれて。無理はしてないか?」
「む、無理なんてしてません!その、楽しみでしたっっ!!」
「俺達も叩き起こされたし。…もう少し寝れたのになぁ…」
「僕達は別に1人でも行けるのに…せっかくのサラさんとのお出掛けなんだから、これ外してくれないかー?」
「三之助や左門じゃ此処に辿り着けないでしょう?…その、僕も楽しみにしてました」
「ジュンコが貴女に会いたいと恋しがっていました。…勿論、僕も。…サラさん?どうしました?」

「…黙って抱き締めさせろ」


少し照れくさそうにしながらも、全力での好意に早々に陥落した。…可愛い過ぎやしないか。此処まで純粋に好意を寄せられたの今までなかったんじゃないか…この笑顔を奪っていた天女はやはり滅ぶべしだな、うん。俺の言葉に、カズマは嬉しそうに破顔しながら近寄って来て、トマツ達は照れ臭そうにしながら近寄って来たので、とりあえず丸ごと抱き締めた。…可愛い、癒しだわ…
照れくさくなったのか、早く買い出しに行きましょう!と叫ぶようなトマツの言葉に、カズマ達は不満げな表情を浮かべていた。何か言おうとしたツギヤは笑顔のカズマに頭を叩かれていた。…何を言おうとしたんだ?


「サラさん、三之助は放っておいて町に行きましょう!町はこっちだー!!」
「放っておいて良いのか、カンザキ。…ん?町はこっちだったか?」
「違うだろ、左門!!お前は少しは方向音痴を自覚しやがれ!!」
「む?町が移動したのか?」
「そんな訳ないだろう…サラさん、左門と三之助は僕達が手を焼くほどの方向音痴なんで、彼等に道案内はおススメしませんよ」
「…忠告有り難うよ、イガサキ。…カズマはその辺にしような?その手に持ってるものはしまおうな?」
「…サラさんの頼みは聞きたいですけど、これは保険ですから。サラさんに邪な感情を抱く輩は僕が成敗します…!」
「待って待って、落ち着いて!!数馬の気持ちはすっごく分かるけど一旦落ち着こ!?その薬品から手を離そう!!」
「…イテテ…そんなに怒られるようなことしてないだろ…」
「三之助!!お前は黙って口閉じてろ!!」

「…なかなかのカオスだな」


思わず頬が引き攣る。かなり気になるが、火に油を注ぐようなもんだろ、カズマにとって。何だかんだ言って、誰よりも俺を慕ってくれてるカズマを裏切りたくはないな、うん。よし、気にしないようにしよう。怒れるカズマの背後から手を回し、抱き締めるようにしながら落ち着こうぜ、仲間だろ?と告げれば、カズマは非常に不本意そうな表情をしながら薬品をしまってくれた。…よし、何とかなったな。ほれ、客が来たら意味ないんだから早く町に連れてってくれー、とカズマの肩にぐりぐりすれば、カズマはそうしましょう、と笑顔を浮かべてくれた。よしよし、機嫌も直ったな。無理に屈んでるから腰が痛いが、これくらいは許容範囲だ。突っ走りそうなカンザキとツギヤをトマツが縄でしっかり繋いだのを見届け、俺達は漸く町へと足を進めた。


「ーー…うん、此処の野菜はどれも美味そうだな」
「自然がいっぱいですからね!小川の水も飲めますし、美味しいですよ!」
「ほー。そいつは良いな。…お、この大根は色も形も良いし美味そうだ。すみません、この大根と…後はそっちの人参とジャガイモを売ってくれ」
「まいどあり!!兄ちゃん、お目が高いねえ、どれも新鮮で栄養満点だよ!」
「ーーサラさんは、女性ですよ?」
「ステイステイ、カズマ落ち着け。…あー、うん。まあ、そういうことだが間違えられるのはしょっちゅうだから気にしないでくれ」
「…綺麗な人なのに、見間違うなんてよっぽど目がおかしいんじゃないですか?」
「疲れていても流石にそれはないですよね」
「おっちゃん、女心が分かってないな!」
「流石にモテないんじゃね?」
「…流石に客商売で性別間違うのはいけないんじゃねぇすかね。着物だって女性物じゃねぇですか」

「お前達は無表情で抉るんじゃねえ!!落ち着こうな!?」


子供に無表情できついことを言われ、泣きそうな顔になってる店主が流石に憐れになり制止すれば、店主は野菜を押し付けるようにして俺に渡し、店を急に畳んで何処かに走り去って行った。心折れたんだな…すまなかった。と去り行く背中に謝罪すれば、そんな店主の横で店を開いていた店主が、あの人は野菜を見る目は確かなのに、人を見る目がないと、つい最近奥さんに出て行かれたばかりらしい。…タイムリーだな、本当にすまなかった…!まあ、あの店主は無許可で営業してたから気にしないでくれ。と言われたので、俺はすん、と表情を消す。…無許可はダメだろ、無許可は…


「ま、お嬢ちゃんは災難だったな。良かったらウチでも何か買ってくかい?おまけするよ」
「…お嬢ちゃんはやめてくれ、虫酸が走る…!!…そうだな、その卵と牛乳を貰おうか。あとは…ん?チョコレートもあるのか」
「嫌なのかい?それじゃあ美人さん、で良いかな。お、ちょこれーとを知ってるとは博識だね!運良く仕入れたんだがなかなか売れなくてねえ、良かったら買って行くかい?」
「…美人さん、も合わない気がするんだがな…ああ、7個売ってくれ」
「まいどあり!弟さん想いのいいお姉ちゃんなんだな」
「弟じゃない。…でも、子供は宝だろ?有り難うよ。さ、買い物は終わったからのんびり帰ろうか。歩きながら食べるのは行儀悪いけど、溶けちゃうからな。ほら、食いな」
「有り難うございます!……甘いですね!これがちよこれいと…」
「甘くて、ふわふわしますね…」
「美味しい!!サラさん、これ美味しいです!!」
「…俺にはちょっと甘過ぎるっすね」
「…僕も、あまり…」
「…俺ももう少し苦い方が好きです」

「ツギヤとイガサキとトマツは甘過ぎるのはあまり好きじゃないんだな。ほら、さっき買ったお茶で口直ししてくれ。…ふむ、やっぱり好みは色々あるよな」


ビターチョコとかなら食えるかもな、なんて思いながら来た道を戻って行く。すっかりチョコレートを気に入ったらしいカンザキが、ツギヤ達にくれと催促しているが、ツギヤ達は俺が買ってくれたやつだから嫌だと断っていた。…無理はしなくて良いぞ?と言えば、彼等は食べられないことはないですから。と固なに譲らない。…そんなに俺からってのが嬉しいのかねぇ…ほっこりと暖かい気持ち胸の中で広がるのを感じながら、どうしても欲しいカンザキとどうしても渡したくないツギヤ達の可愛い争いを眺めていた。
ーー…余談ではあるが、カズマだけ名前呼びは狡い!というカンザキの一声により、サモン達も名前呼びになった。…絆されすぎだろ…嬉しいけども。
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