サラサラになりたい

宗三の追跡から無事に逃れた加州。どうやら此処の本丸に来たのは加州の方が早いらしく、抜け道などを熟知してるらしい。宗三も怒ってたし、主も言葉には気を付けてよ?俺が守るけどね、とウインクしながら言った加州に、可愛い王子様だな、とくすくす笑いながら言えば、可愛いは嬉しいけど何か複雑…と頬を膨らましていた。ちゃんと男扱いしてるんだがなぁ…
のんびり庭を歩いていれば、加州を呼ぶ声が聞こえる。ん?と不思議そうな顔をする加州に、向こうだよと教えれば、加州は驚いたように目を見開く。


「あれ、姐さん?どうしたの?」
「お酒飲もうとしたら兄貴に追い出されちゃってさ〜、困っちゃうよ。…あれ、アタシ達の可愛い主様も一緒なんだね」
「次郎太刀…酒臭いな…」
「姐さんで良いよー、もしくは次郎で。次郎太刀なんて可愛いくないでしょ?」
「あ!俺も加州よりかは清光が良いなー!清光って呼んで、思いっきり愛情込めて!」
「愛情も込めるのか?ええっと…ーー次郎、清光」
「良いね良いね!そんな風に呼ばれると嬉しいじゃないか!」
「はぁ……宗三とかがすっごく羨ましい」

「ん?何で宗兄が出て来るんだ?」


嬉しそうな次郎に対し、清光は不満そうな表情を浮かべる。キョトンとしていれば、清光はほら、宗三達はそんなに愛しそうに名前呼ばれるじゃん。羨ましい、と私に頭をグリグリしながら言って来た。…そんなに愛しそうに呼んでるのか?自覚はないんだがな…次郎もそう言えばそうだねぇ、左文字があんなに溺愛してるのもあまり見たことないし、何があったの?と聞いて来たので、あー…今までずっと1人で、兄弟って暖かくて優しいんだな、って言ったらいつの間にか家族になってた。と告げれば、次郎に頭を撫でて貰った。



「アタシ達のこと、自分の家族だと思って良いからね。この巡り合わせも何かの縁だろうし、左文字だけ主の愛情を貰うなんて羨ましいし!」
「そうだよ、主!!俺のことももっともっと愛して!!」
「ーーはは、いきなり大家族になった。嬉しい限りだな」
「嫌じゃないよね?」
「勿論。嬉しいよ。ただーー離れ難くなりそうだな」
「離れていかせる訳ないじゃない!!主はずっとこの本丸に居て貰わなきゃ困るよ!こんなに綺麗な主は今まで居なかったから余計にねぇ…肌も真っ白だね。髪も綺麗だし、瞳も宝石みたいだ」
「はは、有り難うな。次郎…んん、姐さんの髪も艶やかで羨ましいよ。私はこんなに艶やかにはならないからなぁ…」
「!今の姐さん呼び良いねぇ…!確かに主の髪はもふもふだからねぇ、手触りは本当に幸せだけど」
「やっぱり白虎だからなの?」
「多分な…サラサラになるっていうシャンプーとか使っても効果なかったし…だから、姐さんの髪が羨ましい。触って良いか?」
「勿論だよ!アタシが愛用してるシャンプーでも使ってみるかい?試してみても良いんじゃない?」
「え、良いのか?そうだな…姐さんが良いなら貸して欲しい。…ん、?どうした清光」
「…もふもふの主も大好きだけど、サラサラな主も見てみたいからジレンマだなぁ、って。主が2人いれば良いのに」

「それは……困るなぁ……」


私だけの家族じゃなくなるだろ?同じ私でも嫉妬してしまいそうだ。思わずポロっと零れた本音にハッとすれば、姐さんと清光は制止してからぎゅっと抱き締めてきた。清光は平気だけど、姐さん痛い……!!力強過ぎ…!!可愛い可愛いって愛でてくれるのは嬉しいけど、ちょっとくらい手加減してくれよ…!そう思っていれば、ガンッという音が聞こえ、姐さんと清光が離れる。不思議に思っていたが、匂いを嗅いで分かったと同時に、頭を優しく撫でられた。この匂いはーー



「乱?」
「あるじさん、大丈夫?潰されてない?」
「あー、大丈夫大丈夫」
「そう?姐さんって大太刀だからガタイは良いし力強いし、あるじさんは細いから心配だったんだー、怪我とかはしてない?大丈夫?」
「はは、乱は心配性だな。大丈夫だよ、有り難う」
「うん!どう致しまして!わあ、この髪留め可愛いね!あるじさんの魅力を最大限に活かしてるね!!」
「ん?有り難う。清光から貰ったんだ、可愛いよな」
「へえー…あるじさんはお揃いとか抵抗ない?」
「お揃い?別にないが…どうした?」
「あのね、欲しいブレスレットがあってね、それが2つセットなの!ボクが2つ使うよりかはあるじさんと一緒が良いなぁ、って思ったんだけど…嫌?」
「嫌じゃないよ、寧ろ嬉しい。こんなに可愛い子とお揃いなんて嫌な筈がないだろう?そのブレスレット、高くないのか?」
「良かった!!ブレスレットはいち兄に買って貰うから大丈夫だよ」

「…一期、何か済まない……お前達はもうその辺にしといてやれ。姐さんと清光が可哀想だ」


今頃くしゃみしてるであろう一期に謝罪してから、姐さんと清光に説教してる二振りに声を掛ける。小狐丸、安定。名前を呼べば、二振りは不満そうな表情を浮かべながら私の側に来る。姐さんと清光の頭の上にはたんこぶが出来ていた。やはりというか何というか……大きいのは姐さんの方だな。小狐丸、手加減しなかったんだな…思わず苦笑いを零せば、キラキラと目を輝かした安定に頭を撫でられる。安定?と名前を呼べば、安定はふにゃりと顔を崩す。…可愛い。


「主、その髪留め似合ってるね。凄く可愛い」
「ぬしさま、ぬしさま。大変可愛いらしいです」
「有り難う、安定。嬉しいよ。小狐丸、お前が持ってるそれは私へのプレゼントじゃないのか?」
「…そのつもりでしたが、既に髪留めをされてますし…」
「私は貰えるなら何でも欲しいぞ?欲張りだからな」
「っ〜〜!!ぬしさまっ、これをどうぞ!!」
「わあ、綺麗な花の髪留めだね!」
「この形は…桜、かな?綺麗だね」
「へえ…センスが良いな、小狐丸。有り難く貰うとしよう。桜は好きなんだ、良く分かったな」
「…ぬしさまに、似合うと思って…昨日買って来たのです。以前から何故か気になってはいたのですが…昨日、ぬしさまに出会って気付いたのです。ぬしさまにプレゼントしたくて気になっていたんだと。…先を越されてしまいましたが」
「はは、小狐丸。髪留めは後ろだけじゃないぞ?ほら、こうやってーー」
「あ!前髪!」
「どうだ?似合うか?」
「ーー大変、お美しいです…ぬしさま…」
「そんな熱っぽく見られると少し照れるな。乱、安定。どうだ?」
「すっごく可愛いよ、あるじさん!!両方とも花だから違和感ないどころかすっごく似合ってる!」
「神々しさが増したね…主、すっごく綺麗だ」
「わあ!主可愛い!!俺のあげた髪留めだけじゃないのがちょっとムカつくけど、そんな可愛い姿が見れるなら許しても良いかなー!」
「主、可愛いじゃないか!!今夜の宴が楽しみだねぇ、華があるから盛り上がるよ!主はお酒、いける口なのかい?」
「嗜む程度なら呑める。姐さんは強そうだな」
「アタシなんてまだまださ!!兄貴の方が強いよ!不動も成長が楽しみだねぇ」
「…不動はまだ短刀なんだよね、織田家の刀達は酒豪が多いから潰されないように気を付けてね、主」

「誰にものを言っているんだ、清光。私が潰される訳ないだろ?寧ろーー潰してやる」


ニイッと口角を吊り上げて笑えば、清光は主、本当にイケメン過ぎ…!と呟いて、顔を手で覆う。可愛いらしい反応だろう?と周りに話を振れば、姐さん以外の三振りは顔を真っ赤にしていた。小狐丸は気絶しそうな雰囲気だ。姐さんは心底楽しそうににっこり笑う。これは強敵になりそうだな。宴が更に楽しみになった。そんなことを考えながら、私は勢いよく小狐丸に飛び付く。わ、ぬしさま…!?と驚いたような顔をする小狐丸に、私は口を開いた。


「もふもふが恋しくなってな。気絶されては困る」
「ぬしさま…!!存分にもふって下さい…!!ぬしさまにもふもふされる為に私は毛並みを整えているのです」
「はは、有り難うな小狐丸。…なあ、小狐丸はサラサラな私を見て見たいか?」
「サラサラ、ですか?ぬしさまのもふもふがなくなるのは少々名残惜しいですが、サラサラなぬしさまもお美しいと思います」
「え、僕もサラサラになりたい…くせっ毛が強くて」
「安定は特に梅雨の時期になると大変だよなぁ、可愛いくないし」
「わあ、ボクの髪もサラサラな方だから、サラサラ仲間だね!ボクのシャンプー使ってみる?」
「おっと、残念だったねぇ。主はアタシの愛用のシャンプーを使ってみるんだよ」
「えー……姐さんのが効果なかったら言ってね!ボクのも貸すから!!あ、あるじさんは着物とかに着替えないの?審神者専用の服があるんだよ」
「へえ?それは知らなかったな…ふむ、着てみるのも良いだろう。何処に行けば良い?」
「こんのすけか歌仙辺りなら知ってそうだよねー、良かったら案内しようか?」
「清光。僕達はこれからやらなきゃいけないことがあるでしょ?だから呼びに来たのに!」
「え?あー……主、ごめんね?嫌いにならないでね…?」
「嫌いにはならないから大丈夫だ。行ってらっしゃい、清光。安定、清光を宜しくな」
「うん、任せて!」
「ボクもちょっと用事があるんだー、本当はもっとあるじさんと話したいんだけど…あるじさんをびっくりさせるからね!」
「乱…そこまで言って良いのかい?まあ、アタシも用事があるからまた後でね、主」
「良く分からないが楽しみにしてるよ、乱。姐さん、気を付けてな。小狐丸も忙しいのか?」
「私は既に用を済ませております。ぬしさま、ご案内致します」

「そうか、小狐丸は準備が良いんだな。感心感心」


くすりと笑い、小狐丸の頭を撫でれば、小狐丸はぱあぁ、と顔を明るくする。ゆるゆると顔を緩める小狐丸を可愛いなぁ。と思いながら手を出せば、小狐丸はすぐに私の手を握る。以心伝心と言うのだろうか、私の考えはお見通しのようだ。ぬしさまは匂いで分かるとは思いますが、私のお気に入りの場所を教えながらでも構いませんか?ぬしさまと共有したいのです、なんて可愛いらしいことを言って来る小狐丸を思いきりもふり、素晴らしい場所だろうな、宜しく頼むよ。笑いながら言えば、小狐丸は心底嬉しそうに笑いながら頷き、私の手を引いて歩き出した。この速さで大丈夫ですか?歩幅は大丈夫ですか?なんてこまめに聞いて来る小狐丸に、大丈夫だよと私は微笑みながら答える。楽しい散歩になりそうだ、と私は内心そう呟きながら、楽しそうに案内してくれる小狐丸の話に耳を傾けていた。
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