もう大丈夫だ

意外にも三条では三日月と石切丸が酒に強いらしい。小狐丸はすぐにダウンしてたし、岩融は酔ってないと言っていたが、今剣にいつの間に分身したんだ?とか聞いてたし、そんなに強くないんだろうな。国広兄弟と伊達組と江雪は自分の限界が分かってるからそんなに呑まないようにしてるみたいだ。大切なことだな、うん。新撰組は長曽祢に誘われたら断われないらしい。局長(?)が持っていた刀らしいからな。上下関係と言うものか。一期と鶯丸は弱い。セーブしてるつもりかも知れないが、セーブ出来てないな…織田の刀と日本号と姐さんと太郎はかなり強い。ガンガン呑んでるのに、顔色一つ変えてない。蜻蛉切や御手杵、同田貫や歌仙もほどほどに強いみたいだ。歌仙が強いのにはびっくりだ。


「主、ちゃんと呑んでいるか?」
「三日月、ちゃんと呑んでるぞ。見掛けによらず強いなあ」
「はっはっは、それは此方のセリフだ。さっきから強い酒を勧めているのになぁ」
「わざとか…!急に強くなったな、と思っていたんだ」
「三日月、あまりいじめてはいけないよ。主も無理そうならそこの酒好きに渡しても大丈夫だからね」
「…石切丸も強いよな、涼しい顔してる」
「あなやー、石切丸にも強い酒を勧めてたんだがなぁ」
「…三日月、喧嘩なら買うよ?」

「あーあ、知らないぞ。頑張れ、三日月」


石切丸の纏う雰囲気が変わったのを感じ取り、私はその場から離れることにする。助けを乞うように見つめて来た三日月には悪いが、自業自得だ、諦めろ。青江と呑んでた江雪の隣に座れば、自然と頭を撫でられる。2人とも仄かに顔は赤いが、まだまだ余裕が感じられる。二振りとも強いんだな、と笑いながら言えば、青江は主も強いね、と楽しそうに笑いながら酒を勧めて来る。江雪は宗三には敵いませんよ、なんて言いながら微笑む。小夜は?と聞けば、僕はこれなら呑めるよ、と私が作ったのを本当に美味しそうに飲んでくれる。あまり減っていないから心配だったんだが、勿体無いから少しずつ呑んでたらしい。可愛い奴だ。


「姉様、また作ってくれる?」
「当たり前だろ?いつでも言ってくれ、可愛い弟の頼みだ、叶えない訳がないだろ」
「…有り難う、姉様」
「羨ましいでしょう、これが和睦です…」
「気持ちは分からなくもないけど、江雪、緩みっぱなしだよ。顔がね」
「…これで緩むな、と言う方が無理です」
「はは、断言されてしまったね。ご馳走様」
「あーるじっ!呑んでるーっ!?」
「おっと。ちゃんと呑んでるよ、姐さん。姐さんも随分呑んでるなあ」
「足りないくらいだよ!主、そろそろ一緒に呑まないかい?兄貴と宗三は綺麗だから良いけど、おじさんが居るからねぇ、そろそろ華が欲しいんだけど」
「華なら太郎と宗兄で十分だろ?不動や長谷部だって綺麗な顔立ちしてるんじゃないか。それに、姐さん自身が華だから私は居なくても良いだろ?」
「っ〜〜!!アタシ、主なら抱ける…」
「っ!?次郎太刀、主から離れて下さい。私の可愛い妹に邪な感情は不要です…!」
「おやおや、熱烈だねぇ…兄妹愛のことだよ?」
「…姉様に変なことしたらタダじゃ済まさないから…!」
「…姉弟愛もあったねえ」

「…変なこと言ってないんだけどなぁ…」


姐さんの反応に、江雪と小夜は警戒を露わにし、私を守るように背に隠す。江雪の背中は大きいなぁとか思いながら、苦笑すれば、自覚がないのは考えものだね、と困ったように笑いながら青江に告げられた。…そんなに変なこと言ったか?うーん、と考えていれば、不意に小さく主、と呼ばれる。この声と匂いはーー鶯丸、かな。どうした?鶯丸、と声を掛ければ、ぎゅーと抱き締められ……ん!?


「鶯丸…!?どうした、何かあったか?」
「…主…」
「おやおや、大胆だねぇ」
「ちょっと、鶯丸!?主から離れて下さいよっ!!」
「…主…」
「…ん?ちゃんと此処に居るぞ、鶯丸。どうした?」
「…主…俺を、棄てないでくれ…」
「「「!!」」」
「…棄てたりなんかしない。お前は私の大切な家族だよ、鶯丸。離してなんかやらない」
「…主……本当、か…?」
「勿論。私が顕現した訳じゃないのが悔しいくらいだ。…鶯丸、大丈夫だよ。お前は私に必要な存在なんだ。消えて貰っては困る」
「ある、じー…」
「私が守ってやる。でも、鶯丸も私を守ってくれな」
「…ああ、分かった……主…」
「ん?」
「…おお、かねひら、を頼む…」

「…誰だよ」


私の言葉に、鶯丸は安心したような笑みを浮かべた後、静かに眠りに就いた。スースーと可愛い寝息を立てている。私はサラサラな鶯丸の髪を撫でながら、オオカネヒラって誰だ?って聞けば、江雪は我が本丸には実装されなかった刀剣ですよ、と諦めたように呟く。心なしか顔色も悪いように思える。…何かあったんだろうな、聞かないでおいておこう。それにしても、寝ていても力が強いなー、と呟けば、カッと目を見開いた江雪が鶯丸を引き剥がしに掛かるが、ビクともしない。見兼ねた小夜や姐さんも助太刀しに来るが、やはりビクともしない。…凄い力だな、痛くないのが不思議なくらいだ。


「…凄い、力ですね…主、痛くはありませんか?」
「痛くはないから大丈夫だ。まあ、起きるまで動けないけどな」
「姉様、無理してない…?こんなに凄い力なのに、痛くない筈がないよ…」
「そうだよ!!アタシが力込めてもビクともしないのに、アタシより華奢な主が痛くない筈ないと思うんだけどねえ」
「んー、その辺は私も同意見だが、痛くないものは痛くないからなぁ…鶯丸ー、起きてくれー」
「……ある、じー…」
「…ダメだな、こりゃ。鶯丸は前の主に棄てられそうになったのか?」
「僕はあまり詳しくないけど、此処の本丸の鶯丸は他の本丸の鶯丸より小さいらしいんだ。打撃とかにはあまり関係ないんだけど、5pくらい変わるらしくてねぇ、身長の話だよ?」
「…それだけで棄てるのか?有り得ないな…顕現する時の霊力の差じゃないのか?」
「その通りでございます、主様!!鶯丸さんを顕現する時、何らかの障害があり、少し身長が縮んでしまったのです!」
「…やっぱりそうか。有り難うな、こんのすけ。呑んでるか?」
「私はお酒は頂けませんので、食べ物だけ頂いております。…気にしていないと気丈に振る舞われてはいましたが、やはり気にしていたのですね」
「…バカな奴だ、自分の主に言われて傷付かない者が居る訳ないだろうに。…お前も長谷部と一緒で抱え込み過ぎだな」
「いやあ、それにしても鶯丸がこんなにハメを外すなんて驚きだぜ!酒の力か、よっぽど辛かったのか……主、きみはどっちだと思う?」

「両方だろ。…酒の力で感情がコントロール出来なくなったんだろうな。無理もない。…案ずるな、鶯丸。私はお前を愛してるからな」


聞こえていないだろうと思いながら言ったんだが、鶯丸はふわりと笑みを浮かべる。…聞こえていたのか?不思議に思っていれば、鶴丸は楽しそうに笑いながら、愛してるのは左文字と鶯丸だけか?と聞いてきたので、此処に居る全振り愛してるし大切だが?と笑いながら答えれば、鶴丸は心底嬉しそうに笑う。仄かに頬が赤に染まっているのはーー言わないでおこう、無粋だしな。
あれから時間が経ち、周りを見渡せば潰れてるのが何振りか居るみたいだな。最初からガンガン呑んでる織田と日本号と太郎と姐さんはまだイケそうだが、寝てる短刀達も居るし、これ以上続けるのはダメだろうな。鶯丸はーー起きそうにないか、仕方ないな。私はそう判断し、石切丸を呼ぶ。仄かに頬が赤いが、足元はしっかりしているからな。岩融は潰れてる側だし、蜻蛉切は介抱、左文字は腕が細いからな…妥当だろう


「私に何か用かな?」
「そろそろ自室に戻りたいんだが、鶯丸を抱きながらは移動出来ないから運んで欲しいんだが、構わないか?」
「ああ、勿論。引き剥がさなくて良いのかい?」
「気持ち良さそうだし、忍びないだろう?私は別に嫌じゃないからな。一緒に寝ようかと思って」
「…私を呼んだ理由が分かった気がするよ。仕方がないね、今から運んであげよう。鶯丸をしっかり抱えといてくれるかな」
「私に凄い力で抱き付いてるし、多分平気だろう。驚くだろうな、鶯丸」
「…悪い人だね、主は。さ、捕まってくれるかな」
「主。鶯丸さんを連れて行くのかい?」
「ああ、光忠。離してくれないからな、連れてくよ。石切丸、平気か?」
「ああ、大丈夫だよ。それじゃあ燭台切、主を部屋に運んだら介抱の手伝いに来るね」
「うん、お願いするよ。主、お休み。鶯丸さんを頼むね」

「ああ、お休み。任せとけ」


私は石切丸に抱えられながら、ニイッと笑ってみせる。起きてて介抱を進んで手伝っている薬研や厚達にお休みを言ってから、大宴会場を出る。ゆらゆらと揺れるのはなかなか心地が良いな。重くないか?と聞いてみれば、主が軽いから大丈夫だよ。ちゃんとお肉食べたかい?と逆に聞いてきたので、蜻蛉切に肉ばかり渡されたよ、と呟けば彼らしいね、と石切丸は無邪気に笑う。可愛い笑顔だ。
そんなやり取りをしていれば私の自室に着き、石切丸は足で障子を開ける。足…と呟けば、石切丸は私と主の秘密だよ、とイタズラっぽい笑みを浮かべながら、口の中に何かを放り込まれた。苺の飴だ、甘くて美味しい。布団の上に寝かされ、更に掛け布団まで掛けて貰った。至り尽くせりだな、本当に。お休み、と石切丸と挨拶を交わしてから、私はスヤスヤと寝息を立てている鶯丸の頬に口付けを落とし、守ってやるからな、と強く誓いながら、目を瞑ったーー…
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