嬉しいお揃い

一度村に戻る。そう告げれば、長谷部達はすぐに分かりました、と言ってくれた。護衛は要らないのか?と聞いて来た大包平に、私の知人が居るから大丈夫だよ、と告げれば、大包平は心底ホッとしたような表情を浮かべていた。ーーめんどくさいとこもあるが情に厚い奴。鶯丸がそう教えてくれたなあ、なんて思いながら、歌仙と光忠と堀川が作った晩御飯を食べる。やっぱり美味いなあ…
皆で晩御飯を終え、一緒に寝ましょうと誘われていた左文字の部屋に行けば、小夜が飛び付いて来た。可愛い奴だな、本当に。


「待たせてしまったか?」
「いいえ。小夜は貴女が独占出来ることが嬉しいのですよ」
「勿論僕達もですけどね。…ほら、小夜。言わなくて良いんですか?」
「ん?何だ、私に何か言いたいことがあるのか?」
「…姉様」
「うん?」
「…あの、えっと…」

「ゆっくりで良いぞ。時間はあるからな」


頬を朱に染め、もじもじとしている小夜を抱き締めながら、そう告げる。焦らせるつもりなんて毛頭にないからな。宗三と江雪も話すつもりはないらしく、小夜を暖かい目で見つめている。…しかし、小夜は一体何が言いたいんだ?何も変なとこはなかったような気がするんだがな…小夜は暫く視線を彷徨わせた後、覚悟を決めたのかきりっ、とした表情で私を上目遣いで見つめてくる。ざっと10分くらいか?後は寝るだけだし、もっと時間を掛けてくれても良かったんだがな。可愛いし。



「…あの、ね?」
「うん?」
「…姉様の、村に着いて行きたいんだけど…だめ、かな」
「…私の?別に構わないが、小夜は平気か?知人とは言え、人の子だぞ?」
「ん、…大丈夫…あの人のことは許した訳じゃないけど、人間が全て悪とは思わないから…」
「基本的に僕達は人間が好きですからねえ。だからこそ、わざわざ顕現してる訳ですし。…まあ、例外はあるとは思いますけどね」
「薺さえ良ければ連れて行ってあげて下さい…本来なら私達も行きたい所ですが、三振りでお邪魔するのは迷惑だと思いますので…」

「ん?宗兄と江雪兄も興味があるなら一緒に来れば良いじゃないか。私のような存在を受け入れるお人好しだぞ?迷惑な訳なかろう」


一緒に行くか?そう聞けば、宗三と江雪はお互いに目配せした後、おずおずと頷く。それを見た瞬間、ぱあっと表情を明るくした小夜の可愛いさに皆して悶えることになるとは思わなんだな…小夜は宗兄と江雪兄が大好きなんだなあ…ん、私も?ふふ、私も小夜が大好きだよ。宗兄のことも江雪兄のことも大好きに決まってるだろう。兄弟なんだからな。


「ふふ…薺は私達の自慢の妹であり、姉ですからね…さて、可愛い妹がお世話になってるんですし…何か手土産を持参したいですね…」
「歌仙か燭台切に頼むのもアリですけど、可能であれば僕達が用意したいですね…薺の大切な人ですし」
「…姉様、明日って何か用事ある…?」
「明日?…ふむ、第1部隊と第2部隊を出陣させて…書類は終わらせてあるし…暇と言えば暇かも知れんな」
「…明日、万屋に行かない…?姉様、行ったことないでしょう…?」
「それは良い考えですね…薺、どうですか…?」
「本当は僕達三振りと薺で行きたいんですけど、長谷部が黙ってるとは思わないんですよねえ…」
「姉様、明日の近侍は決めているの…?」
「今剣にするつもりだが…そうだな、長谷部はともかく今剣は着いて来たいと騒ぎそうだな」
「そうですね…まあ、彼はちゃんと弁えているので大丈夫ですよ…」
「それに、他の本丸の今剣は知りませんけど、この本丸の今剣はセンスが良いんです。頼りになるんじゃないですかね。長谷部はダサいですけど」
「宗三兄様。…僕も今剣のセンスなら良いと思うよ」

「そうかそうか。なら今剣と長谷部に明日声掛けるかな。小夜達にも期待してるぞ?」


私の言葉に、小夜達はぽかんとした後、心底嬉しそうな表情を浮かべながら満開の桜の花を咲かせる。私が左文字を蔑ろにする訳ないだろうに。それにしても、拘りがありそうな左文字三振りから絶賛される今剣のせんすとやらは期待だな。他には光忠や清光、乱が抜き出ているらしい。まあ、その三振りは納得がいくな。拘りが強いのが欠点らしいが。


「それにしても、万屋か。見た目を少し隠さねばな…」
「まだこんのすけからお面は届いていないの…?」
「ああ。私に粗末な物を渡す訳にはいかないと厳選しているらしい。別に良いのだがな」
「良くはないでしょう。政府の輩には見目に五月蝿いのが居るみたいですからねぇ…口五月蝿いと、前の主が愚痴っていましたよ」
「ほう…?まあ、見目は大事だからな。ある程度は仕方ないだろう」
「…薺、貴女に渡したいものがあります…これを、受け取って貰えませんか…?」
「これは…笠と袈裟、か。お揃いか?」
「ええ…薺が妹になった時、取り寄せました。これには布が付いていますので顔は隠せます…如何でしょうか」
「兄上、いつの間に用意をしてたんです?僕達にも内緒にするなんて冷たいじゃないですか」
「…全然知らなかった。姉様に似合いそうだね…」

「…うん。私も気に入った。お揃いとは気分が良いな」


似合うか?と早速笠を被り、袈裟を羽織ってみる。似合う、と即答で返って来たのは嬉しいな。布越しだというのに、視界が開けて見えるな。息も普通に可能だ。聞けば、審神者は顔を見られたり、真名を握られたら神隠しに会うと、初期の頃伝わっていたらしい。それを恐れ、顔を隠す為の布が開発されたそうだ。当時の審神者は実力不足が問題視されていたことに加え、人数も少なかったがために、守る為に色々と細工してあるらしい。…はいてく、というものなのだろうな。色々と頑張ってくれているらしい。…尚更、政府界を脅かす汚物は排除せねばなるまいな。そう決断した翌朝、


「ーー薺さまと小夜くんたちとよろずやでおかいものですか!?わーい!ぜひいきますね!」
「拝命致しました。お背中はお護り致します。最良の結果を、貴女に」
「ただの買い物だぞ、長谷部。そんなに気負うな。今剣、手土産を選びたいから手伝ってくれまいか?」
「…善処致します」
「ぼくにまかせてください!長谷部もせっかくのおかいものですよ!たのしまなくてはそんです!あなたも本丸からそんなにでていないのですから、薺さまとたのしみなさい!」
「何だ、長谷部も万屋にあまり縁がなかったのか?」
「…俺の機動を恐れたのか、許可が降りませんでした。他の審神者に救いを求めると危惧していたようですね」
「成程な。長谷部、ほぼ初めて同士一緒に楽しもうな」
「!はいっ」
「それに、薺さまとのおかいものをじゃまするようなやからは、はいじょすればかいけつしますよ!」
「ふむ…それもそうだな。殺るなら一瞬でカタを付けるぞ」
「とーぜんです!」

「待て待て待て、ただの買い物だからな!穏便に済ませてくれ。相手にするだけ無駄だ、言いたい奴には言わせておけ」


私の言葉に、長谷部と今剣は不満ですという顔を隠さずに、了解だと答える。…渋々、と言った感じか。血の気が多すぎやしないか?他の長谷部や今剣もこんな感じなのか?…後でさにチャンで聞いてみるか。彼処の住人は優しく博識な者が多いからな。非常に頼りになる。何かと疎い私に対しても、色んな情報や知恵を与えてくれる。うむ、さにチャンは素晴らしいな。


「…小夜くんたちが薺さまのむらにいくのですか?ぼくたちはだめなのですか?」
「ん?今剣も気になるのか?」
「あたりまえです!薺さまのすごしたせかいにきょうみがないわけないじゃないですか!小夜くんたちだけずるいです!」
「こら、今剣!!主を困らせるな!申し訳ありません、言い聞かせておきます」
「長谷部」
「はい」
「私のことを考えず、お前の気持ちを素直に吐け。…お前も行きたいか?」
「は、いや、俺はそんな…「長谷部?」…興味がないと言えば、嘘になります」
「そうかそうか。…ふむ、向こうは自然が豊かだからな…全振りで遊びに行こうか。弁当を光忠や歌仙、堀川に申し立てておこう。無論、無理強いはしないがな」
「ぴくにっくですね!いきたいとおもってました!いやな刀剣男士はいないとおもいますよ!」
「俺達は嬉しいのですが…主は宜しいのですか?」

「ダメなら言わないだろう。私も皆に村を見て欲しいからな」


御神木は立派だぞ。そう言えば、今剣達は楽しそうに顔を緩める。決まり、だな。早速小夜達と他の刃達に聞かねばな。その後に光忠達に弁当を依頼か。可能であれば小狐丸の得意料理であるいなり寿司も欲しいな、頼んでみるか。一応小夜達にぴくにっく?のことを話せば、彼等は一度もしたことがなかったらしく、特に嫌がることなく了承してくれた。他の刃達も嬉しそうに了承してくれた。欠席者は居ないらしい。皆でワイワイするの楽しみだな、と私はくすりと笑みを零した。
余談ではあるが、今剣のせんすには脱帽だ。あげたい連中の特徴を少し言っただけで、彼等が好きそうなものを選ぶ。…いやはや、その目利きのせんすは羨ましいなあ…
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