ご一緒にいかが?

村に行く当日。本丸の結界はこんのすけが信頼している役人に任せるらしく、手薄になる本丸を心配していた石切丸を無事に連れて行くことに成功した。審神者は直接政府とやり取りすることも可能ではあるが、基本的にはこんのすけか担当と呼ばれる存在を通してやり取りするそうだ。以前の担当は真っ黒だったらしく、前任と共に鶴丸と鶯丸に切り捨てられたらしい。…まあ、悪い役人の手下だろうし、真っ黒なのは当たり前よな。
私の自室に全振り招き、札が貼ってある柱に向かう。此処から繋がっていると言えば、刀剣達とこんのすけは興味深そうに札を見つめていた。詳しい理屈は知らん、と言ってから、私から通るから後に続け。と言ってから先に札に触れれば、景色は村に変化していた。驚愕してるような声が後ろから聞こえたと思えば、此方に向かって来る足音。相変わらず聡いなぁ、と苦笑いを零してから私はしゃがみこみ、腕を広げる。


「薺様っ!お帰りなさい!」
「ただいま、りん。良い子にしていたか?」
「はい、勿論です!…後ろの方々は神様ですか?」
「ああ、私の家族だよ。りん、自己紹介出来るな?」
「はい!ええと、りんです!薺様には色々お世話になってます!宜しくお願いします!」
「うん、良く出来たな。…五虎退、お前の助けを乞う声に真っ先に気付き、私を知らせてくれたのがこのりんだよ」
「そ、そうなんですね…!えっと、五虎退です…声に気付いてくれて、有り難うございます…」
「!あの声だ…ふふ、薺様強いでしょ!無事で良かったです!」

「どうだ、良い子だろう?」


気に掛けているからか、りんの成長が嬉しくて仕方ない。鼻が高い、な。人の子と言うことに一部の刀剣達は警戒していたが、りんの無邪気さと素直さに絆されたらしい。うむ、この子は警戒心を抱くのがおかしいと思わせるくらい、邪気がないからな。まあ、だからこそ殺生丸も絆されたとは思うがな…


「薺様!お帰りなさいませ」
「楓か。ああ、ただいま。楓、お前の力を借りたい。また札を貰えるか」
「勿論でございます!…また無理をなされるつもりではないですよね?」
「…可能な限り、と言っておこう。お偉いさんの所に乗り込むのでな」
「なんと!!…この楓めも付き添いましょうか?」
「平気だ。私の世話役の長谷部と懐刀の薬研が居るからな」
「は。…主より御紹介に預かりました。へし切長谷部と申します。以後、お見知り置きを」
「俺っちは薬研藤四郎だ。大将は命を懸けても守るから安心してくれ」
「…薺様は貴方様達を大層大事にしておられる。命を懸けて守られても、貴方様達が居なければ薺様は喜ばない。貴方様方も無理はなされるな。薺様を泣かせたらいくら神様でも容赦はしないぞ…!」
「…良い人だね、姉様」
「そうだろう?自慢の友人だよ。亀甲、気付いているとは思うが、この楓は桔梗の妹だよ」
「やっぱりそうなのかい!?魂が似ていると思ったよ!僕は亀甲貞宗。君のお姉さんに救われたものだよ」
「…桔梗姉様に?それは一体…」

「楓。亀甲を含めた一部の刀剣男士達は、神楽、神無、桔梗によって救われていたりしたんだ」


魂だけの状態だったらしいが、な。私の言葉に楓は驚いたような表情を浮かべた後、桔梗姉様が貴方様方を生かしたいと思ったのでしょうな。と慈愛に満ちた表情で呟く。その言葉に思う所があったのか、離れで生活していた刀剣達が幸せそうな表情を浮かべていた。私は桔梗らしいな、とくすりと笑みを浮かべーー…凄い勢いで此方に向かって来る気配に苦笑いを零した。


「ーー薺!!怪我はしてねぇか!?」
「落ち着け、犬夜叉。私はこの通りピンピンしている」
「…血の匂いはしねぇな、よし。お?薺…お前、少し肥えたか?丸くなってねぇか?肉が付い…「犬夜叉、おすわり!!」ほげぇ!!」
「女の子に何てこと言うのよ!!お帰りなさい、薺ちゃん!体調は悪くなさそうね!」
「…相変わらずだな、かごめ。ただいま。体調は大丈夫だ。優秀な世話役が居るからな」
「主…!!この長谷部、必ずや主をお護り致します…!まずは主、手始めにこの無礼者を圧し切る許可を」
「俺も参加させて貰おう。薺に馴れ馴れしすぎる」

「長谷部、鶯丸。落ち着いてくれ。左文字も他の刃達も殺気立つな!りんが怯える!」


薺様、と控えめながら縋って来るりんを抱き抱え頭を撫でてやれば、いくら人の子があまり好きではないと言っても、りんのような幼子を泣かせるのは気が引けるらしく、渋々と殺気を抑えていた。それにホッとしていれば、ぴょこんとお供が側に飛んで来た。狐さん?と不思議そうなりんに対し、お供は優しく笑いながら口を開く。


「大丈夫です。皆々様、薺様が大事なだけなのですよ!りん様と一緒です!」
「…狐さん、喋れるの?凄いね!」
「腹話術ではございませんよ!私はお供の狐でございます、ご気軽にお供と呼んで下さいまし!」
「お供様!」
「呼び捨てで宜しいのですよぅ?」
「お供。りんは誰に対してもこんな感じなんだ。礼儀正しい良い子だろう?」
「何と!このように幼いのにご立派ですなぁ!鳴狐、まるで粟田口のようです!」
「…そうだね。お供のこと、…好き?」
「はい!」
「…僕も、好き。…仲良くしてあげてね」
「鳴狐ぇ!!りん様、私めの主人である鳴狐です!鳴狐とも仲良くしてあげて下さいまし!」
「鳴狐様!」
「…ぅ…よ、宜しく…」
「…実に癒される光景だな。一期、撮影は出来ているか?」
「勿論でございます。叔父上があんなに嬉しそうなお姿…久々に拝見しました。彼女は凄いですな」

「…りんは両親と死別していてな。それを表に出さず明るく振る舞っているのだ。健気で良い子だ。良かったら仲良くしてやってくれ」


小夜達みたいな見た目の子は村にはあまり居ないからな。そう告げれば、守り刀と謳われている短刀達は痛ましげに顔を歪め、今剣や愛染を筆頭に一斉にりんに向かって歩いていく。友人関係になれれば良いのだがな…ゲートは繋げているし、予定を入れさえしなければいつでも会える。そうすればりんも寂しくないだろう。…殺生丸はいつまであの子を1人にするんだろうか。今度会ったら灸を据えてやらねばな。


「犬夜叉、弥勒は居るか?」
「弥勒だぁ?…結界か?居るには居るが、今は機嫌悪いぞ」
「…弥勒がか?それは珍しいな、珊瑚と喧嘩でもしたのか?」
「そうなのよー…珊瑚ちゃん、子供と一緒に琥珀くんの所に行っちゃって…」
「それはまた…難儀だな。理由は?」
「…弥勒様はほら、女性に弱いじゃない…?助けを求められて、相談に乗ってただけなんだけど、距離が近過ぎてね…」
「…ヤキモチか」
「けっ。第1、あんなに妖怪の匂いプンプンさせてるのに騙される弥勒が悪いんだよ!」
「何、彼奴が妖怪に騙されるなんてことがあるのか?法師だろう?」
「…俺も途中まで気付かなかったが、気付かれないように香を焚いてたみたいだ。鼻が曲がると思って避けてたから気付くのが遅れちまった」
「香、か……鼻が曲がると言うことは、せんすはあまり良くないんだな。愚かな妖怪だ。まあ、良い。弥勒には後で会いに行こう。腹が空いた」
「…珍しいですな、薺様がそのようなことを言うとは…」

「感慨深げに呟かないでくれ、楓。歌仙達の作る飯は美味いからな。これからぴくにっく、とやらをするんだ。私の住処に案内しようと思ってな」


私の言葉に、小夜は驚いたように目を丸くする。…ん?言ってなかったか?彼処に行くのね!確かに良い場所だわ!とかごめは嬉しそうに笑いながら言う。…素直な感想は嬉しいものだな。楽しんで下さいまし、と頭を下げる楓に、江雪が一歩前をでて…


「…貴女方に、聞きたいことが沢山ありますので…宜しければ、御一緒しませんか…?」


江雪の提案に、宗三達が驚愕の声を上げる中、唐突にぶわりと嫌な予感が背中を走る。…江雪の聞きたいことって私のことに違いないな?珍しい、って言う楓の言葉に引っ掛かってるんだな…これは、腹を括るしかあるまいな。私達に悪いと遠慮する楓とかごめに対し、いっぱい作って来たから、等と理由を付ける江雪、宗三、歌仙、光忠、堀川の過保護組に、私は思わず遠い目になざるえない…説教だけは、避けれると有り難いな…
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