心強いアイテム
弥勒も加わり、一緒にのんびりと時間が過ぎるのを待つ。戦闘が好きな同田貫が犬夜叉と軽い手合わせをしたり、かごめの時代のオシャレ等を清光や乱、光忠が聞いていたり。りんは相変わらず小夜と薬研以外の短刀達と元気良く走り回り、楓は三条派と古備前派、小烏丸に囲まれていた。弥勒はやはりというか何というか…まあ、長谷部と意気投合していた。主に私の話について、だ。褒め殺しは鶯丸だけで勘弁して欲しいのだがなぁ…
「姉様。あの人間は本当に見る目があるね。…あの人間なら、信じられる気がするよ」
「…ほう。小夜がそう言ってくれて何よりだよ」
「…かごめさんも、楓さんも、犬夜叉さんも、信じられるよ。魂が優しいから…」
「…うん、友人が褒められるのは実に気分が良いな」
「きっと弥勒の旦那の奥方も優しい人なんだろうな。大将から見てどんな感じなんだ?」
「珊瑚か?…ふむ。実に生真面目で思いやりがある子、だな。我慢をしすぎてしまうのがたまにキズ、ぐらいだろうな」
「我慢…なぁるほどな。考え過ぎてパンクする感じだな」
「流石薬研だな。良い例えだ。ーー話を遮って悪いな、弥勒」
「はい?」
「迎えてやれ」
す、と指を差せば、大きくなった雲母に乗った珊瑚の姿がそこにはあった。珊瑚!と嬉しそうに、どことなく安心したかのような声色で名前を呼ぶ弥勒の声を聞き、珊瑚はバツの悪そうな表情を浮かべた後ーー…私に気付き、驚いたように目を見開いた。あー…これは、展開が読めてしまった。すまんな、弥勒。
「珊瑚!帰って来てくれたのだ…「薺ちゃん!」な……?」
「おっと。…久しいな、珊瑚。支障はないか?」
「元気だよ。帰って来るなら教えてくれても良いじゃないか。ねえ、雲母」
「…きゅう…」
「…そんなに気負わなくても良いのだがなぁ。相変わらずモフらせてはくれんか」
「ごめんね。こら、雲母!」
「良い良い、気にする必要はない。それより、珊瑚。早く旦那様の相手をしてやったらどうだ?」
帰って来た、ということはそうなんだろう?と問えば、薺ちゃんには敵わないね、と困ったように笑ってから、珊瑚を抱き締める為に腕を広げたまま固まっている弥勒の元に向かう。固まっている弥勒に声を掛けている長谷部達の名を呼べば、彼等はスッと弥勒から離れた。うん、名前を呼ぶだけで分かってくれるとは流石だな。
「…えっと、法師様。その…ごめん。分かってはいたんだ、法師様が私以外に現を抜かす訳ないって。…でも…やっぱり私以外の女が法師様の側に居るのは、嫌だよ」
「…珊瑚…」
「…面倒くさい女で、ごめん。…これからも、側に居て良いかい…?」
「当たり前だ!!私には珊瑚、お前が居てくれないと生きた心地がしないんだ。分かった。今、此処に居る女子以外には優しくしない。それで珊瑚の気持ちが楽になるならお安い御用だ」
「…そうだね。薺ちゃんもかごめちゃんも楓様もりんちゃんは特別だからね。法師様は辛くないかい?」
「私はーー…いや、俺は珊瑚が側に居ないのが一番辛い」
「っ、法師様ぁ!!」
「…すまなかった、珊瑚」
「…一件落着、ですね。主」
「うむ、そのようだ。…あの2人が幸せそうで何よりだよ」
「私達の妹がこんなにも優しいですよ…宗三…」
「薺が優しいのは当たり前ですよ、兄上。…ふふ、良かったですね」
「ーー…ああ、本当に」
良かった。と弥勒からも珊瑚からも恋の相談を受けていた私は心の底から安心した。…犬夜叉はただ単純に気付かなかったのだろうが、目に長けている弥勒が香りに騙されるとは到底思えん。きっと、その妖怪の目的が珊瑚だったのだろう。弥勒は実に魅力的な男だからな。妖怪に魅入られていてもおかしくはない。…まあ、これを言うのは無粋だろうから気にしないでおこう。ふと視線を移せば、人妻が好きだと言う包丁を止めている一期の姿があった。うん、流石の私も弥勒達の邪魔をするなら容赦はせんぞ。一期、頑張ってくれ。
「それで…薺ちゃんはどうして急に来たんだい?法師様から結界を張られてるみたいだけど…また面倒事かい?」
「金属探知機、というものがあるところに赴くそうだ。奈落の手を借りていた連中も居るらしい」
「奈落だって!?薺ちゃん、大丈夫なのかい!?」
「招待を受けたからには行かねばなるまい。それに…奈落が既に去っているのに、彼奴の施しを受けていた連中をみすみす見逃してやる必要もあるまい」
「そりゃあそうだろうけど…退治するかい?」
「確かに退治屋である珊瑚が来てくれたら嬉しいが…私には長谷部と薬研という頼もしい護衛が居るんでな。心配は無用だ」
「主…」
「…大将…」
「…そっか。薺ちゃんがそこまで言うなら平気なんだろうね。法師様も納得してるみたいだし」
「珊瑚。長谷部様達は付喪神様だ。そして、奈落からの施しを受けていた連中はこの方々が自分達に仕えていると思い上がってる連中らしい」
「…それは手加減する必要ないね。薺ちゃん、これを持って行ってくれない?力になれると思うよ」
「これは……物凄い代物だな。貴重なはずだ、構わないのか?」
「良いんだ、使ってよ。神様達も同じ人間がごめんね」
「、別に貴女が気にする必要はない。主、これは一体…?」
「これは煙を放つ。…ただの煙ではなくてな、吸った人の悪夢やトラウマを呼び覚まし、永遠と繰り返される…まあ、言わば拷問に近いことをする訳だ。精神の、な」
ガスマスクや特定の物を使えば回避出来るが…長谷部と薬研は私の結界の中に入れば問題ないだろう。私?私は耐性があるから心配は無用だ。負荷も掛かりはせんよ。有り難く頂戴し、大事にポケットの中にしまう。こんなに小さいのに破壊力があるのだから、人の子の技術と言うのは本当に目を見張るものがあるな。一度頭の中を覗いてみたいものだ。
「…こんなに小さいのに、凄いですね…」
「ですねえ…長谷部も薬研も吸わないように気を付けて下さいね。悪夢と言ったらあのことでしょうし。…薺から離れないで下さいね」
「当たり前だ。…それに、主から離れたら護衛の意味がないだろう」
「ま、結果的には大将に助けられちまうみたいだし、護衛らしくはないがな」
「…貴方が出来ることをすれば良いよ、薬研。姉様は薬研と長谷部さんが無理をすることを望んではいないから。…ちゃんと出来る範囲でやってね。姉様を悲しませたら容赦しないから」
「…ああ。当たり前だ。兄弟である小夜達から譲って貰ったこの立場、不意にはしないさ。なあ?」
「当たり前だ。主を悲しませるのはあの時だけで十分だ。…必ずお護りしますね、主」
「ーーああ、頼りにしているよ」
「…兄弟?」
「珊瑚。江雪左文字様と宗三左文字様が薺様の御兄上、小夜左文字様が弟君だそうだ」
「…そっか。良かったね、薺ちゃん。家族、憧れていたからね」
「…ああ。最高の兄と弟。他の神様も自慢の家族だよ。素晴らしい時間を、今過ごしていると実感している」
神楽と神無、白夜にも会えたからな。心の中でそう付け足していれば、江雪兄達から大量の桜が咲き誇る。…同田貫達にも聞こえていたのか。なんだこりゃ!?と驚いてる犬夜叉の声が聞こえるな…これは一体?と不思議がる弥勒と珊瑚に誉桜の説明をしてから、止まりそうにない桜の花を見つめる。此処まで喜んで貰えるとはな、実に嬉しいことだ。私は小さく微笑み、耳まで真っ赤な可愛い神様達を宥める為に、足を一歩踏み出すのだったーー…
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