首尾は上々?
私の友人である邪見が殺生丸によって協力者にさせられてから数日が経った。こんのすけにルートを教えて貰いつつ、政府内のありとあらゆる情報を仕入れてくる邪見の有能さは相変わらず目を見張るものがある。最初はその見た目からか刀剣男士達から、特に乱や加州に敬遠されていたが有能さを発揮してから打ち解けられているようで安心する。やはり、友人が大切な家族に理解して貰えるのは有り難いし喜ばしいことだな。
「…眉間に皺が寄っている、何かあったか?」
「ん?いや、平気だ」
「本当かー?薺さん、無理ばかりするから心配だ。何かあればすぐに言ってくれよな!」
「そうだぜ、薺。俺達だって君の力になりたいんだからな」
「伽羅も貞も鶴丸も有り難う。無理はしていないから安心してくれ」
「でも、眉間に皺が寄っているのは本当だよ?薺ちゃん、本当に何もないのかい?」
「くどいぞ、貴様等。主は何もないと言っているだろう、その耳は飾りか?」
「長谷部」
「、すみません」
「言い方というものがあるだろう?…邪見からの情報に胸糞悪いと思っていただけだ。どうやらくーでたーなるものをやろうとしてるらしい」
「「「「くーでたー…?」」」」
「クーデター、ですよ。暴力行使による改変、といったところですね。…怪我人が出ても良いという考えなのでしょう」
「…寧ろ確実に八代を葬るつもりなのだろうな。頭が痛いことだ」
八代だけは何が何でも殺してやる、という殺意がヒシヒシと伝わって来る。邪見に八代に何か問題があるのでは?と探って貰ったが、自分達が上に立てない腹いせらしい。自分の方が優れている、という自惚れを持つ人の子がうじゃうじゃ居るらしい。八代が優れていないのならば、もう何年も上に立っている筈ないというのに。能ある鷹は爪を隠す、この言葉を知らんとは嘆かわしいことだな…
「…それに長義を監禁していた輩も含まれているのか?」
「無論だ。寧ろ武器として使うことを算段として入れていたらしいな」
「…武器、だと?おいおい、それはつまりーー…俺達が付喪神だってことを忘れてるってことかい?」
「…自分達が何よりも偉いと思っているようだな。随分とお花畑な思考をしているようだ」
「…へー、ただのモノだと思ってるってことか。あんなに俺達に頭を下げて来たのにな。従順過ぎたかな?」
「ちょっと甘やかし過ぎちゃったのかな」
「自分達に力があると過信してるだけだろう、くだらんな。確かに俺達はモノだが今は意志があるというのに…」
「…長谷部、訂正しろ」
「はい…?」
「お前達はモノではない、私の一等大切な家族だ。努々忘れないでくれ」
いくらお前達とはいえ、私の家族を侮辱するのは許せん。そう伝えれば、彼等から満開の桜が咲き誇る。相変わらず美しいな……こう見るとやはり少しばかり違いがあるようだな。長谷部の桜は薄ら紫色も入っていて、光忠の桜は美しく逞しい、鶴丸の桜は今にも消えてしまいそうな儚さを秘めているし、貞のは桜にも意志があるのかと思うくらいに元気いっぱいに舞っているし、伽羅の桜はやはり馴れ合うのが嫌いなのか他の桜とは別のところで舞っている。なかなかに興味深い。ジッと眺めていれば顔を赤くした長谷部にそっと視界を塞がれた。…おや?
「…あまりまじまじと眺めないで下さい…照れます…」
「みっちゃん、ゴミ袋どこー!?早く片付けようぜ!!あんなに見られるの無理!!」
「貞ちゃん、ゴミ袋あるよ!!かっこよく片付けようね!」
「、…手伝う」
「…君は狡すぎるな。あんなに愛しいなんて表情で見ないでくれないか。桜は俺達の感情みたいなものなんだぜ?」
「あんなに美しいのだから見ないのは損だろう?裏表がないお前達を非常に好ましく思っているよ」
「、主。お戯が過ぎます…!」
「私は嘘は好かん。…片付ける前に一枚ずつ保存するのはダメか?」
「ダメに決まってるだろう!?貞坊、光坊、伽羅坊、一枚も見逃すことなく片付けるぞ!姫さんが保存したがってる!!」
「えっ!!そ、それはダメだぜ…!」
「…長谷部くん、ちゃんと主くんの目塞いどいてね!」
「…掃除機持ってくる」
「お前に言われなくても分かっている!…主、申し訳ありませんが我慢していて下さいね」
「やはりダメか……ふふ、私は長谷部の働き者の手が好きだから役得かも知れんな」
「なっ…!」
「「「桜増やすな!!!」」」
ふふ、私の長谷部は相変わらず可愛いことだ。そんな長谷部を注意している貞、鶴丸、伽羅の声に少しだけ寂しさもあったようだし、彼等のことも後に褒めるとしよう。片付けることに集中している光忠にも、ちゃんとな。…それにしても、長谷部のこの落ち着く香りは何なのだろうな?優しくも逞しい働き者の手にこの香りはなかなかに罪深い。私の好きな要素しかない。…左から手を伸ばされているということは、左に向かって倒れ込めば良いか?そう判断し力を抜けば、慌てたのか引っ張られて長谷部に抱き止められた。うん、思っていたのと少し違うがこれもまた良いか。
「主、如何されましたか!?」
「…ふふ、少し眠くなってな。お前の膝を借りようかと思ったが失敗した」
「…俺の膝は硬いですし、お休みしたいのであれば寝床を整えますよ」
「それでは味気ないだろう?起きた時に最初に見るのが長谷部の美しい顔…2、3日は寝なくても良いくらい疲れが飛びそうだ」
「ちゃんと寝て下さい。…主は本当に俺の顔を好いて下さっているのですね」
「顔だけではないがな?働き者の手に思慮深くちゃんと周りを見れる冷静な一面、少し怒鳴り易いとこも非常に愛らしい。心配だからこそ怒鳴ってしまう、そんな不器用なところも好ましい」
「…っ、や、やめて下さい…」
「何故だ?」
「…分かっておられるでしょう…?」
「ふふ、愛らしいなあ。…うん、やはり桜より本体が良いな」
「…主?」
「花びらは反応してくれないからな」
くすくすと笑いながら、そっと手を伸ばす。うーん、目が塞がれているから良く分からないな。この辺が頬か?なんて思いながら撫でていれば、すっと私の目を塞いでいた長谷部の手が退く。…どうやら顎を撫でていたようで気恥ずかしそうな顔をしている。ふふ、本当に愛らしい。恥ずかしいけれど、もっと触れて欲しいという気持ちを隠そうとしない瞳に応えるとするか。触って欲しいのは、何処だろうな?手を頭の方や頬の方に向けて空気を撫でるような仕草をすれば、控え目に私の手を取った長谷部が自分の頭にそっと乗せる。頭撫でて欲しかったのか、…ああ、本当に可愛いなあ…
「ーー私の長谷部は本当に可愛いなあ」
「…欲張りでは、ありませんか、?」
「そんなとこも愛らしくて私は好ましく思うよ。もっと甘えてくれて構わないぐらいだ」
「…あ、有り難き、幸せ…」
「あー!!!何で主さんに頭撫でられてんだよ!俺も!撫でて!!」
「ふふ、貞は素直で愛らしいな。おいで」
「へへー!」
「何だ何だ、随分と楽しそうじゃないか。俺達も撫でて欲しいよなあ?」
「…俺は別に…」
「うーん、かっこ良くはないからねえ…」
「何だ、伽羅と光忠は私に撫でられるの嫌いか?」
「、嫌いとは、言ってないだろ…!」
「っ、そんなに寂しそうな顔しなくても良いでしょう…!?」
「ーーおいで」
長谷部と貞の頭から手を離し、ちょいちょいと手招きをする。馴れ合うのは好きではないがある程度のスキンシップは嫌いではない伽羅と、常にかっこいい自分でありたいという光忠はなかなか踏ん切りが付かないみたいだが、今お前達の側に居る存在が誰なのかを忘れていないか?鶴丸はそんな伽羅と光忠を盗み見てから、私の方に向かって背中を押す。ふらついた伽羅を貞が、光忠を長谷部が救い、私の前に座らせる。…なかなかに良い連携だなあ…そんなことを思いながら手を伸ばし、伽羅と光忠の頭を撫でる。
「っ、くそ…!」
「薺ちゃん、本当にやめて…!!」
「ふふ、照れているのか?本当に愛らしいな。私の伽羅と私の光忠は」
「長谷部と伽羅とみっちゃんだけ狡いぜー!俺にも言ってよそれ!」
「俺も薺、君のだろう?」
「欲しがりさんだな。ーー私の貞と私の鶴丸。君達の素直な性格を私は非常に好ましく思っているよ」
「ーー……やっべえ…」
「…君は、その気にするのが本当に上手いな…」
「ふふ、愛らしいな。欲しがっていたのに照れているその姿もまた可愛いくて愛しく思うよ」
「……ぅ、そんなに優しい顔で頬撫でないでくれよぉ…」
「…っ、薺!君は俺達をこれ以上骨抜きにしてどうするつもりだ!?」
「ふふ、私は自分の自慢の家族を愛でてるだけなんだがな?」
「……その家族に、…えっと、僕…達も、はいる?」
「当たり前だろう?かっこよくて可愛い私の光忠。光忠も、伽羅も貞も鶴丸も長谷部も、勿論他の皆も私が何よりも失いたくない存在…」
「、りん、達よりも…上、なのか?」
「ーー…上、だなあ。ふふ、まさか私があの子達よりも大事な存在が出来るとは思っていなかった」
「…主…」
「ーー愛おしくて、仕方ない。私はもうお前達が居ないと生きていけないんだ」
ーー…だから、勝手に折れたりしてくれるなよ?
そう付け足しながら、順番に頭と頬を撫でながら白虎の加護を授ける。奪わせてたまるものか、久々に心の底から欲しいと思ったこの綺麗な可愛い子達を。触れさせてたまるものか、何よりも優しく尊いこの子達を。私の何よりも大切な存在達との楽園を脅かす者に、慈悲などくれてやるものか。牙を剥き、爪で切り刻んでやろう。…案ずるな、後悔する時間すら与えてやるつもりはない。お前達は手を出す存在を、怒らせる存在を間違えただけ。ただ、それだけ。
「ーー薺様、耳寄りな情報が……お邪魔でしたかな?」
「気にするな、邪見。お帰り、色々任せてすまないな」
「いえいえ、滅相もありません!!殺生丸様と比べたら天と地ほどの差がありますからなあ……薺様、まだ全員ではありませんが何人か見付けましたよ!」
「ーー流石は邪見。相変わらず仕事が早くて助かる」
「…先程、耳寄りな情報だと口にしていたな?それだけではないのだろう」
「……ええ、頭の回転が早い方々で助かります。次に開催される演練、という行事に遡行軍を投入して薺様を炙り出し、事故に見せ掛けて八代という人物を葬る算段のようですな」
「演練……他の本丸同士の訓練、みたいなものだったな?」
「ええ、流石です主!審神者同士の交流会も兼ねているみたいですね」
「…向こうもなりふり構わずって感じか?」
「…違うと思うよ、貞ちゃん。多分、焦ってるんじゃないかな?薺ちゃんも長義くんも見付からないし、秋紀くんだって政府に行ってないからね」
「うちのこんのすけは薺の手解きを受けて気配殺すの上手くなったからなあ、そう簡単には見付からないだろうな」
「…薺、その演練に俺も出せ」
「!珍しいな、伽羅。構わないが…理由を聞いても?」
「…アンタに粉掛けるのは俺達だけで良い」
「…!はは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。何なら伊達組と誰かにするか?長谷部、久し振りに戦ってみるか?」
「ーーいいえ、俺は貴女の側でお仕えしています。お世話係ですから」
「…ふふ、そうか。勝手に決めたが貞達はどうだ?」
「俺達なら全然構わないぜ!久し振りに燃えて来たくらいだしな!」
「僕も構わないよ!演練も久し振りだからね!」
「良い驚きだ!俺も構わないぜ!はは、伽羅坊有り難うな!」
「…別に、アンタの為じゃない」
嬉しそうな鶴丸に背中を叩かれ、非常に迷惑と言った表情を隠さずにそそくさと鶴丸から距離を取る伽羅にくすりと笑いを零してから、他の2人はどうしようかと考える。太刀が2振、打刀が1振、短刀が1振……大太刀と脇差が理想か…?いや、打刀でも捨て難いな……非常に悩ましい。うんうん考えていれば、私の隣に居た邪見が目を細めながら嬉しそうな表情を浮かべていて、私は目線だけで訴えてみる。私のその態度に、邪見は口元を緩めながら静かに口を開ける。
「楽しそうですな、薺様。そんなに生き生きしている表情をお見掛けしたのは何時振りでしたかなあ、としみじみしておりました」
「…ふふ、そうだな。私も久し振りに心が踊っている、戦術を組むのも好きだったらしいな」
「薺様は頭の回転が速いですからな!…大丈夫ですよ。薺様がどなたを選んでも、その方は活躍しますからな」
「…言い切るな?」
「言い切りますとも。薺様が想いを込めて選んだ方々なのですからな!刀剣男士は想いの強さも関係しているのでしょう?でしたら、薺様に敵などおりませんからな」
「ーーああ、私の想いは誰にも負けん」
重いくらいかも知れないな。まあ、それでも構わないと彼等が言ってくれるから甘えてる、ということになるのかも知れないが…まあ、誰だって自分の子が一等可愛いと思うだろう。…私が顕現した訳ではないが、な。他の審神者達の立ち位置よりも下に居る訳だが、ただの人の子に負けてやるつもりは更々ないな。…演練とやらでケリを付けてやろう。私の秋紀と長義が可愛いがられたのだ、私も可愛いがってやらないとなぁ…?
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