もふもふ天国
腹が減ったなー、と呟いた岩融に同調したら、紫ーー歌仙兼定と言うらしい。歌仙に厨に案内された。厨に行けば、3人の男が、忙しなく走り回っていて、その内の1人が歌仙と岩融に気付き、声を掛けたが私の存在に気付き、小さく悲鳴を上げる。当然他の2人が気付かない筈もなく、抜刀されたが歌仙が説明してくれた。…歌仙と一緒に来ていて良かった。
3人は燭台切光忠と大倶利伽羅と太鼓鐘貞宗と言うらしい。鶴丸も本来なら料理当番だったらしいんだが、一期に呼ばれて来ないから少し忙しいらしく、歌仙が手伝いに入ることになり、私と岩融は座って待機することになった。
「へぇ…そんな事情があったんだね。長谷部くんも真面目だからなぁ」
「話しててくれれば力になったんだけどね…」
「…彼奴はそう簡単に話さないだろうな」
「女神様ーっ、これっ。俺が作った肉じゃがなんだけど食べる?」
「ん?ああ、有り難う。…美味いな」
「でしょー!みっちゃん、女神様に褒められた!」
「良かったね、貞ちゃん」
「女神、どうした?」
「…虎はネコ科だからな、猫舌なんだ」
「ああ、成程!ふーふーでもしてやろうか?」
「子供扱いしないでくれ。お前より年上だぞ」
「はっはっは!!…いやぁ、このもふもふは癒されるなぁ」
「誰か岩融を止めてく……ん…」
ゴロゴロと喉が鳴った。虎だからな、不可抗力だ。ハッとした時にはニヤニヤと楽しそうな岩融とキラキラと目を輝かせている貞宗と目が合う。嫌な予感を察知した私は手が空いている歌仙の背後に隠れる。貞宗は初めて見るからかキョロキョロしていたが、岩融は何回も見ているからな…すぐに見付かった。ああ、やってしまった。
「おやおや、可愛いらしいね」
「…歌仙、絶対に岩融を近付けさせないでくれよ…!!」
「ふふ、分かった分かった。…それにしても、雅だねぇ……君の髪は美しい」
「ん?ああ、私はアルビノだからな」
「アルビノ?確か先天性色素欠乏症って奴かな、短命とか聞いたのだけれど…」
「ああ、それだそれ。短命なのは本当じゃないか?何だか色々迷信があってな、呪術に効果があるとか病気が治るから強姦するとかあるみたいだからな…私は生き延びただけだ、偶々な」
「…女神様の家族とかはどうしてるんだい?」
「さあな。物心ついた頃から1人だった。四獣と言われていた時は4人居たが、それ以降は気ままに自由旅だ」
「…女神。サラダだ、食え」
「ん?ああ、有り難う。……このトマトは瑞々しいな…!」
「…ふん」
「伽羅ちゃんが優しい…!」
伽羅の言葉に、光忠は嬉しそうに頬を緩める。…お母さん、と言うようなポジションなんだろうか。今見ている限り、光忠は面倒見が良い。貞宗のミスを的確にフォローし、伽羅の欲しい物をすぐに渡し、自分の調理もする。歌仙も手際が良いな、と感心していれば腰回りに腕が回る。お?とか思っていれば、ひょいっと持ち上げられる。…こんなことをするのは1人しか居ないな。
「岩融、降ろせ」
「はっはっは!!軽いなーっ、ちゃんと食っているか?」
「食ってるぞ。魚とか肉とか。野菜も貰う」
「…それにしては軽過ぎないか?短刀達並だぞ。貞宗、ちょっと担いでみろ」
「「「え」」」
「俺?じゃあ、女神様。ちょっと失礼しますねーって軽っ!!え、本当に食べてるの?!」
「食ってるってば…そんなに軽いか?」
「軽いよ!!…因みに1日にどれくらい食べるの?」
「……あー……私は普通とは違うらしくてな、2、3日くらいは何も食べなくても平気なんだ。別に食べるのが嫌いじゃないんだが……腹が空かない」
「「…2、3日…?」」
「(歌仙と光忠がヤバいな…)得意料理とかはあるのか?」
「んー、ないかも知れんな。魚とか肉は爪で引き裂いて焼いて終わりだ」
「「っ!?」」
「歌仙、光忠、落ち着け!」
「爪?だって女神様、そんなに伸びてないよ?」
「ああ、本来の姿になるのか?確かーー白虎、だったか」
「本来の姿には滅多にならないな…半妖という奴だ。…見せた方が早いか」
貞宗に降ろして貰い、床を軽く蹴って一回転する。一回転すると、虎の耳と尻尾が姿を現わす。髪は更にもふもふだ。ブルブルと軽く体を震わし、自分の体をまじまじと見る。…うん、おかしい所はないな。ちゃんとなってる。久しくなってないからな、たまに失敗する。ふと貞宗を見れば、キラキラと目を輝かせていた。ーーあ、嫌な予感。
「かーわーいーい!!」
「ぎゃ!」
「この耳本物!?尻尾ももふもふだーっ!」
「ちょ、やめ…!!光忠っ!!」
「っ、ご、ごめ……可愛い過ぎる…!」
「…こんな生き物が居るのか、半妖とは珍しいな…(可愛い…)」
「はっはっは!!実に可愛いらしいな!!ずっとその姿で居たら良いんじゃないか?今剣が喜ぶぞ!」
「…雅だ…!!美しい…これなら本来の姿はかなり美しいんだろうね…!」
「ダメだこりゃ……貞宗、離してくれ」
「んー!何か背中ももふもふ?」
「あー…軽く毛皮を羽織ってる感じになってるからな」
「え、触りたい!!」
「ーーはぁ、仕方ないな。……ほら、これで良いだろう」
「わーっ!!もふもふだ、もふもふ!!あったかいー」
「……勘弁してくれ……」
貞宗は背中の毛皮が気に入ったらしく、私の背中に顔を埋めてスリスリする。擽ったいんだが。まあ、好きにしてくれと抵抗せずに居れば、光忠と歌仙も釣られたように触りに来て、顔を綻ばせる。岩融は尻尾が気になるみたいだな…尻尾でビンタでもしてやろうか。
伽羅は一言置いてから触れて来た。…やっぱり伽羅は礼儀が正しいな。伽羅のような人は好きだ。…人、で良いのかは分からんが。
暫く5人にもふられまくっていれば、ふと人の気配を感じ、少し視線を向ければ、そこには今の私のように耳を生やした人が。何だ、私のような人が居るじゃないかと思っていれば、私と目が合った瞬間、その人物は大きく目を見開き、尻尾と戯れていた岩融を遠ざける。…ん?
「ーー白虎様、ですか…?」
「ん?ああ、そうだが」
「ーーっ!!お会いしたいと思っておりました!!」
「おお?」
「私は小狐丸!大きいけれど小狐丸でございます!!ああ、やはりお美しい…白虎様をお目にかかることが出来て幸せです…!」
「狐か……小狐丸の毛並みもなかなかだと思うぞ。あー、触ってみても平気か…?」
「!!!?も、勿論でございます!!」
「そうかそうか。……良い毛並みだ。素晴らしいな、小狐丸。有り難う」
「とんでもございません!!…触れても宜しいですか?」
「ああ、勿論」
「有り難うございます!……ああ、もふもふですね…!!」
「わーっ!ダブルもふもふ……幸せ」
私に遠慮しながら触れて来た小狐丸にくすくすと笑えば、小狐丸に触れさせるために離れていた貞宗が私の背中を撫でながら小狐丸の髪に顔を埋めていた。ふむ、確かに幸せそうだ。やりたい、という気持ちが出ていたのか光忠にこんのすけとかで我慢してね、と笑いながら言い、更に口元に何かを持って来たので反射的にぱくっと食いつけば、唐揚げだった。サクサクしていてジューシーだ。思わず頬が綻ぶ。そんな私の姿を見た光忠は口元を抑えて視線を逸らす。…私もなかなか罪深いな。
再び尻尾で戯れ始めた岩融を小狐丸が成敗してくれることに感謝していれば、唐揚げの匂いに釣られて来たのか騒がしいからか姿を現した五虎退と今剣にこの姿を見られ、飛び付かれた。あー、触り方が優しくて思わず眠ってしまいそうだ。因みに五虎退は子虎を連れて来ていた。可愛いしもふもふだった。幸せだ。
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