皆で食べましょう
五虎退の子虎達と互いにもふりあいしていると、食事の準備が出来たようだ。光忠に声を掛けられ、私は子虎達を五虎退の方に行かせる。…何か親のように思われている気がする。よく分からないんだがな…りんに対する楓みたいな感じにすれば良いのか?私も料理を運ぼうと思ったのだが、お前は客人なんだから働くな、と岩融に持ち上げられる。…五虎退や今剣も働いているのに私だけ見ているのは嫌なんだが…歌仙達も私が働くのに反対みたいだし、大人しくしているか。因みに私は未だに半妖の姿だ。…人間の方が良いんだが、五虎退からの要望だからな、仕方ない仕方ない。
皆で広間に向かえば、さっきは居なかった人も居て、庭にテーブルやらなんやらを準備していた。今日で外で食べるということに決まったそうだ。この人数だと広間ではちょっと狭いかも知れないからな、これがちょうど良いだろう。
「女神様!何というお姿に…!大変お美しいです!!」
「おお、有り難うなこんのすけ。岩融、そろそろ降ろしてくれ」
「何だ、俺の肩の上は座り心地が悪いか?」
「そうじゃないが…自分で食べたい」
「ふーふーしてやる…「降ろせ」はっはっは、仕方がないな」
「めがみさま、ぼくといっしょにたべましょう!岩融ばかりずるいです」
「あ、あの…僕も一緒に食べたいです…!」
「おー、別に構わないよ。光忠、何処に座れば良い?」
「ん?特には決まっていないけど…そうだな、鶴さんの近くには行かない方が良いかな」
「何でだ光坊!!」
「…アンタは意地悪が好きだろ、当然だ」
「そーそー!女神様、俺の右側空いてるからおいでよ!今剣は俺の膝にでも座るかー?」
「はい、ありがとうございます!」
「有り難うな、貞宗。五虎退はどうする?私の隣で良いか?膝が良いか?」
「…お膝に座っても良いですか?」
「良いよ、おいで」
貞宗の隣に腰を降ろして膝をポンポンすれば、五虎退はキラキラと目を輝かせて私の膝の上に座る。…うん、可愛いな。撫で撫でと頭を撫でてやれば、五虎退の虎達も撫でてとばかりに近寄って来るので、少し忙しいが相手をする。…ああ、もふもふ癒される……癒されていると、見慣れた笠が見えたので視線を移せば、少年が綺麗な2人の男と仲良さげに座っていて、目が合ったので手を振ってみれば、少年は照れ臭そうにはにかみながら手を振って来た。…可愛いな…
思わず癒されていると、不意に周りが暗くなる。不思議に思って顔を上げれば、そこに居た人物に思わず顔をしかめる。
「……何の用だ?」
「随分と嫌われてしまったようだな。長谷部にはちゃんと謝ったぞ?」
「……」
「俺は三日月宗近。良ければ一緒に食べても良いか?」
「…私は五虎退が良いなら構わない」
「ふぇ…!?ぼ、僕は別に大丈夫です…!」
「有り難うな、五虎退」
「三日月、めがみさまになにかごようなんですか?めがみさまはあなたがきらいみたいですからいじめちゃいけませんよ」
「はっはっは、それは手厳しいな今剣よ。…いや、少し気になってな。…ああ、やはり痕になってしまったか。傷物にしてしまったな」
私の反応に何かを感じたのか、三日月に対して警戒する今剣に、三日月は愉快そうに笑う。…感情が全く読めない。三日月は私をちらりと見ると、少しだけ眉を顰める。何の話だと思っていれば、三日月の手が伸びて来て、抵抗する暇もなく、するりと髪を梳かれる。…ああ、あの時の傷を見に来たのか。少しは気にしているらしいな。心底申し訳なさそうな表情を浮かべている三日月に思わずくすりと笑みが零れた。
「何だ、意外に気にするんだな」
「当然だろう。女子を傷付けたのだからな。…痛くは、ないか?」
「案ずるな。この程度は日常茶飯事だ。痛みなど感じないさ」
「ーー怪我してるの!?ちょっと診せて!!ああ…少し深いね…何で早く言わないの!」
「平気だ。…すぐに治る」
「平気じゃないでしょう!?五虎退、ちょっと離れてくれるかな?女神様を治療しないと…」
「光忠、私は妖怪だ。このくらいの傷、気にする必要はない。三日月も気にするな。1日経てば治る。ーーそういう体なんだ」
「そんな寂しいことを言うな女神よ。俺達にとって女神は恩人そのもの。恩人を心配して何が悪い。少しは好意に甘えてくれ、その方が俺達は嬉しいぞ」
私の言葉に、光忠と三日月は更に辛そうな顔をする。そんな2人の気持ちを代弁するかのように岩融が私の頭を撫でながらそう言い、反論しようとすれば唐揚げを放り込まれる。…食べ物に罪はないからな、素直に咀嚼すれば、岩融は満足そうに笑いながら、色んなものを放り込んで来る。…餌付けされているみたいで納得いかんな。まあ、放り込まれたものを吐き出すのは光忠達に悪いからしないが。岩融ばかり狡いとばかりに、あーんとして来た今剣と五虎退のくれる物も素直に咀嚼すれば、彼等は心底嬉しそうに笑う。…可愛い。即発されたのか光忠達もあーんとして来るのでこれもまた咀嚼すれば、光忠と三日月の頬が緩む。これで少しは気が晴れたか…?
貞宗と伽羅にもあーんされ、猫舌だから熱いのを避けていた私に熱々の味噌汁をあーんしようとして来た鶴丸は光忠に沈められていた。…光忠、笑顔で手刀をするんだからなぁ…下手したら鶴丸に掛かっていたかも知れんのに。容赦がないな…
「めがみさま、みそしるはぼくがふーふーしますね!歌仙のつくったみそしるはおいしいんですよ!」
「ほう?女神は熱いのが苦手なのか。味覚は完璧に動物なんだなぁ…きつねうどんとかはどうだ?あれは小狐丸もこんのすけも好物でなぁ」
「きつねうどんも好きだが、やはり少し冷めないと食べれないな…熱々が美味いのも分かるが、どうしても食べれん。伸びてしまうのもやっぱり残念だな…」
「氷とかすこーしだけ入れたら冷めるの早くならないかな?」
「…まあ、冷やしうどんもあるからな。麺つゆとかを工夫すれば何とかなるんじゃないか」
「伽羅流石!俺、ちょっとみっちゃんに聞いて来るから待っててね、女神様!」
「え?あ、そんなつもりで言ったんじゃないんだが…」
「えと、皆は女神様がお食事する顔が見たいのです。…凄く、可愛いらしいので」
「五虎退の言う通りだ!それに、俺達も美味いのが食べられるのが嬉しいからなぁ…」
「…あー、そう、か。…まあ、光忠達の料理はいくらでも食べられる気がするし、美味いから凄く助かる」
自分の頬を掻きながら言えば、伽羅は少しだけ顔を緩め、少し悩んだような仕草をした後、控えめに私の頭を撫で、光忠達の方に向かって行く。五虎退もいつの間にか移動していて、探してみれば歌仙の方に向かっていたので、さっきの話を伝えるつもりなんだろうな、と思いながら今剣が一生懸命ふーふーしてくれた味噌汁を飲む。……うん、美味しい。
「めがみさま、あつくはないですか?」
「丁度いいよ、有り難うな今剣」
「えへへ」
「今剣はいい子だな!俺も鼻が高いことだ」
「この本丸に悪い奴は居ないぞ。…まあ、俺が言っても説得力はないかも知れないがなぁ……もう少し、信じてやらなければな」
「ーー…分かれば良いんだよ。1回くらいは誰だって間違えるさ。2度目を起こさなきゃ良い話だ」
「おや、俺を慰めてくれるのか?女神は優しいな」
「当然だろう。女神はいきなり刀を振るった俺も許したくらいのお人好しだからな」
「岩融、そんなことをしたんですか…?あ、石切丸!小狐丸!ちょっときいてください、岩融が!」
「っ、今剣!?よりによって何でその二振りなんだ…待て、今剣!!」
「…大変だな、自ら墓穴を掘ったから同情はしないが。驚いたし」
「はっはっは、彼奴には良い薬だろう。…さて、女神はジジイの話し相手をするのは嫌か?色々聞きたいんだが」
「別に良いが食べながらでも良いか?行儀悪いのは分かってるが……久しく振りにお腹が空いたと感じてな、もう少し食べたいんだが」
食い意地が張ってると思われるだろうか。ちらりと見て見れば、三日月はくすくすと笑いながら頷く。…なかなか美しいな。思わず見惚れそうになった。私も美しいと思っているけどな…どんどん食べろ、何が好きだ?なんて楽しそうに笑いながら聞いて来る三日月に何でも食べるがやっぱり肉は好きだな、と言えば三日月は好き嫌いがないのは偉いなと褒められ、頭を撫でられる。孫扱いされてる気もするが…まあ、撫で方が上手いから黙っていてやろう。耳が気になるのか、やたらと触って来る。ぺたんと畳んで見れば三日月はキラキラと目を輝かせる。子供みたいだな…耳をピクピクさせながら尻尾をフリフリすれば、三日月は興味深げに眺めている。…そんなに面白いか?
「いやあ、自在に動かせるのだな」
「作り物じゃないから当然だろう」
「それもそうだな。…女神よ、先程のぺたんとするやつをもう一度見せて貰えるか?」
「うん?これか?」
「やはり愛らしいな…女神は整った顔をしているから更に愛らしくなる。俺だけが知っていると言うのはなかなか嬉しいものだな」
「そうか?」
「うむ。出来れば他の奴にはあまり見せないで欲しいものだな。ジジイと女神の秘密だ、ダメか?」
「うーん……光忠の唐揚げで手を打っても良いが?」
「何、ジジイの楽しみを奪うとは女神もなかなか悪だな。…まあ、また見せて貰うから良いとしよう。そら、口を開けろ」
「んむっ…ごちそーさま。願いは聞き入れてやるから安心しな」
くすくす笑いながら言えば、三日月に軽く小突かれる。手加減してくれてたのは分かっていたし、実際に痛くはなかったのだが、周りにはそう見えなかったらしい。今剣が走って来たかと思うと、走って来た速度そのままにドロップキックを食らわす。まさかそう来るとは思っていなかった三日月は軽く吹っ飛び、端っこの方でのんびりしていた長谷部にぶつかる。…ああ、とばっちりだな、お疲れ様、長谷部。やり過ぎだろ、と注意すれば今剣はにこにこ笑う。…可愛いな…くすりと笑みを零してから今剣の頭を乱暴に撫でれば、今剣はきゃーなんて言いながら嬉しそうに笑う。…本当に可愛い。
ーー皆が皆、少しのぎこちなさを感じながらも仲良くじゃれあっている。囚われていた者はこれでもかと言うくらいに構われているし、笑顔が絶えない。この笑顔がいつまでも続くように、と私は願いながら目を細める。…その為にはまず、要らないのを取っ払わなきゃいけないな。
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