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どこか似ている少年と、出会った。
 
 
「あ、フェイ・ルーン」
ここはなんと言ったっけ“安土桃山時代”だっただろうか。
ベータちゃんの話を聞き流していたので曖昧だ。
どうしてみんな私を連れて来たがるんだ。
「プロトコルオメガの……………えっと?」
「ミライ。」
「そうそれ、ミライ!
……どうしてここに?」
あからさまに態度が変わり私は笑いを溢す。
「大丈夫だよ、私はスフィアデバイス持ってないし。
何より迷子なんだ」
あくまでも真面目に答えると、
今度はフェイ・ルーンが笑う。
「…そんなことよりフェイ・ルーン」
「……なんでフルネーム?」
「じゃあ何て呼ぶの?」
「えっ……」
私のはなんてことない問いなのに、
そんな真剣に考え込まれると困る。
「…こんなところで、こんな時間にサッカーの練習?」
「…うん。」
曖昧な笑顔を向けられ、
少し違和感を感じる。
「ミライはサッカー、やらないの?」
「私?私にとってサッカーが全てだから今はやらないよ」
…何を言っているんだ私。
サッカーが全て?
そんなバカな。
「一緒だ。」
「…え?」
「僕も同じ。僕にはサッカーだけなんだ」
…本当にそうなのだろうか。
少なくとも私には、
フェイ・ルーンには沢山のものが見えるんだけど。
だけど、
なにか欠落している様にも見える。
 
もしかして、私と同じ記憶喪失者?
 
 
なんて、
少し前の私を目の前の彼に重ねてみる。
 
私も過去と向き合わなきゃ、ね。

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