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メイア Side


「うわ、またやってるよ」
「よく懲りないよね」
「ミライもデッキも、ね。」
ガルの練習ルームの前を通れば、そんな会話が聞こえた。
ミライの名前があったから、
ほんのちょっとの好奇心で覗いてみたの。
 
SARUと話しているときのなんとも退屈そうな姿しか見たことがなかった私はとても驚いた。
前々からミライの様な子がどうしてガルに、とは思ってた。
正直みんなの前での彼女を見る限りではギルかザ・ラグーンの方が合っていると思っていたわ。
でも今、ガルのメンバーといるミライは、
本当に子供のように笑ってる。
無邪気な、屈託ない笑顔。
 
それからだったと思う。
私がミライに興味を持ち始めたのは。
 
ミライはいつもSARUかガルの子と一緒にいたわ。
だからどうも話しかけるタイミングが分からなかった。
ギリスにも協力してもらって、ようやく彼女と話せたの。
「私はメイア」「…僕はギリス」
「知ってるよ。」
前にSARUから“ミライは興味のないことはすぐに忘れる”と聞いていたから、
知らない、或いは忘れていると思っていたのに、
たった一言、切り捨てるように放たれた言葉に私は少し安堵した。
「フェーダの子はみんな覚えてる。
それで、ギルのキャプテンが何の用?」
首を傾けながら訊いてくる姿に私はハッとしたの。
話しかけることに専念しすぎて、何を話すか全く考えていなかったんですもの。
「また、お話できる?」
私がそう言うと、ミライは目を丸くして小さく笑った。
「勿論」
って。
 
それから少しずつ私とミライは仲良くなったわ。
生憎彼女も忙しいらしく、そうそう会話できたものじゃなかったけれど。
それでも、
私の中でミライは大きな存在に変わっていった。
ミライ自身も、大きく変わっていった。
“誰のせい”とは言わないけれど、
少なくとも私にはそうとしか思えなかった。
 
 
私一人、取り残された気分だった。

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