修旅


「……とりあえず中に入って。」
「……おう。」


*


「みんなで枕投げねぇ……。部屋に戻ったらあんずがいないと思ったら……、あの子は……。」
「それで例の如く俺が凛華も呼んでくるよう言われたんだけど……。」
「……真緒ってハブられてんの?」
「っはぁ!?」
「え、だって今もみんなは枕投げで楽しんでるんでしょ?そんな中追い出されるって……。」
「いや、追い出されたわけじゃなくて、俺がお前もいたら、」
「しっ!就寝時間過ぎた。先生たちの見回り最初にくるから悪いけど電気消すよ。」
「はっ!?……っぐ!?」
「ホント、ごめんけど、椚先生の説教は勘弁だから。(……あれ?これ、おかしいか?)」
「(布団に引きずり込むって凛月かよ……!?)」
「(あんずの分の布団敷いてないから思わず引き込んだけど、不自然過ぎたか……。)」
「(ここでバレなくても俺は部屋にいないからバレるんだよな……。)」
「(先生が私とあんずが仲良いと勘違いしてくれればいいけど。)」


*


「来ない……。この階の担当佐賀美先生な気がしてきた。」
「……かもな。」
「……あんず帰ってこないんだけど。あっちでみんな寝落ちてるんじゃない?回収に行った方いいかな?」
「雑魚寝はマズイよなぁ……。」
「佐賀美先生なら見回り面倒だからってずっと廊下に滞在とか有り得そうなんだよな……。出た瞬間アウトとかシャレにならないしな……。あー、八方塞がり。」
「はぁ……。」
「真緒も疲れてるよね……。もうこのまま寝ちゃおうか……。」
「それこそマズイだろ……。」
「でも真緒眠たそうだよ。」
「!?……お前も寝そうだぞ。(こんな近距離で顔触られるなんて、前なら有り得なかったよな。)」
「うん…最近働き詰めだったから……。」


*


「結局怒られたらしいね。」
「折角タイミング見計らって帰らせてくれたのに悪いな。」
「私怒られなかったからそれは別に。」
「あぁ、そう……。」
「……あんずはバカでかわいい子だよ、ホント。」
「んー?何か言ったか?」
「ん?何も。ご飯食べ行こ?」
「おう。」

「結城。」

「はーい?ごめん真緒、なんか呼ばれたから先行ってて。」
「りょーかい。」


*


「朝までお前の部屋に居たのは隣のクラスの奴か?」
「何のことですか?」
「夜に誰かと話してたろ。転校生とお前だと思ってたんだが、転校生は隣の部屋に居たろ?」
「そうですね。……先に言っておきますけど何もないですよ。」
「だろうな。……で、誰なんだ?」
「……B組の衣更真緒です。」
「ん、それだけ分かればいーや。そいつはもうあいつらと注意してるしな。」
「……行っていい?」
「おう、行け行け。せいぜい青春してこい。」
「朝ごはん食べるだけですけど!」
「いいから行け。」
「はいはーい。」

「(俺としては転科生が気の置けない奴ができるのは良いことだとは思うけど、立場的に今回の行動は褒められないんだよな……。めんどくさいな、教師っていうのは……。)」


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