何とかは風邪をひかない
「野崎ー!締切は大丈夫かー!?」
野崎からのSOSメールを見て野崎のマンションへ駆けつければ、既に来ていた堀くん、千代ちゃん、若松が3人揃って墨汁を持っていた。え、私持って来てない。
とりあえず手持ちのホワイトを取り出したら目の前で三人揃って首を横に振った。
*
「大変申し上げにくいのですが、アシスタント3人いるみたいだし、私の方も締切がヤバいので、野崎にお粥だけ作って消えます。」
そう宣言して、さっさとコンビニに行ってからキッチンに立った。野崎がなんの作業を残してるか分からないけど、3人居ればできるだろう。
「あの、瀬名さん。」
「んー?」
「トーンの貼り方、教えてください。」
んんん?トーン貼れる子いないのか。割りと不味い気がする。
「分かった。時間ないから手伝えないけど…、説明だけしていくね。」
野崎の超大雑把な背景指示で背景を描ける堀くんが居れば、トーンの選択はきっと間違えないだろう。そう信じる。
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「瀬名さん、今日アシ頼めますか?」
「野崎風邪治ったの?ってか原稿落としたの!?」
あの3人で間に合わなかったのか。初のトーン貼りだとそんなものか。私も昨日手伝えれば良かったけど、私の原稿も昨日締切だったから許して欲しい。
「締切は伸ばしてもらいました。トーン貼り直すのを手伝って欲しいです。」
「貼り直す?ってことは若松たち貼れたんだ?」
「…状況は見れば分かると思います。」
野崎の言い方があまりにも悲惨な状況を物語っていて正直断りたいけど、そうも言えないだろう。今後のためにも。
後で若松にちゃんとトーン貼り教えて戦力にしよう。勝手にそう決意した。
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