ゆるやかな箱庭


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※創作審神者との小話や日常の雑談など、色んな事を書いてます。
※お借りした場合も此方に記載致します。
07/23

◎はじめまして。(そねさに)

  審神者としての経験はあまりにも浅い。
長曽祢虎徹は目の前の“幼子”を見下ろすような形になっていた。
政府より派遣された“新たなる主”に戸惑いと混乱が続く中で


“この状況をどのように把握しろと?”


目の前にいる小さな存在を無言のまま見つめる近侍の長曽祢虎徹。
あいにく、初期刀である弟の【蜂須賀虎徹】は席外していた。

何か言わねば、余計に心配させてしまうかもしれない。


弟達に今の情けない姿を見られた暁には
『贋作は主とまともに会話も出来ないのか?』と
言われてしまうだろう。
否、蜂須賀なら捨て台詞のように暴言を飛ばすに違いない。

政府が審神者育成の為に連れ去った、もとい
拉致してきた娘がいた。

親からも世界からも見捨てられ、見放された孤児(みなしご)の少女らしい。

__【なぁなぁ長曽祢兄ちゃん!新しい審神者ってどんな人かな?】

そういえば、浦島がそわそわしていたなと長曽祢虎徹はぼんやりと思い出していた。
てっきり、もっと年上で熟練の審神者が来るものと思っていたせいか、拍子抜けといったいいえばいいのか呆気にとられていた。

我が本丸は他の本丸とは少々勝手が違う。
正式な主が迎えられるまで、彼らは主の顔も名も声も全てを知らされていない。

主に謁見を許されず、彼らを顕現したのは
確かに今目の前にいる幼い少女である。
かりそめの主という代役の者が主だと思っていた者も多く
本当の主は別にいた、という事実をどう受け止めればいいのか、深追いして考える刀剣達もいただろう。


短刀や脇差の刀剣達は玉手箱を空けるように
わくわくしているようだが、他は内心どう接していけばいいのやらと
途方に暮れていた者も少なくはない。


「はじめまして、この本丸のあるじ、というものです。
あなたは、わたしの天狗さまですか…?」

先に言葉を発したのは少女の方からだった。
漆黒の黒髪に琥珀色の瞳が、己より遥かに高い長曽祢虎徹を見上げる。
見上げなければ“187cm”ある背丈の彼を確認する事も出来なかったのだから。


はて?天狗とは何のことか?
長曽祢は腰を屈め、膝をつき少女の眼をじーっと見つめてみた。

「(ああ、このような幼い子が審神者というのか...)」
「天狗様?」
「おっと、すまない...おれは長曽祢虎徹。
贋作だが、本物以上に主の役に立つ男だと憶えておいて欲しい」

これが、長曽祢と主の初めての出会いだった。

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