ゆるやかな箱庭


info
668
※創作審神者との小話や日常の雑談など、色んな事を書いてます。
※お借りした場合も此方に記載致します。
07/30

◎再会。(蜻妙)

※創作刀剣女士との話。
※蜻蛉切とは、夫婦刀の設定。


「蜻蛉様、おまえさま…もう一度、逢えますか?」




  最後に交わした言葉はなんだっただろうか。記憶がぼんやり混濁していて、何も思い出せない。誰かを待っていた気がする。大事なだいじな御人だった。
契りを交わした誓いを…そう、あの方の名は―――。



「…此処は?一体、何処ですか?」
「鍛刀成功ですね。蜻蛉切、良かったわね」
「っ…!ああ、主よ、心から感謝しますっ!!」

  目の前にいた女人は彼を『蜻蛉切』と呼んでいた。『蜻蛉切』の名を聞いて、私の瞳からは、とめどない雫が零れ落ちた。彼は…この方は、私のっ!旦那さまっ!!整理が追いつかぬ状態での私をみて、女人は何かを尋ねようとしていたが、雫がこぼれて
うまく話す事が出来なかった。


  それよりも、この体は…一体どうしたことか?

本来、私は『槍』であり、人間のように会話をする事も出来ない筈だ。なのに、人間の器というものなのだろうか?体が重く苦しい。バランスが保てず、足がフラついてしまう。どうにか返事を返さねば、女人に失礼になる。



「大丈夫よ。ゆっくりで大丈夫ですからね?
名前は教えてもらえるかしら?」
「私は白妙御槍。必ず役に立ってみせますわ!」
「まぁ!それは頼もしいわね!!あなたもそう思うでしょう?蜻蛉切?」


  口から出た言葉はなんと威勢のよい言葉だろうか。言った自分も驚いている。
女人は、そんな私を姿を目に焼き付けるなり、くすくすと笑みを浮かべていた。
そして、彼『蜻蛉切』に視線を向ける。


「は、…私は妻の姿を『人の姿』で拝見するのは初めてなもので…そのッ!」
「じゃあ、照れてるの?」
「そ、そういう訳では、決して…!!申し訳ありません…主」



  と言いつつも、彼の表情が紅く紅潮していく姿に、私まで紅くなってしまった。
そういえば、私も『人の姿』での旦那さまをこの眼で拝むのは、初めてだったわ。
まじまじとみては、失礼かしら?
蜻蛉様、とても逞しいお姿。三名槍に相応しい風貌だわ。
私が彼に見とれていると、見兼ねた『主』と呼ばれた女人が口を開く。


「ん〜、後は二人っきりで話せばええじゃろう?
私は遠征部隊を迎えに行くけん、二人で夫婦水入らずしときんさい」
(訳:ん〜、二人っきりで話しなさい?
私は遠征部隊を迎えに行くから、二人で夫婦水入らずしときなさい)


「「は…?」」


  颯爽と駆け出して行かれた主殿。


  まさか…どうして二人っきりに!?

いくら旦那さまだったからとはいえ、今は……
  人の形を得た身では恥ずかしいわっ!!!


.

←prev | next→