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「アルディア中将がご到着です!」

接岸した軍艦から降り、俺は指揮を副官に任せてシラヌイを連れ、本部へと向かう。

「他の中将方は既に会議室にてお待ちいただいています」

しまった。
俺が最後か。
まあ、予測はしていたが、あまり嬉しい展開とは言えない。

「今回の任務に参加する中将は何人でしょうか」
「アルディア中将を含め、5人であります」
「そうですか…」

おつるさんとガープさんはともかくとして、あと二人は誰だろうか。
案内をしてくれた海兵は扉の前で敬礼をして去って行った。

「アルディアです。失礼します」
「遅いぞ、若造」

ガープさんがいないが……まあ、そういう事なのだろう。

「これは、オニグモさん。申し訳ありません。お二人も、お待たせしてしまったようで」
「構わないよ、さあ座りなさい」
「はい」

おつるさんに促され、唯一空いていた末席に座る。
その隣にシラヌイが控えた。
オニグモさんにモモンガさんか。
手に持ったままだった長刀をテーブルに立てかけた。

「それじゃあ、始めるよ」

おつるさんの言葉で会議が始まった。

「聞いているとは思うが、七武海の会議があるからその警備にあたってもらうよ」
「既にこちらに向かっている艦からの報告によると、今回は“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴ、“海峡”ジンベエ、サー・クロコダイル、“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク、以上四名が出席予定となっている」

モモンガさんの言葉に、俺とオニグモさんが眉をしかめた。
その人数だと、会議中はさすがに鳥は出せないか。

「私がドフラミンゴにつくよ」

会議室まで、護送というか、案内というか、要するに勝手な所をうろつかれないように監視役だ。
おつるさんは一番面倒と思われるドンキホーテ・ドフラミンゴについてくれた。

「ラクハール、お前は“海侠”につけ」
「分かりました」

モモンガさんの声に二つ返事で了承する。
海侠か、一安全なところだ。
モモンガさんは鷹の目に、オニグモさんはサー・クロコダイルについた。

「配備はいつもの通り頼むよ。出来るだけ荒事を起こさないようにね」

おつるさんの言葉に三人が頷き、各自報告を始めた。
オニグモさんやモモンガさんの話を聞く限りでは、まだ火拳が黒ひげと呼ばれる者と接触していないのだろうと予測がつく。
あまりにも、静かだ。

「ラクハール、お前からは何かあるかい?」
「船員が一人、海軍を辞めたこと以外は、特にありません。殉職者もおりません」
「そうかい、相変わらず“死なない戦い”をするんだねぇ」
「可能な範囲で、ですよ。誇れたものではありません」

まるで褒めるかのように言ったおつるさんに俺は首を振ってつぶやいた。
おつるさんはそうかい、と言って俺達を見回す。

「気を抜くんじゃないよ。奴らも荒事を起こすつもりはないだろうが……特にドフラミンゴにはね」
「はっ」

会議を締めるようにおつるさんが立ち上がり、それに続いて退出した。

「ラクハール、久しぶりだな」
「はい、モモンガさん、お久しぶりです。お変わりありませんか」
「ああ。お前も……いや、何かあったか?」
「はい?」
「前よりもいい顔をしている」
「そうでしょうか」
「気のせいかもしれんな。いや、気にするな」

モモンガさんが言う言葉が本当であれば、それは俺が覚悟を決めたことによるものだろう。
あいつの遺志を継ぐと決めたときから、俺は生かす覚悟と、死ぬ覚悟を。
あいつは俺の命にまで気を使ってくれたが、それではおよそ何も変えられない。
望む物と等価の覚悟を差し出さねば、運命は変わらない。

「所でそいつは?」
「ああ、拾ったんです。なつかれてしまったので」

シラヌイは素知らぬふりで俺の脚に凭れた。

「そうか。そういえば7000万の賞金首を抑えたそうだな。よく頑張っている」
「皆さんよりも俺には経験が足りませんから」
「気にすることは無い。お前は十分強いからな。中将クラスともなれば能力者が多いが、お前は良くやっている」
「ありがとうございます。あの、モモンガさん……」
「なんだ?」

躊躇うように口を閉じた俺を訝しんでか、促すように声をかけたモモンガさんを見る。
聞いたところで、何がどう変わるわけでもない。
けれど。

「あの……アサギという名を……知っていますか」
「アサギ?いや、知らんな。すまない」
「いえ」

俺は微笑み、それでは、と頭を下げてその場を立ち去った。
やはり、消えているのだ。
見聞色で周囲を確認しつつ、窓際へと立ち止った。
“シラヌイ”は、基本的に周囲にある物を蜃気楼で再現するものだ。
つまり、鳥がいれば“カゲロウ”を使う必要もなくすむ。

「いないかー」

仕方がない。
持ち合わせていたペンを“シラヌイ”で増やし、擬態させることで白い小鳥へと変えた。

「28羽、いや、30羽が限界か」

並んだ28羽の小鳥たちを見て、ため息をつく。
あと2羽を複製して、あまりの疲労に壁を預けた。

「行け」

鳥たちが頷き、四方八方へ羽ばたく。
30か。
いや、小鳥の大きさで30という事は、シラヌイのサイズ、もしくは人間のサイズではもっと少ないのだろう。
……もっと、増やさなければ、計画に支障が出る。
支障が出ると言うか、計画そのものが実行できないな。

「取りあえず、俺の意識を少し下げて小鳥に」
「そうだな」

シラヌイの鼻面を撫でて、シラヌイに分化していた思考を少し戻した。

「もっと下げろ。こっちの身体はそれほど思考を必要としないはずだ」
「いや、でもな」
「俺は言葉を聞きわける程度で良い。そもそもシラヌイを出している目的は持続だ」
「ああ……分かった」

シラヌイから意識を更に分化して、新たな小鳥を生み出した。
これで、シラヌイはもう狼程度の知能しか持ち合わせていないことになる。
小鳥が窓枠から飛び立つのを見送って、その場で少し休む。
疲れる。
意識を分化したせいで喪失感が酷い。
自分が、薄れていくような。

「いっ……!?」

右手に唐突な痛みを感じて視線をやれば、シラヌイが俺の手を噛んでいた。
うっすらと血がにじんでいる。

「見失うなってか……もっと穏便に窘めてくれよ」

毛並みに沿って撫でた。

「よし、もう大丈夫。一度船に戻ろう」

マリージョアにつき次第、小鳥を消し、会議が終わってから再び小鳥を放つ。
七武海に小鳥を付けて情報収集をすれば、海軍では入手することが出来ない情報もとれるだろう。
火拳の情報を集めなければ。



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