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「“海侠”ジンベエ殿、着艦です」
「はい、了解しました」
報告に来た海兵が敬礼して去って行くのを見て、俺は軍艦を見上げた。
ジンベエ殿が降りてくるのが見える。
俺が右手を上げ、指示を出せば、部下が道の両脇で敬礼した。
「お待ちしておりました、ジンベエ殿。海軍本部中将、アルディア・ラクハールが案内を務めさせていただきます」
一度敬礼をして、部下たちにも敬礼を下げさせる。
「お前さん、中将なんか」
コートを纏わない俺に驚いたようにそう問うたジンベエ殿に頷く。
「はい、こんなナリではありますが一応中将を任されています。ではこちらへ」
「中将」
「各班待機で。君は元帥のところへお願いします」
「はっ」
敬礼した副官に頷き、俺の刀を銜えたシラヌイにおいでと指示を出す。
懐かしいな。
俺も昔は敬礼の訓練から始まったものだ。
「お前さん……アルディアと言ったか」
「はい」
「何故コートを着とらん?」
「着用義務はありませんから」
短く応えて俺はにっこりと微笑んで見せた。
本当は、俺が正義も背負えない、弱虫だから。
大きな扉の前に立ち、二回ノックした。
「アルディア・ラクハール、“海侠”ジンベエ殿をお連れしました」
内側から扉が開き、海兵が俺に敬礼した。
「ご苦労様です、中将」
「はい、そちらもご苦労様です。交代いたします、外をお願いします」
「はっ」
海兵が外へ出ていき、扉が完全に閉まった。
ジンベエ殿は用意された椅子に座り、来ている面子を面倒そうに眺めた。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ、ジンベエ、サー・クロコダイル、ジュラキュール・ミホーク。
連絡のあった軍艦は既に全て到着しているようだ。
再び、ぎしりと音を立てて扉が開いた。
元帥だ。
俺は敬礼して迎え入れ、その後ろに俺の副官がいるのを見る。
元帥が軽く手をあげたのを見て、敬礼を下ろす。
副官は七武海に書類を配り、あまった紙をまとめて机の端に置いた。
俺の隣に戻ってこようとした副官の足が止まる。
どうした、と思うが、副官の表情は自分で足を止めた者のそれではない。
これは。
じっと見れば、制服が揺らめいていないことに気づく。
「っ、アルディア中将……!」
「アルディア・ラクハール、抜刀します」
シラヌイから俺の刀を受け取り、鞘を払った。
マフラーを口もとまで引き上げる。
副官が一瞬、安堵したように力を抜いたのが見えた。
俺は刀に覇気を纏わせ副官の後ろへと振り抜いた。
軽い手ごたえがあり、斬れたのが分かる。
緊張状態から解放されたためか、ふらついた副官を支え、ドンキホーテ・ドフラミンゴを見る。
「俺の部下です、お戯れは程々に」
「フッフッフッ……悪いな」
そう言いつつも、きらりと何かが光る。
糸。
副官を押しやり、その場から身を引くと、迫る糸を切り捨てた。
「おやめ、ドフラミンゴ」
「フッフッフッ……」
もう構うつもりはないのか、視線だけはこちらにあるが、糸が伸びてこないのを見て、シラヌイの持つ鞘に刀を収めた。
副官が謝罪するように敬礼をしたそれに、気にするなと頷く。
元帥に対して深く礼をして副官の隣に戻った。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
図りかねるが、より深く裏で生きる分、情報には明るいのだろう。
口に出せばいいが……。
ポートガス・D・エースが、今どこにいるのかを。
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