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「アルディア中将、異動希望者の選別をお願いします」

俺は副官から受け取った紙を見て“仲間”たちを思い出した。

「今回は多いですね」

副官は入隊希望の方を視線で指して言った。
それもそうだ。計画のために、俺の隊には幾人もの“仲間”が移動することになっている。
俺は当たり障りなく頷いて尋ねた。

「そうですか。こちらからの異動者人数はどうなっていますか?」
「例年通りですね。彼らは移動したくないと嘆いていますよ」

副官は少しおかしそうに笑って言った。
新人の内はいろんな隊を回って学ぶのが定石だ。

「俺も昔はそうでしたよ」
「アルディア中将はまだ若いですよ」
「褒め言葉として受け取ります」
「も、勿論ですよ!」

ペンで見知った名前に丸をつけ、他は経過報告の様子で取っていく。
やはり人にも向き不向きというものがあるから、俺の隊に来ても成長しない人もいるのだ。
そういうタイプの人たちを、ここで選別する。

「はい、提出していただけますか」
「了解しました」

副官が出ていったのを見届け、俺は窓際に立った。
俺を見上げるシラヌイを撫でた。
手を動かし“仲間”たちの下に散っている小鳥たちを呼んだ。
すぐに蜃気楼が集い、俺の手に吸い込まれていく。
分化していた思考が戻り、小鳥たちが受けた報告もそれに合わせて入ってきた。

「……アラバスタ」

確かサー・クロコダイルの収めている場所だ。
海軍の出入りが少しあったところで問題はないだろうが……。
黒ひげがドラム王国を襲ったという話は聞いていた。
それをポートガス・D・エースも知ったとなると、針路的にはいずれそこへつくだろう。
海軍本部からアラバスタまではかなり距離があるが、火拳がアラバスタにつくのも、さすがに一週間やそこらという話ではないだろう。

「分かった、俺が行く」

小鳥たちを再び作り、飛び立たせた。

「シラヌイ」

シラヌイは頷き部屋を出た。
“遺志を継ぐ者”たちにも役割はある。
本部に残る者、各隊に潜むもの……。
あの辺はヒナ大佐か。
あそこにも“仲間”はいたはずだ。
小鳥をもう一羽はなった。
俺も日に日に成長している。
覚悟のおかげか。

「失礼します、“ラーク中将”」
「どうぞ」

ドアを押しあけて微笑んだ男――スティングはシラヌイを撫でた。

「シラヌイがこっちに来てましたよ」
「ありがとう」

俺も彼も嘘つきだ。
俺は見聞色で周囲を索敵し、スティングに頷く。
周囲に人の気配はない。

「明日中に本部を発ち、アラバスタへ向かう」
「例の件ですね。彼が見つかったのですか」
「いや。だが、彼の動向はつかめそうだからな。スティングは本部か?」
「はい。俺は一応文官ということになっていますから、ずっと本部勤務です」
「なら問題はないな。本部の方の指揮は任せる」
「お任せください」

これからは誰も知らない未来の戦争に向けて、訓練や物資調達など動きが派手になる。
それを統括するのはスティングだが、訓練の場合は俺も指導に当たるため、俺がいない間の割り振りは全て彼に任せることになっていた。

「戦争が起きる前に止めたいが、な」
「アサギ准将の予言ですから、外れませんよ」
「まあな、そうだろうと俺も思うよ」
「戦争が始まってからが勝負です」
「俺達で彼を守り抜く。そして――戦争を止める」
「はい。全ては、アサギ准将の遺志を継ぐため」

彼の言葉に頷き、唇に人差し指をあてて微笑んだ。
副官の気配が近づいている。

「シラヌイを見つけてくれてありがとうございます。そうそう、アラバスタに行くことを伝えなければならないので副官を見かけたらここへ来るように伝えていただけますか?」

まるで俺の言葉に応えるようにドアがノックされた。
俺とスティングは顔を見合わせて微笑んだ。

「どうぞ」
「失礼します。アルディア中将、お呼びでしたか」
「ああ、ちょうど彼に呼びに行ってもらおうと思っていたところですよ」
「では、自分は失礼します」

敬礼を残し、スティングは部屋を出た。

「それで、どうかしましたか?」
「はい、明日中にここを発ち、アラバスタへ向かおうと思います」
「アラバスタへ……随分急ですね、何かありましたか」
「いえ、特に理由はないのですが、パトロールついでに旧友へ会いに行こうかと思いまして」
「そうですか、珍しいですね。いいと思いますよ」

副官は俺の言葉に茶目っ気を含んだ顔で微笑んだ。
俺は嘘つきだった。



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