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「どうも、コーミル中将。お久しぶりです」
「やあ、アルディアくん」
「少しの間ですがお世話になります。俺の隊も警備に使っていただいて構いませんので」
「そんなに畏まらなくていい。明日、極秘船が停泊する予定でね。警備増強も出来て、むしろこちらが助かる」
こ、この人極秘船って言っちゃったよ。
俺はひきつった笑みを浮かべながら、そんなんでいいのかと海軍の警備体制の甘さに涙をこらえた。
「ご、極秘船ですか」
「ああ、何でも黒ひげとかいうルーキーの情報がメインらしいな」
だめだこの人!
どうしてこんな人のいるG−2に極秘船が停泊するんだ!少しは考えろ!
あぁ、頭が痛い。海軍本部は一体何を考えているんだ。
警備体制は見る限り問題ないようだが、この人口が軽すぎるぞ。
「あの、コーミルさん、そういうことは一応内密にしておいた方が……」
「そうだな、アルディアくん、内密に頼むよ」
「……はい」
俺が間違ってるのか!?俺がただ単に神経質なだけなのか!?
後ろに控えていた副官に目をやれば、俺と同じような顔をしていた。
そうだよな、G−2がただ温いだけだよな、良かった。いや、良くはないのだが。
「今のところ問題はありませんか」
「そうだね、侵入者騒動があったぐらいで大したことはないよ」
それ、大したことだと思うんですが。
良くこれまで問題にならなかったものだ。
「……そう、ですか」
しかし、侵入者騒動とは一体何なのだろうか。犯人は捕まったのか?
いや、捕まっていなければさすがにここまでのんびりとはしていまい。
「さて、早速で悪いんだが明日のことで軍法会議を開くことになっている。君も来てくれるかい?」
「ええ、勿論です」
俺の部下には自分の仕事を終えさえすれば自由行動をしていいと言っているので、船に顔を出さずとも特に問題はない。また、こちらに来る途中で捕縛していた海賊たちもG−2で引き取ってもらえるらしく、仕事量は随分と少ない。
コーミルさんの後ろを歩きながら、会議室を目指す。
たしかコーミルさんのモットーはゆとりのある正義だった。扉を押しあけたコーミルさんの後ろから会議室を覗き込み、自分の記憶が正しかったことを確認した。
「これは、アルディア中将」
既に席に着いていたコーミルさんの部下が立ち上がって敬礼をした。一人遅れて敬礼をするが、別にそんなことで目くじらを立てたりはしない。まあ、細かい人もいるだろうから気をつけた方がいいとは思うが。
「お久しぶりです、皆さん。どうぞ、お座りください」
俺は自ら末席に座って促した。
副官は俺の後ろで控える。
本当に久しぶりだ。
支部を任せられると、そこから動くことがほとんどないため、俺やほかの中将に会うことも久しぶりなのではないだろうか。
面々を見回して、議題であろう極秘船についての警備を頭の端で考える。
「今回の警備にはアルディアくんが参加してくれる。作戦に初参加の者もいるだろうが、中将二人もいれば余計な力を入れずに警備にあたれるだろう」
「俺の隊は広く展開させます。各班に分かれておりますので、各々の判断で動かしていただいて構いません」
コーミルさんの部下が頷いたのを見て、コーヒーに手をつけた。
そういえばG−2のコーヒーは苦いんだったな。
本部を出る前にスティングが言っていた予言を思い出すが、さすがに苦いのだと構えていれば噴き出すことはないだろう。
「アルディアくん、それ苦いから気をつけて」
コーミルさん、コーヒー口から流れ出てます。
注意するのも面倒で、愛想笑いを浮かべながらコーヒーを口にふくむ。
ああ、確かに苦い。
彼の部下もコーヒーは口に合わないのか口から垂れ流している。
いや、それなら飲まなければいいのでは。
温かいそれを、喉を潤すためだけに飲み込もうとした。
その瞬間、あまりの衝撃に噴き出した。
「げほっ!!げほ、ごほっ……!!」
「アルディアくん!?」
「中将!!大丈夫ですか!」
「な、なんで……!」
副官がとっさに渡してくれたタオルで口元を拭き、テーブルも拭いた。
「中将、自分がやりますよ。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です、すみません……」
驚いた。い、いや、驚いたどころじゃない。心臓が止まるかと思った。
何故お前がここにいるんだ、ポートガス・D・エース!
しかも何故みんな気がつかないんだ!?
あからさまに怪しいひげ…明らかに変装だろ、それ。
「いやいや、すまんな。初めて飲む人はみんなそうなんだよ」
「……申し訳ありません、取り乱しました」
苦くて噴出したわけではないが、何はともあれ予言が当たった。
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