side:ホークアイ


「クインジェット?」

ナターシャの声に空を仰いだ。
つい先ほど廃棄した戦闘機の残骸が頭をよぎる。
同じ型のクインジェットが俺たちの周りの敵を排除し、ゆっくりと着陸した。
フューリーが援軍を寄越したのだろうか、と敵を撃ち抜きつつ振り返れば、降りてきたのは幼さすら感じさせるアマミヤだった。

「ホークアイさん!ロマノフさん!」

なぜここに、と思うが、彼女が連れてきたストライクチームの援軍は助かる。

「うわあ!思ったよりグロい!」

戦場にあるまじき軽やかな声に思わず笑う。
完全装備のウィンターソルジャー、ストライクチームとは対照的に、アマミヤの服装はヘリキャリアで見たラフなもののままだ。
彼女の力を考えればそれも不思議ではないのかもしれないが、こと戦場においては明らかに浮いていた。

「うう、頑張れ私、相手はエイリアンだぞ」
「無理するな」
「いやいやいや!この大惨事見てよ!無理するでしょ!」

ウインターソルジャーと軽すぎるやり取りをしながら、アマミヤ率いるストライクチームは俺たちをカバーするように展開し、逃げ遅れた人々の救助にあたった。
あれが元ヒドラか。
肩をすくめ、ナターシャと視線を交わす。

「これは、俺たちもいいとこ見せないと減俸されるな」
「そうね、行きましょうか」

アマミヤは怯えている割には率先して銃弾の射線や降り注ぐ瓦礫の下へと走り回っている。
もちろんウィンターソルジャーはいい顔をしていないが、敵を倒す方を優先したらしくアサルトライフルを構えながら近づいてきた。

「スティーブはお前達と一緒じゃないのか?」
「すぐ戻ってくるさ」

落雷が俺たちの周囲の敵を丸ごと焼き、神が降ってきた。
アマミヤは反射的に持っていた拳銃を向けるが、それが仲間の神だと認識すると大袈裟に安堵のため息をついてウィンターソルジャーへと駆け寄る。

「バッキーさん!私って雷も大丈夫なんだよね!?」
「大丈夫だがあまり俺から離れるな」
「う、うん……」

キャプテン、ソーに続いてバナーも合流した。
この人、本当に敵味方の区別つくんだろうな……。
脳裏に浮かんだ緑の巨体に一瞬近づくのを躊躇うと、代わりのようにアマミヤがバナーに駆け寄った。

「バナー博士!お久しぶりです!」
「あ、ああ……」

ふと、日が陰った気がして弓に手を当てる。
なんだ?

『バナーに伝えてくれ。愉快な仲間を連れていくとな』

嫌な予感がする。
スタークの無線に今度こそ弓を握りしめて警戒した。
視界の端でウィンターソルジャーやストライクチームがアマミヤを庇い立つように前に出た。
直後、轟音と巨大な魚型のエイリアンを引き連れてスタークが飛んできた。

「あれのどこが愉快なの……?」
「うわああああ!無理無理無理!あんなの死ぬわ!!バッキーさん大好き愛してる!!来世でも一緒に生きようね!!」
「ユイ……」
「はわわ……伝道師さま……」
「これが……愛……」
「大丈夫だよ、アマミヤ博士」

状況を鑑みない愛の従士たちにドン引きしていると、バナーが拳を握りしめてあの巨大なエイリアンに正面から向き直った。

「バナー、今なら怒っていいぞ」
「僕の秘密を教えてあげるよ、キャプテン」

いつも怒ってる、とバナーはハルクの姿に代わり、エイリアンの頭部を強かに殴りつけた。
咆哮に耳を塞げば破壊された武装が降ってくる。
咄嗟にアマミヤを庇いかけてその必要がないことを思い出し、横倒しになったパトカーの陰に隠れた。
見捨てた俺とは対照的に、ウィンターソルジャーはあの特徴的な左腕と自身を盾にアマミヤを庇って地面に伏せる。
機能から言えば逆だが、まああいつらが声高に言う通り、愛に従うならそれで合っているのだろう。

「理性飛んだ!!」

ウィンターソルジャーの下から這い出たアマミヤがハルクを見て叫ぶ。
気持ちは分かるがやっぱりアイツうるさいな。
恩人とは言えど少しだけ苛立った。
飛散した武装から身を守りながらキャプテンを仰ぐ。
ここから、反撃だ。