▽ 9話


宣言通りというべきか。
朝早く、私が起きてすぐに承認を受け取り出陣した山姥切たちが帰ってきた。
燭台切と大俱利伽羅の二人以外が無傷だ。
傷を負っている様子の二人も昨日ほどの重傷ではない。
すぐに手入れ部屋に行くと言って立ち去った。

「本日より、遠征を日課に追加いたします。本丸の安全上、2振り以上の刀剣を残し、遠征に行かせてください」
「だって」
「あんたが主だろ……」

山姥切が深いため息をつく。
私はハンコを押す係だから。

「伊達の二振りが復帰次第、私たちで行くとするか」
「ああ」

山姥切と山鳥毛が話して決めたようだ。
狐は頷き、どろんと消えた。

「主さんお昼ご飯食べました?」
「あー、まだ」
「おい、朝は食べたのか?」
「食べてない」
「大変です!お昼を用意しましょう!」

秋田と鯰尾がキッチンの方へと走っていった。
カップ麺でいいのに。
料理できるのだろうか。
二人を見送っていると、山鳥毛に髪を撫でられた。
体の接触は鳴れているので驚かなかったが、何か用事があるのかと見上げる。

「小鳥、昨日は無理をさせたな」
「セックスならいつでも大歓迎だよ。する?」
「いや、少し体を休めたほうがいい」
「んー、山姥切は?」
「しない。資材を見てくる」
「資材?」
「俺たちの手入れとか鍛刀に使う物だ。足りなければ長めの遠征に行かなくちゃならない」
「私も行こう」

山姥切と山鳥毛は私についてくるかと視線を向けたが、私は首を振って縁側に横になった。
木の匂いがする。
本丸って広いけど掃除しなくちゃいけないのかな。
ルンバとかある?
しばらくゴロゴロとしていれば、いいにおいが漂ってきた。
キッチンのほうだ。
体を起こしてキッチンに向かうと、さらにいい匂いがしてくる。

「何作ってんのー?」

キッチンを覗き込めば、鯰尾と秋田だけではなく手入れに行ったはずの燭台切と大俱利伽羅がいた。
傷はもういいのだろうか。

「親子丼だよ。苦手なものはあるかい?」
「生トマト」
「OK、主のサラダには入れないでおくね」

味噌汁をお椀に盛っている大倶利伽羅に近づけば、座ってろ、とテーブルに雑に促される。

「治ったの?」
「大した傷じゃなかったからな」
「漬物食べていい?」

聞き終わる前に手を伸ばせば、その手を掴まれて箸で漬物を差し出された。
美味しい。
時々コンビニ弁当に入ってる漬物を食べるくらいで自分で買って食べたりとかはしていなかったため、久しぶりの味にもぐもぐと時間をかけて飲み込んだ。

「座ってろ」

2度目の注意に、はいはい、とテーブルに向かえば、鯰尾がすぐにお茶を出してくれた。
至れり尽くせりじゃん。
現代の元カレやセフレなんかとは気遣いの差が違いすぎる。
私は感じていないけれど、刀剣男士側には明確な上下関係があるからだろうか。
手持ち無沙汰に煙草を吸おうかと取り出すと、目ざとく見つけられたのか、大倶利伽羅が煙草を取り上げて代わりにまた漬物を私の口に押し込んだ。
テーブルには先に漬物と箸が置かれる。
まあいいか。
吸いたかったというよりは口寂しいだけだったし。
テーブルに昼食の準備が整い始めると、秋田が山姥切と山鳥毛を呼んでくるとエプロンを外した。

「資材の確認するって言ってたけど」
「ありがとうございます!」

秋田の軽やかな足音を聞きながら、机に突っ伏して目を閉じる。

「体調悪いかい?」
「いや」

くそ。
湧き上がってくる嫌な感覚に細く息を吐き出す。
まあ、発作みたいなもので、たいしたことじゃない。
現代なら彼氏かセフレで発散させるのだけれど、ここじゃ時が経つのを待つほかない。

「腹が空いてんだろ」

大倶利伽羅が突っ伏す私の顔を上げさせると、箸で炊き立てのご飯を口に押し込んできた。
うわ、美味しい。
普段なら食事を摂ったところで治るものじゃなかったが、炊き立ての温かさのせいか、驚きが優ったのか、嫌な感じがおさまっていく。

「うま」
「ふん……先に食ってろ。別に待つ必要もないだろ」

咀嚼しながらまた机に顔を置こうとした私の頭を捕まえて、大倶利伽羅は鯰尾にパスした。
おい。

「はい、主さん、あーん」
「ん」
「美味しいですか?」
「うん」

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