▽ 11話
私の頬をかすめた矢を見て目を見開いた二人は、その瞬間ブレーキを失ったかのように自損もいとわず戦い始めた。
派手に切り裂かれようと、指が飛ぼうと、私の唾液を飲めば血が止まり、欠損が補充される。
そしてその速度は、不可思議なことに加速していった。
政府の刀剣男士とともに山姥切たちが助けに来たのは、リビングで籠城を始めてから1時間ほどたった後だった。
重傷を負った大倶利伽羅が戦いに出ようとするのをキスをして引き留め、もう枯れそうな唾液を舌に乗せて送れば、肩口から溢れ出る血が止まる。
すぐにでも燭台切に並び立とうとする大倶利伽羅を、せめて全ての傷の血が止まるまではと震える手で縋るように抑えていれば、争う音が廊下から近づいてきた。
入ってきた者の首を刎ねようと刀を振るった燭台切と侵入者が鍔迫り合いになる。
見たことのない銀の髪の男がひどく驚いた様子で燭台切の刀を弾き返し、リビングから後ずさると声を張った。
「待て!加勢に来た政府の者だ!!」
追撃に移ろうとした燭台切を見て、ようやく男の言葉が脳に届いた。
加勢。
「燭台切!待って!そいつ本物!!」
勢いを殺しきれず男の首へと向かった燭台切の刀を、二本の刃がぎりぎりで押しとどめた。
山姥切と、山鳥毛。
骸骨じゃない。
はっ、はっ、と短い息をしながら、燭台切が刀を引き、ゆっくりと私を振り返る。
「敵じゃない」
私の言葉に燭台切は開いた瞳孔のまま傍に駆け寄ってくると、安堵に崩れ落ちるように私を抱きしめた。
「ごめん、怪我、を、させて……」
奴らは燭台切や大倶利伽羅をただの障害物として見ており、助けが来る寸前まで明確に私の命だけを狙ってきていた。
二人の血で足の踏み場もないほど赤く染まったリビングで、唯一私だけが頰の傷一つで済んでいるのは、紛れもなく二人が獅子奮迅の守りを築いたおかげだ。
謝られるようなことは、一つもなかった。
首を振って二人の手を握ると、堰を切ったように涙が溢れ出した。
怖かった。
恐怖で死んでしまうのではないかと思うほど。
永遠に感じた長い戦いからようやく救われたのだと思うと、涙が止まらなかった。
部屋の隅で子供のように泣きじゃくる私を、燭台切と大倶利伽羅が守るように包み隠した。
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