▽ 15話


「主、ちょっといい?伽羅ちゃんも」

燭台切に引き留められ、足を止める。
早速シャワーにでも入ろうかと思っていたけど。
廊下で誰もいないときに声をかけてきたということは他の人たちには聞かれたくない話なのだろうか。

「部屋行く?」
「うん、いいかな?」
「いいよ」

こちらも聞いていなかった様子の大倶利伽羅と一緒に部屋に向かう。
部屋について私が煙草を出し、燭台切がお茶を出した。

「主さえよかったら、今日の伽は二振りでもいいかな。無理はさせないから」
「いいよ。大歓迎。無理させて」
「俺は別に……」
「伽羅ちゃんも僕と一緒だから、ここまでついてきてくれたんだよね?」

燭台切は大俱利伽羅を引き留めるように手を握り、視線を送る。
大俱利伽羅は視線をそらしたが、浮かせかけた腰を下ろす。
何かはさっぱり分からないが、二人には通じ合うものがあるらしい。

「昨日、守り切れなくて、ごめんね」
「守り切れてるでしょ。五体満足」
「そうじゃなくて……」

燭台切の視線が目から頬に移る。
まあ、大俱利伽羅も秋田も気にしていたから、御多分に漏れず燭台切もこの大したことのない傷が気になるのだろう。

「そんな気になる?」

煙草に火をつけて煙を天井にはく。
燭台切は私に手を伸ばすと、髪を耳にかけて、頬から少し離れたところに触れる。

「すごく」
「気にしなくていいよ」
「僕らはさ、刀だから……血なんて見慣れてると思ったんだ。実際、自分の血も、仲間の血も、見慣れてるしね」

私は煙草を吸って、昨日の嫌な記憶を思い出す。
飛び散る二人の血飛沫は、およそ人間なら死んでいる量だった。
二人も最初は負傷に気をつけながら戦っていたはずだ。
私の唾液で治るとしても、可能なら追撃より自身を守る動きをしていたのに。
二人の戦い方が変わったのは、私が流れ弾を食らってからだ。
弾と言っても矢だけど。
確かに痛みはあったし、普段怪我なんてしないから、状況も相まって死ぬのかとすら一瞬考えた。
けれど二人の傷に比べれば大した傷ではないのは火を見るより明らかだったのに。

「なんで、私のはだめだったわけ?」
「あんたのは、直らないだろ」
「治るよ」
「直っていないじゃないか。僕らみたいには」

燭台切と大倶利伽羅の手が私の体に回る。
シャワー、と思ったけど、まあ二人がいいならいいだろう。
煙草と眼鏡をわきに置いて、背後の大俱利伽羅に力を抜いて体を預けた。

「僕たちは簡単には死なない。腕が飛ぼうが、腹が裂けようが、人間の形はしているけど、刀だからね」
「だがあんたは……」

二人の手の力が強くなった。
激情をこらえるようにも、脈を確かめているようにも感じられる。
燭台切の手が服の裾から入り、ゆっくりと私を脱がせていく。
肌に触れることよりも脱がせることを目的としたそれは、いやらしさを纏わずまるで私の無傷を確認しているようでもあった。

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