▽ 4話


俺の主は武人じゃない。
美術品が好きな蒐集家でもない。
審神者に望んでなったわけでも、五振りの刀剣の中から俺を是非にと望んだわけでもない。
ただ刀剣男士を顕現させることができるというだけで居場所を奪われ、本丸に囚われた哀れな女だ。
だから、ぬくもりを求める彼女の性を俺は否定できないし、誰にも否定させたくないと思っている。
鍛刀した五振りの刀に目を落とし、軽蔑してくれるなと内心で祈る。
こんのすけの首根っこをつかみ、卑猥な音が漏れる厨に背を向けた。

「出陣は主の許可が必要か?」
「はい。主さまの許可不要で近侍権限で行えるのは内政のみとなっております」
「そうか。なら、待機だな」
「本丸担当官との過度な接触は非推奨ですので、この件については……」
「何もするな。お前だってあいつの心が壊れるのは本意じゃないだろう」
「……まあ、そうでございますね。それが人間を使っている理由でございますから。主さまの霊力と天秤にかけるのであれば、多少の融通はきかせましょう。ただし、この本丸の戦績が伸びない場合、こんのすけから上へ報告させていただきますのでご承知おきください」
「分かっている……後で俺から促しておく」

こんのすけはどろんと音を立てて消えた。
五本の刀を抱えて柱を背に座り込む。
俺たちは刀だ。
しかしただの刀ではない。
審神者の霊力によって肉体を持ち、心を持ち、変えられるばかりだった自分の運命を、自分で変えられるようになった。
それは、他者にも干渉できるようになったということでもあるだろう。
あいつは、主は、それでも、たとえ手に取っただけだとしても、俺を選んだことに変わりはない。
写しが何かもおそらく知らないあいつが、俺の主だ。

「お前らも……あまり責めてやるなよ」

境遇を選べなかったのはお互い様だ。
本来の使われ方をするために顕現した俺たちと違い、現状を強いられているという意味では、あいつのほうが不運だろう。


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