▽ 6話


「名前覚えんのめんど……」

並んだ5人を前にため息をつく。
燭台切、山鳥毛、大倶利伽羅、鯰尾、秋田。

「はは、よろしくね、主」
「ん。山姥切、あと任せるから」
「分かった。出陣の許可は後でもらいにいく」
「いいよ、好きにして」
「そうは行かない」

あっそ、と言い残して部屋を出る。
用意された刀に触れて励起するだけの簡単なお仕事。
人気のない長い廊下を歩き、その途中で腰を下ろした。
現代ではあまり見なかった日本庭園を眺め、時間をつぶす。
鳥だ。
生き物いるんだ。
煙草に火をつけて、まずは一服。
灰皿がないので灰は土の上に落とした。

「はあ……」

審神者になって一番辛いことは、寿命を失ったことだ。
いつか死ぬから生きてられたのに、いつまでも死なないなら、これからどうすればいいのだ。
たった、と軽い足音に顔を上げれば、桃色の髪の少年が箱を抱えて寄ってきていた。
確か名前は、秋田。
いっぺんに5人も人を増やさないでほしい。

「主君、これをしませんか?」
「んー?」

緑の盤面に黒い線。
ああ、リバーシ。

「いいよ」

付属の紙を見ながら秋田は私のすぐ横に盤を置いた。
やったことないのか。
まあ、刀がボードゲームなんてやったことないか。

「黒と白交互に置いて縦横斜めのどれかで挟んだら相手の色になる。最終的に自分の色が多い方が勝ち」
「ありがとうございます!どこにでも置けるんですか?」
「ひっくり返せるとこじゃないとダメ」
「分かりました、どちらから始めますか?」
「ん」

私は適当に駒を置いて一枚ひっくり返す。
簡単なルールだからすぐに分かるだろう。
初めての秋田は健闘しつつも流石に大敗した。
私は子供相手でも手加減なんて面倒なことはしない。
秋田は悔しがりもせずニコニコ楽しそうに負けちゃいました、と言った。
途中でやってきた鯰尾が3人分のお茶を用意して盤面を寝転がって見ていたが、終わるとこれまた楽しそうに私にじゃれついてきた。
女子高生みたいな距離感。

「今度俺ともやってください!」
「二人でやんなよ。ルール分かったでしょ」

2本目のタバコを鯰尾が用意した灰皿に置いて、ぬるくなったお茶を飲む。

「主さんとやりたいんですよ!二人で練習しとくんで相手してくださいね!」
「はいはい」

ひらひらと手を振れば、見計らっていたのかタイミングがいいのか、山姥切が武装した姿で出陣だ、と言いにきた。
鯰尾と秋田はお茶とリバーシをそれぞれ片付けて準備に行った。

「意外だな」
「そう?」

山姥切は私の隣に座り、手を差し出した。
犬?

「出陣の承認を」
「ああ。はい、承認」

山姥切の差し出した手を軽くたたけば、その右手が僅かに光る。
狐の言うことには、本来は門まで行って見送りついでに承認するのが一般的らしいけれど、まあこういう委任の方法もあるようだ。

「行ってくる」
「ん」

立ち去った山姥切と入れ替わりに、狐が現れた。

「山姥切国広と性交なされたようですね」
「見てたわけ?」
「いいえ。刀剣男士の気配が主さまに残っておりますから。山姥切国広は嫌がりませんでしたか」
「私が襲ったみたいに言うなよ。あっちから誘ってきたっつーの」
「……そう、ですか。山姥切国広が……」
「それより煙草注文しといて。ペリックとキャメルのスリム。あ、パーラメントも一応」
「……購入完了。キッチンに転送されました」
「はあ?だる」

灰を灰皿に落として息を吐きだす。
ごろりと縁側に横になった。
煙草とは違う、植物の匂いがする。
「審神者って、任期あんの」
「ございません」
「はは……人権とかないんだ」
「戦時でございますれば。主さまのご協力に、政府一同感謝しております」
「うっざ」

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